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「ひどい悪臭」「次々と水に飛び込み...」 とてつもない数の「ネズミの死骸」に埋め尽くされた町の悪夢

ニューズウィーク日本版 2023年11月25日 13時59分

<オーストラリアの海辺の町でネズミが大発生。大量のネズミが海に飛び込んで溺れ、海岸に打ち上げられたことで地元はパニック状態に>

オーストラリアの小さな町にある海岸に、大量の死んだネズミや瀕死のネズミが打ち上げられ、地元住民に不快感と恐怖を与えている。ネズミが漂着したのは、ケアンズから西に約740キロ離れたクイーンランド州北部の漁業の町カルンバ。地元住民や観光客がSNSにアップした動画や写真には、海岸や近くの川をネズミが埋め尽くす様子が映っている。

■【動画・写真】「ひどい悪臭」「次々と水に飛び込み...」 とてつもない数の「ネズミの死骸」に埋め尽くされた町の悪夢

漁業者のブレット・ファロンは、地元の報道機関ABCノースウエスト・クイーンズランドに対し、「昨夜、町に月が出たとき、川はネズミの死体で完全に埋め尽くされていた」と語っている。

溺死したネズミは腐敗し始め、水辺でひどい悪臭を漂わせている。そして、地元住民や観光客は混乱に陥っている。

釣り船チャーター業「ケリー・D・フィッシング・チャーターズ」を経営するジェマ・プロバートは、「7ニュース」の取材に対し、「ネズミたちは続々と水に飛び込んで泳ごうとするが、結局、溺れて海岸に打ち上げられ、ひどい悪臭を残すことになる」と説明している。

大量のネズミの死体が打ち上げられた原因は?

カルンバでは1カ月ほど前から、ネズミが暴れ回っており、庭や畑の灌漑用ホースや車の電子機器をかじったり、家の中に入り込んだり、ボートによじ登ったりして混乱を巻き起こしてきた。「客を乗せて釣りをしているとき、私たちのボートにはい上がろうとしてきたので、棒で払い落としたこともある」とプロバートは話している。

カルンバの水辺に大量のネズミが打ち上げられたのは、個体数が急増したことが原因ではないかと考えられている。今年の雨季は記録的な雨量に見舞われたため、ネズミに十分すぎる餌と繁殖の理想的な条件がもたらされた可能性がある。オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)によれば、同国では2021年以降、ネズミの個体数が増加している。

ネズミの生態を研究する豪シドニー大学のピーター・バンクス教授はガーディアンの取材に対し、「彼らが疫病ネズミと呼ばれるのは、定期的に大発生するためだ」と述べている。「彼らの繁殖率は非常に高い」「そのため、自然生息地である乾燥した環境に大雨が降ると、個体数が増加する」

バンクスによれば、雨量が700ミリを超えると、80%の確率でネズミが大発生する。そして乾燥地帯では、これは10年に1度程度しか起こらないという。「今、私たちが目にしているのは、餌もスペースも足りない場所でネズミが増えすぎてしまった当然の結果だ」とバンクスは述べている。

ネズミの大量死は地元にとってはむしろ朗報

この大量のネズミは餌を求め、干潮時に近くの島に泳いで渡ろうとしたと考えられている。そして、潮が満ちてきた後に戻ろうとして溺れ、海岸に打ち上げられたのだろう。

クイーンズランド州では最近、ほかの町でもネズミの大発生が起きている。CSIROの定義では、1ヘクタール当たり少なくとも800~1000匹のネズミがいる場合、大発生と見なされる。ウィントン、リッチモンド、ジュリアクリーク、クロンカリー、インガムは、数カ月前からネズミであふれかえり、農作物の被害や水の汚染に見舞われている。

カルンバで起きたネズミの大量死は、地域社会にとってはむしろ朗報かもしれない。大発生が収束に向かっていることを意味する可能性があるためだ。

「大発生して餌が不足したネズミは通常、餌の奪い合いから逃れるため、周囲に移動しようとする」「こうした状況が何カ月も続いている」とバンクスは話す。「大発生はいずれ収束する。餌がない状態では、長く生きられないためだ」

「もし彼らの繁殖が止まったら、それは、個体数が激減する最初の兆候だ。たくさんの死骸を目にすることも、もう一つの兆候だ」
(翻訳:ガリレオ)


ジェス・トムソン

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