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「ロシアに領土割譲で戦争終結を」と、ウクライナに提言

ニューズウィーク日本版 2023年12月28日 16時27分

<領土の全面奪還に固執するウクライナに、この戦争には勝つ道はないことを前提に、東部4州もロシア支配下のまま国境を凍結し、「戦争を最終的に解決するときだ」と、ドイツの著名政治家が訴える>

ドイツの著名な政治家がウクライナに対し、ロシアとの戦争を終結させるために「一時的な」領土の喪失を受け入れるよう求めている。

ミヒャエル・クレッチマー・ザクセン州首相は12月20日、独誌『シュピーゲル』に対し、停戦と引き換えに東部4州などを占領された現在の国境をそのまま凍結することを検討するようウクライナ政府に提案し、23カ月に及ぶ戦争を「最終的に解決する時が来た」と訴えた。

「停戦の場合、ウクライナはまず、特定の領土に一時的に手が届かなくなることを受け入れなければならないかもしれない」と、クレッチマーは言う。「ウクライナの領土がロシア領になることはない。しかし、他の主要な紛争と同様、最終的な解決策を講じる時が来た」

クレッチマーはまた、対ロシア政策に関してドイツ政府に「Uターン」を促し、ロシアはドイツにとって「危険で予測不可能な隣人」であり、ドイツが立場を弱めれば「さらなる紛争の基礎を築くことになる」と警告した。

「侵略はウクライナで止まらない」

「残念ながらドイツ政府の基本姿勢は、交渉はしない、ただ武器を配れ、というものだ」とクレッチマーは述べた上で、アメリカの議員たちは状況をもっとよく理解し、「この方法では戦争に勝てない」ことを理解していると示唆した。

これに対しウクライナ外務省のオレフ・ニコレンコ報道官は、12月27日のフェイスブックでクレッチマーの発言を非難し、領土で譲歩すればロシアからの「さらなる侵略を招くだけだ」と主張した。

「ウクライナが一時的にでも領土を失うことになれば、ロシア軍はドイツ、特に東の端のザクセン州に近づくだろう」と、ニコレンコは言う。「領土の割譲は必然的にロシアのさらなる侵略につながり、それは間違いなくウクライナの国境を越えていく。ヨーロッパの平和はロシアの敗北にかかっている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年、ウクライナのドネツク、ヘルソン、ルハンスク、ザポリージャの4州を併合すると発表した。国際的には認められていないが、戦争が続く中、これらの州はすべてロシアの支配下にある。

またニューヨーク・タイムズ紙は12月23日、プーチンは停戦のための「取引をする用意がある」と報じた。プーチンは外交的な裏ルートを通じて、国境を現在の位置のまま凍結する条件で戦争を終結させる意向を示しているとされる。

ウクライナは、自国の領土を少しもロシアに渡す気はないと明言している。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2014年にロシアが不法に併合したクリミア半島も含めてすべてを奪還するまで戦争は終わらないと繰り返し宣言している。


アイラ・スリスコ

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