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ウクライナ、交渉による戦争終結を望む世論が半数に

ニューズウィーク日本版 2023年12月5日 19時14分

<クリミア半島やウクライナ東部などロシアに奪われた領土の奪還に必ずしも拘らないという人も約半分。戦争継続はいつまで可能なのか>

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ロシアとの交渉による和平を支持する――世論調査によれば、ウクライナでは過去9カ月でこうした考え方が急速に広まり、今では国民の半数近くを占める。

厳しい冬が迫り双方に多大な損失を出しながらも、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が停戦や和平へ向けた交渉を始める兆しはみられない。

ゼレンスキーは、ロシアが占領しているウクライナ東部ドンバス地方と、同じくロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島を奪還することが戦争のゴールだと繰り返し述べてきた。目標を達成するまで戦闘を続ける決意だ。

だがウクライナの独立系調査機関「レイティング」が実施した世論調査では、交渉による解決を支持するウクライナ国民が、今年2月の時点よりも増えていた。この調査結果は、ロシアとウクライナの両国で広く報じられた。

若者とウクライナ東部に多い妥協派

11月に実施されたこの調査では、回答者の44%が「第三者の仲介のもと交渉を行い、妥協と解決を模索する」と回答した。ロシアとの戦闘開始から1年経った今年2月の時点では、交渉による解決を支持した人は35%に過ぎなかった。

ロシアに占領された領土を奪還するまで戦闘を続けることを支持するウクライナ国民の割合も、この1年で減少傾向にある。2月の時点では、回答者の60%が「全ての領土を奪還するまで」戦闘を続けるという考えを支持したが、11月の調査ではその割合は48%に減少した。

ウクライナのニュースサイト「ストラナ」は調査結果を報道する中で、和平のためには妥協を支持するという回答は15~35歳の若者(支持者の45%)とウクライナ東部の住民(51%)が多いと指摘。より年配のグループ(36~50歳)とウクライナ西部の住民は、いずれも50%が戦闘の継続を支持した。

調査の誤差範囲は公表されておらず、本誌はレイティングとウクライナ大統領府にコメントを求めたが返答はなかった。

コメルサントは「ウクライナ国民はロシアとの戦争をいかに終結させるかという問題で、意見がほぼ二分されている」と述べ、ウクライナ国民の48%がロシアとの交渉を拒んで敵対行動の継続を支持する一方、44%が「敵対行為を終わらせることを支持している」と伝えた。

ブルームバーグは11月、ロシアの独立系調査団体「ロシア・フィールド」が実施した世論調査で、ロシア国民のほぼ半数(48%)が戦争を終わらせるために和平交渉を望んでいるという結果が示されたと報じた。一方で戦闘継続を望むと回答した人は39%で、和平交渉を支持する人の割合が初めて戦闘継続派を上回った。

ロシアの別の独立系調査団体「クロニクルズ」の調査によれば、多くのロシア国民は、ウクライナとの戦争がロシア経済に悪影響を及ぼしていると感じており、戦争を真に支持している人は2月時点の22%から現在はわずか12%にまで減っているという。

 

ブレンダン・コール

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