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シェア伸ばすJT、新デバイス「Ploom X ADVANCED」発売で加熱式たばこ三国志にさらなる変化が!?

ニューズウィーク日本版 2023年12月6日 16時25分

<加熱式たばこ市場にJTが新製品を投入し、ライバルに猛追をかける。デバイスそのものの進化だけでなく、同時発売となった新しい銘柄にも注目すべき理由とは>

日本の加熱式たばこ市場はさながら三国志――2021年の夏、そのような記事を出した。日本たばこ産業(JT)の「Ploom」、米フィリップ・モリス・インターナショナルの「iQOS」、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「glo」の3ブランドが、日本市場でしのぎを削っている。

今年4~6月、加熱式たばこの販売数量は140億本に達し、前年同期から12%増となった。一方の紙巻たばこは227億本で、前年同期比3%減。嗜好品たるたばこの世界は、着実に加熱式たばこへと移行しつつある。

デバイスのシェアはどうか。2年前、JTがJTインターナショナル(スイス)と共同開発したグローバルモデル「Ploom X」を投入した当時は、先行する「iQOS」が7割を占め、続くのは「glo」だった。JTの「Ploom」は高温加熱型デバイス投入の遅れが響き、4%程度と低迷していた。

しかし、Ploom Xの洗練されたデザインと高いユーザビリティ、高温加熱型の前モデルから大幅に向上した豊かな喫味で徐々にシェアを拡大。現在は2.5倍となる10.5%まで伸長している。そして11月21日、JTはPloom Xの後継機である「Ploom X ADVANCED」をリリースした。

スイスでPloom XとPloom X ADVANCEDの開発に携わった山口顕氏(左)と、関西工場の製造部長、嶋田達也氏(右)

春のメビウス・リニューアルは「布石」だった

今年6月までジュネーブに拠点を置くJTインターナショナルに所属し、Ploom XとPloom X ADVANCEDの開発に携わっていた商品企画部 RRP担当部長の山口顕氏は、開発の経緯を率直にこう語る。

「シェアが伸びている一方で、Ploom Xをお試しいただいた後、離脱されているお客様も存在します。理由は吸いごたえ、味・香り、メンソール感のいずれもが弱いということ。これはPloom Xだけでなく、加熱式たばこ全体の課題ですが、今回、我々はそれらの課題に真っ向から向き合い、解決に取り組みました」

そして誕生したPloom X ADVANCEDだが、最たる進化は、最新の加熱技術「POWER HEATFLOW」により、最高加熱温度をPloom Xの約295度から約320度へ上昇させたことだ。山口氏が続ける。

「単に加熱温度を上げるだけでは意味がない。加熱温度に適したブレンドを施されたたばこスティックと掛け合わせることで、喫味のパフォーマンスが最大化されるのです。この春には、専用たばこスティックのメビウス全8銘柄をリニューアルしましたが、それもPloom X ADVANCEDのリリースを見越してのこと。新しいデバイスとたばこスティック、ふたつが組み合わさることで、さらなる旨味や複雑で奥深い味わいが引き出されるようになります」

JTが発表したブラインド調査の結果。特にメンソールやフルーツ(メンソールのフルーツフレーバー系の銘柄)において競合他社製品より高い評価を得たという

結果は如実に現れた。JTが発売前に行ったブラインド調査(デバイスが何かが分からない状態で試用してもらう)では、競合他社製品との比較で、レギュラーは39%対14%、メンソールでは82%対0%(それぞれ残る47%、18%は「どちらでもない」の回答)と、Ploom X ADVANCEDが高評価を得たという。

加えて、前モデルのPloom Xでは110分あった充電時間を90分へ短縮。また、たばこスティックを差し込むだけで加熱が開始する自動加熱機能の搭載などユーザビリティを向上。たばこスティックを差し込むスライド部をよりシームレスにし、Ploom Xの持つスタイリッシュなデザインもブラッシュアップされている。

メディアに初公開されたJT関西工場の製造ライン

新デバイスの投入により、加熱式たばこ市場のシェアを「10.5%から2倍、3倍へと伸ばしたい」(山口氏)と意気込むが、そんなJTの期待感が現れたのが、11月上旬に開催された新商品発表会の会場だ。

通常、こうした発表会は内容に適した都心のイベント会場で開催されるが、今回会場となったのは、JTが国内に持つ3つのたばこ製品製造工場のひとつ、京都市伏見区の関西工場だった。

JT関西工場では、日本の紙巻たばこナンバーワンブランドである「メビウス」をはじめとする紙巻たばこ6ブランド計60銘柄に、Ploom X用たばこスティックの全17銘柄を製造している。なお、たばこスティックを製造する国内拠点は、唯一この関西工場だという。

発表会では工場見学会も開催され、4つある製造ラインのうち1ラインがメディアに初めて公開された。ブレンドされ細かく刻まれたたばこ葉を、紙で巻き一定の長さで裁断。次いでフィルターが挿入され、チップペーパーで巻き上げられ1本のたばこが完成する。これを20本単位で箱詰めしフィルムで包装、さらに10個のカートン単位で包装される様子を見学することができた。

JT関西工場の製造ライン(JT提供)

清潔な工場内はすべてオートメーション化され、品質は厳しく管理されている。「農作物であるたばこ葉は、その年の気候状況により微妙に品質が異なります。しかし、いつどこで購入されても常に同じ喫味を担保できるよう、品質管理を徹底しています」と、製造部長の嶋田達也氏は胸を張る。

メンソールの戦いと、グローバルの拡大

Ploom X ADVANCEDの発売で、ますます白熱しそうな加熱式たばこ「三国志」。今後を占うひとつのカギは、メンソールかもしれない。

現在、日本の加熱式たばこユーザーの7割がメンソール愛好家とされるが、Ploom Xの課題のひとつに「メンソール感の弱さ」があった。

新デバイス「Ploom X ADVANCED」は1,980円(税込)だが、2024年1月7日までキャンペーン価格980円(税込)。新銘柄たばこスティック「メビウス・ブラック・コールド・メンソール」は500円(税込)

JTはこの度、Ploom X ADVANCEDと同時に新しいたばこスティック「メビウス・ブラック・コールド・メンソール」を発売。結晶が大きい天然メンソールを100%使用し、フィルターにもメンソールを添加した「Ploom X史上最強の極冷メンソール」で、すでに3銘柄(カプセルなし)あるメンソールのラインアップを拡充し、ユーザーの選択肢を増やす。

また、国内市場だけでなく、グローバルな販売戦略も気になるところだ。首位を行くiQOSが70近い市場で展開されているのに対し、グローバルモデルとして開発されたPloom Xは現在、12カ国。山口氏はPloom X ADVANCEDの発売により、「2024年中には28カ国に拡大する予定」と語った。

Ploom X ADVANCEDは、より豊かな吸いごたえと味、香りで「1本の愉しみ」を進化させるデバイスであるという。その奥深い喫味で猛追をかけ、3番手に甘んじてきたシェアに変化をもたらすことができるか。群雄割拠する加熱式たばこ市場の動向に注目したい。



高野智宏

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