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群れで襲うドローンスウォームも秒で撃ち落とす独防空システム「スカイネックス」がウクライナを強くする

ニューズウィーク日本版 2024年1月9日 16時35分

<ドローン戦が激化し防空強化の必要に迫られているウクライナにとって大きな助けに>

【動画】ドローンスォームも秒で撃ち落とす「スカイネックス」とその仕組み

ドイツによる新たな軍事支援で、ウクライナの防空能力が大幅にアップする。

1月4日にドイツ連邦政府が発表した新たな支援パッケージには、ドイツ製の短距離対空システムであるエリコン・スカイネックスの供与が含まれている。ドイツは2022年12月にスカイネックスの製造元であるラインメタル社と約2億ドルの契約を結んだと発表。契約内容に含まれるスカイネックスのうち最初の2基を2024年前半にウクライナに届けると約束していた。

今回の供与は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が西側諸国に対して、防衛システムや兵器のさらなる供与を訴えたことを受けてのものだ。ロシアはウクライナ各地で空からの攻撃を強化している。ドイツの追加支援パッケージにはこのほかに、防空システムの運用に必要なレーダー設備「TRML-4D」2基、ドローン検知システム30台、地雷除去車両2台や追加の弾薬などが含まれている。

1分で1000発連射

ラインメタル社によれば、スカイネックスは大型の戦術ドローンや空対地ミサイル、迫撃砲やロケット砲を迎撃できる。半径約50キロの探知範囲にある脅威を識別できる3D捕捉レーダーも備えている。

さらにスカイネックスは35ミリ機関砲「MK3」が最大4門搭載され、ラインメタルによれば1分間で1000発超を連射可能。同社がユーチューブ上に公開した宣伝動画によれば、これらの機関砲には追跡用レーダーやテレビ、赤外線カメラ、レーダー式の距離計が搭載されており、「最も小さな標的でも」攻撃できるようになっている。

防衛問題情報サイト「SOFREP」の編集主幹を務めるガイ・マッカードルによれば、スカイネックスはほかの防空システムと連携させて使用することもできる。連携可能なシステムにはラインメタル社の既存の防空システム「スカイガード」や「スカイシールド」などの他、アメリカがウクライナに供与した長距離防衛システム「パトリオット」も含まれる。

マッカードルは本誌の取材に対して、「スカイネックスのような防空システムと、パトリオットのより従来型の技術を組み合わせることで、ドローンなどの小型の脅威から弾道ミサイルなどの大型の脅威までを幅広くカバーできる」と述べ、スカイネックスがウクライナの軍事能力を押し上げることになる可能性があると指摘した。

パトリオットとどう違うか

ウクライナ軍のセルゲイ・ナエフ司令官は先日、ウクライナは西側の同盟諸国のお陰で既に数多くの防空システムを保有しているものの、ロシア軍による激しい爆撃を受けて、防空システム用の砲弾が不足していると警告していた。ナエフは1月3日にAFP通信の取材に対し、ウクライナにはパトリオットを使って「あと数回の強力な攻撃に耐える」だけのミサイルしかないと語った。

マッカードルは本誌に対して、スカイネックスは汎用性が高いだけでなく、パトリオットに比べてずっと手頃な価格だと説明。米国製の防空システム「パトリオット」の発射機が1基あたり約11億ドルなのに対して、ドイツ政府がスカイネックス2基の契約でラインメタル社に支払う額はわずか2億ドルだったという。

「ドローンのように小型で動きが素早い物体を迎撃するには、スカイネックスの方がずっと効果的でもある」とマッカードルは指摘し、「誰もが知っているように、ウクライナ上空にはドローンが飛び交っている」と述べた。

また「スカイネックスはABM弾(内部に収められた多数の重金属ペレットを高密度で投射する弾)を発射するため、ドローンの大群を迎撃するのに特に効果的だ」とマッカドールは言う。「ちなみに長距離弾道ミサイルの迎撃では、パトリオットの方が優れているが、ロシア軍の長距離弾道ミサイルの保有数は著しく減ったとされている」

マッカードルはまた、スカイネックスが運びやすいシステムであることも指摘した。「敵に位置を突き止められ、狙われた時、これは大きな利点になる」



ケイトリン・ルイス

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