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【TWICE、Stray Kids他インタビュー】「まだ完全に理解されているわけではない」...世界を席巻した、Kポップはどこに向かうのか?

ニューズウィーク日本版 2023年12月15日 12時35分

<韓国のポップス業界に強烈な変化球を投げ込んだソテジから30年...。メンバーらが語る、百花繚乱Kポップの未来について>

ソテジワアイドゥル(ソ・テジと仲間たち)──。そんなストレートすぎる名前の韓国の男性3人組が、「ナン・アラヨ(僕は知っている)」という、超ストレートなタイトルの曲をヒットさせたのは1992年のこと。

歌謡曲に重厚なリズムとラップを織り込んだ曲調は、韓国のポップス業界に強烈な変化球を投げ込んだ。Kポップの誕生だ。

それから30年余り。映画やドラマを含む韓流の追い風を受けて、Kポップはニッチなジャンルから、音楽やファッション、テクノロジーなど多くの分野に影響を与えるグローバルなトレンドへと進化した。

その特徴は、徹底的なビジュアル重視と、1曲にレゲエからEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)まで幅広いジャンルを盛り込む音楽的イノベーション、キレッキレのダンス、そして献身的なファンだろう。

アーティストはレコード会社や芸能事務所の下で長年の訓練に耐えてきた若者が多く、歌やダンスのほか、作詞作曲やプロデュースに関わることもある。そしてツアーやファンミーティング、オンラインで世界中のファンと直接交流する。

こうした多面的なプロモーションが、Kポップの世界的な台頭を可能にした。国際レコード産業連盟(IFPI)によると、2022年の世界のアルバム売り上げトップ10のうち8枚はBTS(防弾少年団)やStray Kids(ストレイキッズ)、ENHYPEN(エンハイプン)などのKポップ勢だった。

また、米ビルボード誌によると、Kポップの大手事務所であるハイブやSMエンターテインメント、YG、JYPの23年1〜3月期の株価は平均75.1%上昇し、欧米の老舗であるユニバーサル・ミュージックやワーナー・ミュージックの株価下落とは対照的な動向を示した。

12年にPSY(サイ)の「江南スタイル」が全米チャートをにぎわせて以来、Kポップはアメリカの音楽シーンでも常連となった。

BTSはグラミー賞にノミネートされ、BLACKPINK(ブラックピンク)は全米最大級の音楽フェス「コーチェラ」のヘッドライナーを務め、TWICE(トゥワイス)は28年ロサンゼルス五輪の開会式会場となるSoFiスタジアムのチケットを完売させた。

どれも少し前なら考えられなかった偉業だが、Kポップの進化は続いている。

いったい何がそんなに魅力なのか。これからどこへ向かうのか。そこで業界関係者のほか、TWICEやStray Kidsのメンバーに話を聞いた(全員が曲作りにも参加している)。以下はその抜粋。

◇ ◇ ◇

Stray Kidsのコンサートで声援を送るアメリカのファン(20年2月) JOHNNY LOUIS/GETTY IMAGES

──Kポップのヒット曲を作るカギは何だと思う? それは時代と共に変わってきたのか。

ビンス(YG関連レーベル所属のシンガーソングライター) 私は韓国系アメリカ人で、今は韓国に住んでいる。そのことがユニークで多様な文化に触れることを可能にしてくれた。

韓国のクリエーターには同じようなバックグラウンドを持つ人が大勢いて、いろいろな要素をミックスした曲を作るから、韓国だけでなく世界のオーディエンスの共感を得られるのだと思う。ビジュアル面の重視も大きな成功のカギだろう。このアプローチは今も変わらないし、今後も変わらないと思う。

マリオン・バンダーウィース(BTSなどに楽曲を提供する音楽コンサルタント) 最近はどこからヒットが生まれるか全く分からない。驚くようなところからバイラルになる曲がたくさんある。女性4人組FIFTY FIFTY(フィフティーフィフティー)はデビューから約4カ月で、シングル「Cupid」がいきなり世界のチャートをにぎわせた。

理想はキャッチーなサビ──多くの国の人が歌えるようにたいてい英語だ──と、一緒に踊りたくなるような曲調を組み合わせること。みんなが振り付けを覚えて、TikTok(ティックトック)で公開したくなるような曲がいい。

