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「冬のヨモギ」はなぜ乳製品と相性がよいのか?...日本の雑草専門家に聞く「おいしい草の食べ方」

ニューズウィーク日本版 2023年11月30日 15時58分

<夏から初冬に出現する「どこんじょヨモギ」とは何か? 日本の雑草の愛で方、楽しく美味しく雑草を食べる方法について>

朝ドラでも身近になった植物だが、雑草を食べると聞くと、「えっ?」と思う人もいるかもしれない。しかし、「七草粥」など私たちの食生活には昔から雑草が取り入れられている。

わざわざ山奥まで出かけなくとも、プランターでハーブを育てなくても、その辺で摘んで食べることができる雑草。日本の雑草の愛で方、楽しく美味しく雑草を食べる方法について、人気ポッドキャスターMichikusa(みちくさ)氏の最新刊『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室』(CCCメディアハウス)より一部抜粋する。

◇ ◇ ◇

ヨモギ

春の若い葉は天ぷらにすると絶品で、山菜としても人気の高い植物です。そして何より和菓子の草餅の材料として、今日の私たちの生活になくてはならない存在でもあります。

私も小さい頃はこの葉を摘んでよくお団子を作りました。そう考えると野に生える草を料理して食べたのは、このヨモギが生まれて初めてだったかも知れません。

どこでも比較的簡単に手に入り、味わいも良く、現役の食材としてこれほどまでに日常的に浸透している雑草は他にないように思います。

しかしながら「草餅=ヨモギ」が定番化したのは意外にも江戸時代に入ってからのことです。それまでの草餅にはおもにハハコグサという植物を利用していました。

ふわふわの綿毛はつなぎの役割

ハハコグサはヨモギと同じキク科の植物で、春の七草の歌の中でもゴギョウという名で古くから親しまれてきました。このハハコグサもヨモギ同様、今でも田んぼの畦道や公園の空き地などでよく見かける植物です。

ハハコグサは体全体に、ヨモギは時期にもよりますが葉裏や茎に、それぞれ白くてふわふわした毛を纏っています。

両種ともにこの微細な綿毛があるおかげで、お餅のつなぎとしての役目を担っていたようです。色や香りづけ以外に草を混ぜる目的があったとは少々驚きです。もしかすると昔のお米は今よりも粘り気が少なかったのかも知れませんね。

現在ではハハコグサから草餅が作られることはほとんどなくなりましたが、どちらも身近に生えている植物ですので、いつか新旧食べ比べをしてみたいところです。

『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室』 174頁より

ヨモギの新芽はいつ手に入る?

ヨモギの新芽が手に入るのは基本的には春です。以降、順調に生育していけば初夏には徐々に草丈が伸びて花芽が立ち上がり、秋には立派な花を咲かせます。この頃には葉も小さくなり、茎も硬くなるため、通常であれば食用にするのは難しくなります。

しかし人里近い場所に多く生息するヨモギは、人の手によって定期的に刈り込まれることが多々あります。

こうしたヨモギは刈り取られた位置からまた新しい葉を展開するため、このようなヨモギに出合えれば季節を問わず若い葉を入手することができます。ちなみにこの刈り込まれた後に生えてきた新しい葉っぱのことを私は《どこんじょヨモギ》と呼んでいます。

香りの違いを生かした調理を

草刈りのおかげもあって、ある意味、通年で手に入るヨモギの若葉ですが、夏から初冬にかけて出現するどこんじょヨモギは、春の若葉と比べてなぜかとても香りが強く、単体でそのまま食べてもあまりおいしくありません。

一度天ぷらにして食べてみたことがあるのですが、キク科独特の香りが強く、春のそれとはまるで別物のようでした。揚げる際に使用した油にもすぐに香りが移ってしまうほどです。

ですが調理次第では、この強い香りもおいしく生かすことができます。この時期のヨモギは牛乳や生クリームなど乳製品との相性が良く、これらの脂肪分がどこんじょヨモギの強い香りをマイルドに包み込んでくれます。

これからご紹介するレシピは以前、雑草食をテーマに開催したイベントの中でも大変好評でしたので、ぜひ試していただきたい逸品です。

「ヨモギのポタージュスープ」

『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室』  181頁より

Michikusa(みちくさ)
1991年千葉県生まれ。東京農業大学農学部農学科卒。幼い頃より道端、河原、まちなかの商店街などさまざまなフィールドで足元の植物を観察。現在は岡山県を中心に雑草を暮らしに取り入れる方法を日々模索しながら各地で観察会やワークショップを開催。ポッドキャスト番組『道草を食む-雑草を暮らしに活かすRadio-』(Apple Podcast 自然カテゴリ1位)を不定期に配信中。薬草料理マイスター。自然観察指導員。

 『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室』
  Michikusa[著]
  CCCメディアハウス[刊]

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