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日本近海に緊張走る、中ロ戦略爆撃機の合同演習に日韓がスクランブル発進

ニューズウィーク日本版 2023年12月18日 18時43分

<ロシアと中国は安全保障面での結びつきを一段と強化し、アメリカとの対立を深めている>

日本と韓国は12月14日、中国とロシアの戦略爆撃機が日本と韓国の近海で行った長距離航空哨戒に対応するため、戦闘機をスクランブル発進させたことを発表した。

<画像>演習に参加して撮影された中ロの航空機

韓国の合同参謀本部によれば、中露両国の戦闘機の編隊は日本海で合流した後、国際空域内の韓国の防空識別圏で合同演習を実施した。

日本の防衛省は、北東アジアを通過する両国の軍用機の飛行経路を示した地図を公開し、航空自衛隊が戦闘機を発進させて、動きを監視・撮影したと発表した。

ロシア空軍と中国人民解放軍空軍の戦略兵器による合同哨戒活動は、この種の演習としては7回目で、今年は6月の出撃に続いて2回目となる。

今回の動きは、ロシアと中国の安全保障面での協力関係が強化していることを示している。両国は西側諸国全般、特にアメリカと直接的に戦略的・イデオロギー的な対立関係にある。そしてアメリカは日本・韓国と防衛条約を結んでいる。

日本の防衛省統合幕僚監部が公開した画像には、日本海から対馬海峡を通って東シナ海を飛ぶロシアのツボレフ95戦略爆撃機と中国の核搭載可能なH-6爆撃機がそれぞれ2機ずつ写っていた。

日本政府によると、これら長距離爆撃機はソ連製かソ連の設計に基づいたもので、海上偵察機であるロシア海軍のTu-142長距離洋上哨戒型機と中国のY-8中型輸送機を伴っていた。

ロシアのスホーイ35長距離多用途戦闘機と中国のJ-16戦闘爆撃機も護衛として派遣されたことを示す画像もあった。

米日韓に対する牽制

韓国軍は、防空識別圏への「侵入」に対して、直接軍事回線を通じて中国に抗議を申し入れたことを明かした。ロシアに対しては同様に抗議の意思を示す手段がなかった、と韓国の聯合ニュースは伝えている。

今回の哨戒飛行は国際空域で行われたが、それでも、矛先がアメリカと日本・韓国であることをあからさまに見せつけた。

ロシア国防省は14日、今回の演習は集団的軍事力のデモンストレーションだと発表。中国外務省は、「日常的かつ通常の活動」であり、国際法に合致していると述べた。

ワシントンのシンクタンク戦略国際問題研究所が2022年6月に発表した分析によると、ロシアと中国の共同哨戒行動は、作戦上の知識を獲得し、認識されている脅威への対抗や戦略的な水路の保護など複数の目的を果たすためのものだという。

ロシアと中国の戦略的関係は、ウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席の個人的な強いつながりに負うところが大きい。どちらも軍事力増強や国内における抑圧的な人権状況をめぐる激しい国際的圧力にもかかわらず、互いの正当性を支持しあってきた。

両国の経済関係は不均衡で、中国にかなり有利に傾いている状態ではあるが、ロシアが21カ月前にウクライナへの本格的な侵攻を開始して以来、両国のパートナーシップは拡大の一途をたどっているようだ。この傾向が始まったのは、プーチン大統領による2014年のクリミア併合だった。当時から、中国はロシアを非難しなかった。

以来、ロシアは中国に対する防衛産業関連輸出に関わる規制を徐々に緩和し、武器販売の量と質を増やし、合同軍事演習の頻度を高めてきた。

中国は最新鋭の戦闘機やミサイル・システムも購入しており、ロシアの防衛産業にとって大きな市場となっている。

ウクライナでは、中国製部品が殺人ドローンを含むロシア製ハードウェアに使用されている。西側の制裁対象になっているロシアのメーカーは西側の機器の代替調達先として近隣諸国に目を向けている。

中国が戦場で使用するための戦闘用機器をロシアに直接移転しているわけではない。だが中国はロシアにとって、主要な経済的生命線であり、国際的に孤立しているプーチンが政治的安定を維持する上で重要な役割を果たしている。

<画像>演習に参加して撮影された中ロの航空機



アーディル・ブラール

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