ナヨン(TWICE、28歳) 私たちの場合、とにかく素晴らしい曲に恵まれたことが幸運だったと思う。ヒット曲を生み出す上で運の果たす役割は大きい。コンセプトや振り付け、コンテンツがしっかりしていることも重要だ。これは時代が変わっても劇的に変わることはないと思う。

エイドリアン・マッキノン(EXOなどに楽曲を提供してきたソングライター、プロデューサー) 重要なのは自分の活動を愛していることに尽きると思う。どんな仕事でも、アイデアや企画書を送っておけばいいやと思う時期がある。

1度や2度ならそれでもいいかもしれないが、そういうやり方に慣れてしまうと、仕事の依頼がどんどん減っていく。自分のやっていることを愛していれば、それを通じて人間は成長できる。中途半端にやっていると、停滞する。

ワンダーキッド(ハイブ関連レーベル所属のソングライター、プロデューサー) 曲のパワーだけで大ヒットを生むのは難しい。曲と一致したコンセプトと企画があってこそだ。

トレンドも重要だが、それは表面的なものにすぎない。いつの時代も、質の高い音楽やアートの中核には「美しさ」がある。アーティストは常にアートの美しさについて謙虚であるべきだと思う。それは過去と現在と未来を結ぶ唯一の確かな道しるべなのだから。

Stray Kids AFLO

チャンビン(Stray Kids、24歳) 独自の一貫したスタイルを維持しつつ、多様なサウンドに挑戦していくことが、私たちの音楽を聴いてもらえる理由の1つだと思う。当初はグループのカラーが強すぎたが、今は自分たちが進むべき方向性がしっかり見えてきた。

ハン(Stray Kids、23歳) 最近はトレンドの移り変わりが激しくて、トレンディーなサウンドを作れば良い曲になるわけではない。Stray Kidsは一貫性のあるサウンドを届けているから、興味を持ち続けてもらえるのだと思う。ヒット曲には、なじみがありながらも新鮮な要素が含まれているはずだ。

フィリックス(Stray Kids、23歳) まだヒット曲を作るカギは見つかっていない気がするけれど、私たちには私たちの音楽を作る私たちなりの方法がある。自分たちのカラーをよく理解しているから、それを表現できるのだと思う。

──Kポップは今や想像を超える高みに到達したが、いまだに誤解されがちな業界でもある。Kポップの真価はなぜ理解されにくいのか。

ビンス アイドルは誤解されやすい。彼らはメディアではるかに多様な振る舞いを求められるから。彼らの大半は、音楽を作っている他のアーティストと同じように、何年もトレーニングを積んでいる。私がスタジオで(Kポップの)アーティストと共同作業をするときは、ライターやプロデューサーと作業をするときと何も変わらない。

シン・チョー(ワーナー・ミュージック・アジアのKポップ責任者) それはステレオタイプや誤解、バックグラウンドが異なる人々の好み故だろう。音楽に限らず、多くの業界でも起きていることだ。

Kポップのグループより、自分でプロデュースもするシンガーやソングライターのほうが優れたアーティストだと人々は思うかもしれない。Kポップアイドルは他のジャンルに比べて、才能ある経験豊富なプロフェッショナルに厳しく監視され、指導される。そのアプローチが独自の成功を生み出してきたが、そこに多くの人が賛同できないのも分かる。

マッキノン Kポップのアイドルはショービジネスの世界で最も勤勉だ。アイドルの友人に彼らの日常について話を聞いたことがある。とにかく忙しい人たちだ。

これは重層的な問題だろう。アイドルが、クリエーターやスタイリスト、振付師、流行をつくり出す専門家、ディレクターなどの「システム」の中で活動していることは知られている。それを理由にアイドルのオーセンティシティー(真正性)に異議を唱える人もいる。

でも、似たようなシステムはKポップ以外にも存在するから、フェアな批判ではない。それに、Kポップのアイドルには、自分のプロジェクトに積極的に関わっている人もたくさんいる。

JAKOPSがプロデュースした「XG」は韓国で活動する日本人メンバーだけのガールズグループだ BRENDON THORNE/GETTY IMAGES FOR SXSW SYDNEY

