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【南シナ海】中国に妨害されたフィリピン市民から前線へのクリスマス・プレゼント

ニューズウィーク日本版 2023年12月14日 13時0分

<中国と領有権を争う南シナ海の島々に駐留するフィリピン兵士や漁民に贈り物を届ける自由を行使しようとした民間主導の40隻が1隻を除いて引き返す羽目に>

【再現動画】東・南シナ海で中国機がカナダ機と豪機に仕掛けた危険な嫌がらせ

数百人のフィリピン人ボランティアが乗り組む「クリスマス輸送船団」が南シナ海の紛争地域に人道支援物資を届けるために出発したが、中国船に妨害されて、ミッションを中止した。

民間人主導で40隻以上の船からなるこの船団は、12月10日にパラワン島を出航した。「自国の領海内を移動する権利を行使し、最前線で働く人々にクリスマスの華やぎを届ける」ことを目的としている、と主催者の一人は紛争地域の最前線で働くフィリピン軍兵士や漁師について本誌に語った。

この連合はタガログ語で「われわれのもの」を意味する「アティン・イト」と名付けられており、「平和的でルールに基づいた、しかし断固とした手段で権利を守るフィリピンの揺るぎない決意を示す」メッセージを中国に送るつもりだった。だが、中国政府は反発した。

中国は地図上に波線を引き、資源の豊富なこの海域の大部分を自国の領土と主張している。10日には、少なくとも海軍の軍艦2隻と大型貨物船を派遣して船団を妨害し、中国海警局の船は船団の予定航路に沿って先導する船の間を意図的に横切った。これは一種の威嚇と嫌がらせだった、と船団の主催者らは語る。

継続をめざす民間船団

主催者のエマン・ヒゾンによれば、ボランティアたちは近いうちに別のミッションに挑戦することを誓った。「私たちは再評価し、再び計画を立てる。そして、この計画を皮切りに、多くの民間人主導の物資供給ミッションを行っていく」と、彼は地元メディアに語った。

同グループはすでに別の輸送隊を計画しており、時期としては来年の第1四半期になるだろう、と彼は言う。

今回のクリスマス船団は10日、フィリピン沿岸警備隊に先導され、軍の護衛船団に随伴されて、スプラトリー諸島のフィリピン領ラワク島に向かった。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあって、フィリピン政府が西フィリピンと呼ぶ海域だ。

ラワクは中国領南沙島だと主張している中国は、船の到着を妨害するために中国船を派遣した。主催者代表のラファエラ・デービッドによれば、船団附近を航行していた1隻の中国政府船は、不快に感じるほど近づいてきたという。

「私たちは、西フィリピン海に対する権利を主張したかった。西フィリピン海が自分たちのものであると信じている。それは世界にとっても明らかだ」と、彼女は11日にフィリピンのニュースチャンネルANCに語った。

スタンフォード大学のシーライト・プロジェクトのディレクター、レイ・パウエルは、中国海警局の船が輸送船団の進路を横切ったように見える航跡データを引用した。

「クリスマス輸送船団はこのせいで引き返すことに決めたのかもしれない」と、彼は10日、Xに投稿した。

安全でないと判断し、最終的にミッションを中止したのは、船団の母船T/Sカピタン・フェリックス・オカの船長だった、とボランティア参加者は語っている。

だが、船団に属していたM/V Chowee号は、中国の海上部隊から逃れることに成功し、別のルートをたどって11日早朝にラワク島で貨物を引き渡したとANCは報じた。

この船団には、フィリピン社会のあらゆる階層の人々が乗り組んでいた。200人以上の参加者の中には、若者や学生活動家、漁民、ジャーナリスト、さらには神父も含まれていた。帰路につく前には船上でミサが執り行われた。

フィリピンの調査グループFACTS Asiaの国家安全保障アナリスト、ジャスティン・バキサルはこの船団は短期間にもかかわらず、いくつかの成功を収めたと本誌に語った、

彼が具体的成果として挙げたのは、一隻の船がラワクに到着したこと、フィリピン政府が当初の懸念にもかかわらずこの構想を承認したことだ。

中国の無分別な妨害

ミッションを中止するほどの危険を輸送船団のボランティアに感じさせたことで、中国は「戦術的勝利」を達成した、とバキサルは言う。

「だがこうした行動は、中国の無分別で短絡的な思考も示している。中国はクリスマス船団のミッションを阻止することで、フィリピンを公然と侮辱した。フィリピン政府が次の作戦に全力投球することは間違いない」と、彼は述べた。

この時期に海上を巡視する中国船と衝突したのは、この船団だけではない。

12月10日には、紛争海域であるセカンド・トーマス諸島の海上前哨基地に物資を輸送するフィリピン沿岸警備隊も、中国船の妨害を受けた。中国船が放水砲を使用したため、フィリピンの補給船1隻のエンジンが損傷。港まで曳航されるほどの損傷を受けた。

また、中国船とフィリピンの補給船が軽い衝突事故を起こした。

その前日には、別の係争地域であるスカボロー浅瀬付近の海域で、待機している漁民への補給に向かうフィリピン漁業局の船が、放水銃を配備した中国海警局の船とにらみあった。

フィリピンとアメリカは、中国船がフィリピン船の乗組員に対して音波兵器を使用し、一時的に行動できない状態にしたと非難した。アメリカは武力攻撃からフィリピンを守る条約を結んでいる。

11月には、中国の海上民兵の船も135隻の大群で表れた。海上民兵は愛国的な漁民の船の集団で、人民解放軍海軍や中国海警局と共に行動する。中国政府な公式にはその存在を認めていない。

<動画>迫力の海上民兵
PCG MONITORS ILLEGAL PRESENCE OF MORE THAN 135 CHINESE MARITIME MILITIA VESSELS IN JULIAN FELIPE REEFOn November 13, the PCG monitored 111 Chinese Maritime Militia (CMM) swarming the area of Julian Felipe Reef, and this number increased to 125 based on the last monitoring of... pic.twitter.com/hlFvaOWW2z— Jay Tarriela (@jaytaryela) December 3, 2023

Here's our latest @Satellogic satellite imagery collection, captured just yesterday (December 10) over the Whitsun Reef in the #SouthChinaSea. You can see more than 75 ships congregated in this contentious area.Why is this significant? Whitsun Reef, a subject of ongoing dispute... pic.twitter.com/yupI9PC8S5— SkyFi (@SkyfiApp) December 12, 2023

<動画>「進路妨害」の航跡データとフィリピンのボランティアたち
This may have something to do with the Christmas Convoy deciding to turn back. #Philippines Coast Guard BRP Melchora Aquino is likely leading the convoy, which means #China Coast Guard 5305 likely cut *through* the convoy. @coastguardph @TeamWESCOM @jaytaryela https://t.co/Sg7efei56H pic.twitter.com/XjFCq2iyBA— Ray Powell (@GordianKnotRay) December 10, 2023

<動画>放水銃による嫌がらせと衝突
10/EXCLUSIVE BREAKING VIDEO of water cannoning & collision between #China Coast Guard 21556 and #Philippines resupply vessel Unaiza May 1 near 2nd Thomas Shoal this morning. [10/x] pic.twitter.com/g6RzfxFtLi— Ray Powell (@GordianKnotRay) December 10, 2023



マイカ・マッカートニー

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