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韓国物価高騰、韓国内旅行より日本旅行の方が安い。日本人旅行者にも変化が...

ニューズウィーク日本版 2023年12月15日 19時30分

<韓国で物価が高騰している。相次ぐ値上げで消費者が日本から個人輸入する例が増え、一方、明洞地区のホテルが高騰し、日本人旅行者も相対的に安価な東大門エリアのホテルを選ぶ人が多くなっている......>

韓国統計庁によると11月の韓国の物価は前年比3.3%上昇、8月から4か月連続で3%台の上昇率を記録した。政府が物価高騰を監視する中、ソウル市が公共交通運賃を値上げした。

市は8月、バスの初乗り運賃を1200ウォンから1500ウォンに値上げし、10月には1250ウォンだった地下鉄の初乗り運賃を1400ウォンに値上げした。バスは25%、地下鉄は12.2%の値上げである。

韓国の今年の物価上昇率は1.5%前後と目されている。最低賃金は5%上昇、平均賃金も平均4%台上昇したが、賃金上昇を上回る値上げが相次いでいる。10月の農産物価格は前月比13.5%上昇、外食費は21年と比べて13.05%上昇している。

  

求人サイトジョブコリアが21年4月に調査した会社員の平均昼食費6805ウォン(約700円)に対し、23年の推計費は平均7700ウォン(約792円)で、弁当持参者を除く外食者の推計昼食費は9100ウォン(約936円)となっている。

韓国消費者院の調査でもキムチチゲ定食は21年4月の6857ウォンから23年2月には7820ウォンに14%値上がりし、7932ウォンだったビビンバも9020ウォンに13.7%値上がりしている。

国内旅行費の高騰による海外旅行の人気上昇

国内旅行は高止まりといってよい。今年9月、ある韓国人が友人とゴルフ旅行を計画した。済州島のゴルフパッケージツアーは1人112万ウォンで、日本行きゴルフパッケージは76万ウォンだった。グループは日本行きを選択した。

国内旅行費の高騰で海外に出る韓国人が増えている。10月の訪日韓国人の推計値は63万1100人と10月として過去最高を記録した。韓国の空港を10月に利用した出発と到着を合わせた国際線旅客数はコロナ禍前の19年10月の90%に相当する659万3千人で、日本路線は19年10月を81万人余り上回る186万人、ベトナム路線も19年10月の91%に相当する78万人が利用した。

一方、今年1月から7月に済州島を訪れた国内旅行者は前年同期と比べて6.9%少なかった。なかでも7月は14%の落ち込みだった。韓国人が購入できる免税店の売上が前年比27.5%減など、多くの小売店が大きく落ち込んだという。

ソウルの観光市場動向と日本人旅行者の行動変化

観光売上の減少はソウルも同様だ。明洞の近くで日本人旅行者に土産品を売ってきた店主は訪韓日本人が増えているという割に日本人客はほとんど来ないと話しており、明洞のカフェ店主も日本人旅行者をほとんど目にしないという。

利用者が途絶えたと明洞の裏通り

コロナ禍前、明洞は日本人で溢れていた。ソウルを訪れる日本人旅行者の多くが明洞地域のホテルに宿泊し、明洞や隣接する南大門市場で雑貨や服を買い、ソウル駅前のスーパーで土産品を買っていた。

明洞-外国人旅行者は戻ったが、日本人はほとんどいない

昨今、明洞ではほとんど日本語を耳にしない一方、東大門市場は日本語が飛び交っている。明洞地域のホテルがコロナ禍前の1.5倍から2倍に高騰。明洞を避けて比較的安価な東大門を選択する日本人が多いとみられる。

東大門地域のホテルに宿泊する旅行者は、東大門市場や近隣の広蔵市場で食事をし、東大門市場で買い物をするが、安価な店を選んでいる。航空運賃と宿泊費の高騰で買い物に充てられる金額が小さくなったのだ。

東大門市場のファッションビル内に店を構えるイーマート系列の格安食品スーパー「ノーブランド」は日本人旅行者で溢れかえる。同店は生鮮や安価なプライベートブランド(PB)が中心で、韓国を頻繁に訪れるハードリピーターに人気の商品は皆無といってよい。数か月前には求める商品がないと諦める日本人旅行者をたびたび目にしたが、このところ安価なPBを購入する日本人旅行者が増えている。同店は日本語ができるスタッフを系列店から呼び寄せた。

東大門に近い広蔵市場、日本人旅行者が増えている

日本人利用者の急増で日本語スタッフを配置したノーブランド

  

物価高騰に対応する個人輸入市場の活況

国内物価の高騰を受け、個人輸入も活況を呈している。韓国で販売していない海外製品を取り寄せる「海外直購」は以前からあったが、内外価格差が広がった商品を個人輸入する人が増えているのだ。

韓国統計庁によると、今年第1四半期に韓国のオンラインサイトで日本から商品を取り寄せた「海外直購」は前年同期比14.3%増の3019億ウォン(約334億円)に達し、第2四半期も前年と比べて13.5%多かった。統計には楽天やアマゾンなど日本サイトからの購入数は含まれていないため、実際の購入数はさらに多い。

日本からの個人輸入はキャベジンやサロンパスなどの医薬部外品やアシックスなど日本ブランドに加えて、日本酒や欧州産ワインの海外直購も目立っている。送料と税金を負担しても日本から輸入する方が安いのだ。

9月には米アップル社製iPhone15の個人輸入申請が急増した。iPhoneは日本の方が韓国より発売開始が早いため、新機種が発売されると日本や香港から取り寄せる人が少なからず現れたが、円安ウォン高で価格差が生じたことから日本への注文が大幅に伸びたようだ。

ソウルの繁華街は物価高騰の皺寄せを受けている。明洞の裏通りや飲食店が立ち並ぶ仁寺洞、梨泰院など夜9時を過ぎるとゴーストタウンと化している。夕食を外で食べずに自宅で摂る人が増えたのだ。


佐々木和義

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