JAKOPS(サイモン)(XGALXのCEO兼エグゼクティブプロデューサー、ボーイズグループDMTN〔ダルメシアン〕の元メンバー) Kポップのシーンに10年以上携わってきた私は、アイドルは真のアーティストだと思っている。

Kポップのシステムにとって、才能と同じくらい重要なのは「スピリット」だ。真のアーティストは自分の道を歩み続ける勇気を失わない。

私が6年前からプロデュースとディレクションを担当しているXG(エックスジー、韓国で活動する日本人メンバーだけのガールズグループ)は、デビューまでに5年かかった。応募者1万3000人のうち、最終的にデビューしたのはたった7人。

Kポップのスターのチャレンジ精神とひたむきさは、アーティストの最も基本的な美徳の1つだろう。これらの資質がもっと正しく評価されてほしい。

ドム・ロドリゲス(SMエンターテインメントUSAのシニアバイスプレジデント) 私はよく、Kポップのアイドルをプロのアスリートに例える。彼らは何年も必死に努力して、荒削りの素質を最高のレベルに高める。アーティストになるための彼らのコミットメントと情熱を見れば、すぐに理解してもらえるだろう。

──多くのメディアがKポップについて有害な物語を流している。「工場システム」があり「邪悪な闇」を隠しているといった主張は、そこにいるリアルな人々から人間性を奪う。

ビンス アーティストになるために「システムに参加」しようとする人はたくさんいるが、実際にトレーニングを受けられるのは、一握りの選ばれた人だけ。私の知る限り、「システム」による非人間的なプロセスを目撃したことはない。

チョー Kポップのアーティストを見いだして育てるには莫大な投資が必要だ。生身の人間の献身的な努力なしには成り立たないビジネスだ。「工場システム」や「闇」も、実際にあったことではあるが、少なくとも新しいKポップの時代に、そういった悪しき慣習を引き継いだレーベルは生き残っていない。

ワンダーキッド 「工場システム」という言葉は、大量生産のための機械だらけの冷たい工場というイメージが浮かぶ。(本当にそうだとしたら)世間はそれを見抜いてそっぽを向くだろう。「複数の仕事を同時にこなすために組織化されたシステム」という意味なら賛成できる。

BTSを育てたハイブのパン・シヒョク会長(写真)はCNNのインタビューで、「Kポップは思われているほど市場で熱い存在ではない」と、成長の減速を懸念する発言をした VIVIEN KILLILEA/GETTY IMAGES FOR HYBE X GEFFEN RECORDS

──今年3月にハイブのパン・シヒョク会長はCNNのインタビューで、「Kポップは思われているほど市場で熱い存在ではない」と、成長の減速を懸念する発言をした。現場でそのように感じることはあるか。

バンダーウィース 歌に関してはその逆だ。これまで以上に競争が過熱している。多くの人がKポップで仕事をしたいと声をかけてくるし、急速に成長していると感じる。

ワンダーキッド 私はプロデューサーとして、パン会長のようにビジネス面を完全に理解しているわけではないかもしれない。彼の洞察力を尊敬しているし、彼の懸念を軽んじるつもりもない。

私自身はKポップを最新のトレンドに合わせるために、常にさまざまな音楽ジャンルやトレンドを研究している。質の高いコンテンツは結果を生む。そういうコンテンツ作りに全力を注ぐことが、私にできる精いっぱいのことだ。

JAKOPS パン会長の言葉はむしろ、Kポップがグローバルな音楽市場で大きな影響力を持っているという証しだ。

私はプロデューサーとして、常に「斬新さ」を重視している。どんな要素であれ、既存のKポップのシーンにはないアイデアを提案したい。ファンもそういう音楽を待っている。新しいサウンド、新しいメンバー、新しいビジュアル、とにかく新しいものを。

──AI(人工知能)の出現で、音楽業界も大きな変化を経験することになるだろう。

ビンス AI技術にとても魅力を感じるし、音楽業界や私の仕事に間違いなく影響を与えるだろう。AIが生成した声が何でも歌えるようになった今、声の所有権やAIが生成した知的財産の権利に関する法律が定まっていないことは、非常に危険だ。

どんなルールを決めるかによって、AIが音楽業界に与える影響が形作られていくだろう。

バンダーウィース AIが曲を書き始め、レコード会社もその方向で行きたいと思うようになったら、私たちはまずいことになる。

私たちは人間同士、深いレベルで心を通わせる。不完全だからこそつながり合える。ソングライター、プロデューサーとアーティストのコラボレーションは最高に楽しいプロセスだから、なくならないでほしい。

チョー AIは音楽のさまざまな分野で新しいチャンスを切り開き、拡大させるだろう。うちのマーケティングチームでは、管理業務や翻訳や創作のサポートにチャットGPTを使うことを推奨し始めた。AIの使用はいずれインターネットやSNSをチェックするような、毎日の習慣になるんじゃないかな。

ワンダーキッド AIは簡単な下調べに使えるし、創作のツールとして今後どう進化するのか楽しみだ。

今のところ、そこまで大きな影響はない。クリエーターも大衆も芸術に埋め込まれた「潜在意識のメッセージ」を読み取るのが大好きだが、AIの創作物に「潜在意識」はない。

上辺はよく出来ていても、私たちは一瞬でそうした欠落に気付く。ロボット相手の恋愛と同じで、いつかは可能になるかもしれないが、それはずっと先の話だ。

JAKOPS AIは音楽業界におけるパラダイムシフトの象徴だ。メロディーを作ったり歌詞を書いたりするだけでなく、トレンドを読み、データ分析に基づいて創作の方向性に影響を与えることもできる。さまざまなプラットフォームを通じて一人一人にカスタマイズした体験を提供するなど、アーティストとファンの関係も刷新するかもしれない。

AIの出現は人間性、独創性、創造性をいっそう際立たせる機会を与えてくれると、私は思う。AIの可能性を生かしつつ人間的な要素を維持するにはどうしたらいいか、そのバランスを取るのが課題だ。

──全てのグループが世界で空前の大ブレイクを果たせるわけではないが、TWICEがロサンゼルスのSoFiスタジアムをガールズグループとして初めてソールドアウトにするなど、Kポップのアーティストは着実に海外で成功を収めている。音楽グループにとって、グローバルな成功を求めるのは必須なのか。

バンダーウィース 私は世界進出に大賛成。誰もがそうした資金に恵まれるわけではないが、アーティストに成功の見込みがありレコード会社にバックアップする資金力があるなら、絶対トライすべき。ATEEZ(エイティーズ)など、韓国国内より海外のほうがファンの多いグループもある。

マッキノン 世界進出はビジネスにとって大事なことだと思う。パン・シヒョクが言ったように「Kポップは思われているほど市場で熱い存在ではない」という考え方もあるし、推しのアイドルの世界進出を望まないファンがいることも知っている。

それでも個人的には、Kポップグループのグローバル化は音楽業界全体の利益になると考えている。

JAKOPS XGは韓国で活動を開始したが、彼女たちの音楽はKポップではなく「Xポップ」と呼んでいる。特定の国の音楽を表現するにとどまらず、世界中の人に共有される音楽やパフォーマンスを展開していきたいという野心が込められているんだ。

ロドリゲス 今やKポップはグローバルなジャンルだ。世界中にファンがいるし、SMエンターテインメント傘下のアーティストは本当の意味でグローバルな域に達している。

世界に需要があるとなれば、アーティストとしては当然、できるだけ多くの人の心をつかみたいだろう。これだけいろいろプラットフォームがあればクリック1つで数百万人にアピールできるし、その気になれば世界中のファンにリアルで会える。

TWICE TODD OWYOUNGーNBC/GETTY IMAGES

──Kポップは競争の激しい市場だが、どうやって作品が埋もれないようにクオリティーを保っているのか。

バンダーウィース うちのソングライターはメロディーや歌詞やサウンド作りに凝りたがるし、次はもっといい作品を作ろうと奮闘する。精いっぱい作り込んだデモ音源を渡したら、あとはレコード会社にお任せ。曲を完成させるのは彼らの仕事だ。

モモ(TWICE、27歳) 秘訣が分かるなら、教えてほしい。私の場合は、曲のコンセプトを表現することにベストを尽くしている。それから限られた時間の中でダンスをシンクロさせようと、メンバー全員ですごく努力している。

ダヒョン(TWICE、25歳) TWICEらしさを保ちつつ違う面も見せようとひねりを加えたりもする。

マッキノン グレートであれ。時間がかかってもいいから、正しくやれ。グレートであれ。人脈は賢く使え。グレートであれ。ポジティブな姿勢をキープしつつ、自分に忠実であれ。グレートであれ。自分勝手になるな。グレートであれ。

JAKOPS XGの独自性を確立する際に土台にしたのは、メンバーそれぞれの個性だ。システムよりも人間を重視するのがこの業界。メンバー7人の個性を見いだし開花させることが最強の武器になると考えて、5年以上やってきた。

チームワークも大事だ。どうすればよりビッグでクオリティーの高いプロジェクトを実現できるか、XGのメンバーを中心に毎日アイデアを出し合う。時間も手間もかかるが、チームワークが全てと言っても過言ではない。レベルを上げたいなら、みんなで練習を重ねるしかない。

バンチャン(Stray Kids、26歳) 音楽は考え抜いて作るもの。Stray Kidsに大きな期待を寄せる人が世間にたくさんいると思えば、プレッシャーを感じる。でも制作のプロセスを楽しんで誰も見たことのない作品を生み出せば、音楽作りがより楽しくなるし、肩の荷も軽くなる。

リノ(Stray Kids、25歳) メンバーみんなで何げない日常にインスピレーションを探すようにしている。スタミナが付くようにエクササイズも欠かさない。頑張れるのはエクササイズで鍛えているおかげだ。

作品を世に送り出すあらゆるプロセスは明確なコンセプトに基づくべきだと考えるJAKOPS TPG/GETTY IMAGES

──Kポップのレーベルの中には、数撃ちゃ当たるとばかりに所属アーティストにいろんなスタイルの音楽をやらせるところもある。確たるアイデンティティーを持つことは成功の秘訣ではないのだろうか?

バンダーウィース 私はさまざまな概念がKポップをKポップたらしめているのだと思っている。明確なアイデンティティーを持つバンドもあるかもしれないが、発表する作品には幅があるはず。

レーベルは最近、サウンドの幅とファン層を広げるためにグループの下部ユニットを作ったりもしている。いずれも独自性とともに、幅広い層にアピールするためさまざまな要素を備えている。

チョー ネガティブな見方をすれば戦略もプランもないということになるけれど、ポジティブに考えるなら、いろんなことに挑戦する柔軟性があるということだ。後者の考え方を伸ばし、前者についてはよりよい解決法を見つけていけば、いいバランスにつながると思う。

サナ(TWICE、26歳) 何より大切なのは、アーティストがやりたいと望み、楽しめる音楽を作ることだと思う。アーティスト自身が自分の音楽を楽しんでいるという事実は、最高の魅力として伝わるはず。

チェヨン(TWICE、24歳) 新人グループならいろんなコンセプトや音楽を試しているうちに自然と独自のチームカラーを見つけていくのだと思う。TWICE歴が長くなればなるほど、そう思うようになった。曲を聴いた人たちから「これ、TWICEっぽいサウンドだね」と言ってもらえるようになればいいと思う。

JAKOPS 人々に愛される作品が生まれるのは、練習での指導、音楽の選択、作品作りのプロセス、ビジュアル関連の作業、マーケティング活動の全てが、明確ではっきりしたコンセプトに基づいて行われた場合に限るというのが私の信念だ。

ヒョンジン(Stray Kids、23歳) 自分のスタイルさえ見つかれば、グループ全体のアイデンティティーがもっと明確になって、ファンの心もつかみやすくなると思う。その枠内においてコンセプトやスタイルの多様性があれば、似たような曲の繰り返しも避けられるだろうし、グループの独自性も高まるだろう。

アイエン(Stray Kids、22歳) 一番大事なのは、能力を磨く努力をひたすら続けることだ。個人としての改善がなければ、さらに大きな規模でも成功を重ねるというのは難しくなる。

ロドリゲス 新しいプロジェクトは常に音楽から始まる。音楽が創造性に火を付けるのだ。楽器ごとの編曲やテンポ、歌詞、曲のコンセプトといったものがビジョンを動かす。

手当たり次第に試しているというのは当たらない。これはビジョンに命を吹き込む創造的なプロセスで、音楽的にもビジュアル的にもそうしたプロセスを経て、作品は大衆の元に届けられる。

──多くのアーティストが世代をまたいで活躍しているのに、「次世代のKポップ」を探せという動きが活発だ。どうしてだと思うか。

ミナ(TWICE、26歳) どの世代にもそれぞれのトレンドや特色特徴がある。みんなが世代分けをしようとするのは、それぞれの世代をそれぞれの色によって記憶し、大切にしたいから。「次の世代」に対しても、同じことをしたいのだと思う。

ジヒョ(TWICE、26歳) みんながあまり世代のことを気にしないで、私たちの音楽を楽しんでくれるとうれしいのだけれど。

ロドリゲス 音楽を世代として見るということは、1人のアーティストをデビューから、キャリアのさまざまな地点を経て育っていくのを見守ることだという考え方もある。

企業としての立場で言えば、私たちは常にアーティストの成長を見守っている。最近のアメリカのレーベルはこういうことをあまりやらなくなった。

──これからの数年でKポップはどこに向かうのだろうか。

ジョンヨン(TWICE、27歳) 今のKポップは、美しくて才能にあふれたグループぞろい。だからこそ、その年齢に合ったコンセプトや音楽をもっと見られればと思う。

ツウィ(TWICE、24歳) アーティスト同士のコラボレーションがもっと増えればいいと思う。すごく意外性があるし、楽しい要素だから。

ビンス アメリカ発のポップ音楽はただの「ポップ」であって「アメリカンポップ」とは言わない。音楽の世界では地域の垣根が失われつつあり、どこ発の音楽であれ、ヒットすれば単に「ポップ」と呼ばれる時代が来るだろうと思う。

境界線はぼやけ、Kポップとかラテンポップとかアフロポップといった名前も最終的に単なる「ポップ」になるんだ。

チョー Kポップは次の進化に向けた重要な時期にある。Kポップの「K」は「ポップ」と比べてあまり強調されなくなるだろうと思う。これからはもっとハイブリッドな形の音楽が出てくるだろうが、Kポップ産業がこの分野のリーダーになれればいいなと思う。

ワンダーキッド Kポップには時間をかけて築かれてきた強固な土台があり、その魅力は失われないだろう。Kポップは韓国で発展したけれど、さまざまな国で取り入れられていくだろう。

世界中の若いリスナーがKポップのアーティストに憧れているけれど、全員が韓国でトレーニングを受けられるわけじゃない。それぞれの国でそれぞれの国の「Kポップ」が発展していくはずだ。そこから新しい音楽と文化が生まれる。ヒップホップやロックが世界の音楽産業に影響を与えたように。

スンミン(Stray Kids、23歳) その最前線に僕らStray Kidsが立っていたいと心から思う。Kポップのもっと未来的な面を見てみたい。

ロドリゲス 成功を積み重ねてこられたことについてはすごくうれしく思っている一方で、まだ始まったばかりだという思いも強い。ポップカルチャーにおけるKポップの存在の大きさがやっと世間に知れ渡ったという段階だから。

これからもっとたくさんのアーティストがこのジャンルから出てきて、世界の音楽文化に影響を与えていくはずだ。

ワーナー・ミュージック・アジアでKポップ部門を統括するシン・チョーは、いずれKポップが「ハイブリッドな音楽」のリーダーになることを期待している COURTESY OF SHIN CHO

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この記事の初出は米グラミードットコム(GRAMMY)です。
https://www.grammy.com/news/future-of-kpop-roundtable-interview-twice-stray-kids-jakops-videos

ナン・アラヨ/ソテジワアイドゥル

서태지와 아이들(Seotaiji and Boys) - 난 알아요(I Know) M/V・seotaiji

  

「어머님께/オモニムケ (Dear Mother)/G.O.D

G.O.D - 어머님께 (Dear Mother) MV (HQ)/parkerlewisrocks

P.S. I Love You/リナ・パーク

Lena Park - P.S. I Love You

タッシア・アシス(フリーランスライター)

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