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イスラエルもびっくり、ハマスの武器庫に中国製の武器が

ニューズウィーク日本版 2024年1月9日 18時13分

<果たして中国は、これらの武器がハマスの手に渡ることを知っていたのか否か。その答えによっては、中東情勢が大きく動く可能性がある>

イスラエルは、ハマスが中国製の最新鋭兵器を保持するようになった経緯を調べている、という新しい調査報告書を発表した。

イギリスのテレグラフ紙は1月5日、イスラエル国防軍(IFD)が、ハマスの武器庫に隠された中国製の武器を発見したと述べたと報じている。これらの武器のなかには、M16アサルトライフル用の弾と照準器、自動擲弾銃、通信機器が含まれるという。

 

開戦から4カ月目に突入したこのイスラエル・パレスチナ紛争は、10月7日にイスラム組織ハマスの戦闘員がイスラエルのキブツなどを襲撃して誘拐、レイプ、殺人をおこない、約1200人が死亡した事件がきっかけだった。イスラエルは直ちに報復攻撃を開始、ハマスが実効支配するガザ地区ではこれまでに2万3000人近い住民が殺害され、5万8000人以上が負傷したと、ガザ地区の保健当局は述べている。

ハマスの実力を上回る武器

英紙テレグラフは、イスラエル諜報筋の発言として、中国製兵器の備蓄は驚きであり、「中国から直接ハマスへ送られたのか否か」という重要な疑問が持ち上がっていると伝えている。

この諜報筋によれば、発見された装備の規模と性能は、ハマスのそれまでの装備を上回るものだったという。

「言うまでもないが、問題は、中国はこれらの武器がハマスの手に渡ることを知っていたのか、それとも、イランなどの第三者を経由してきたのかということだ」。元NATO情報分析官のパトリック・ベリーは同紙にそう語った。

ベリーが疑問を抱いているのは、自動擲弾銃のような「専門性の高い歩兵部隊用の新型装備」が、親パレスチナの武装組織の手に渡った経緯だ。ベリーによれば、イランがハマスに訓練や資金を提供し、装備移転で「少なくともなんらかの役割」を果たしている可能性は高いという。

イスラエルは2023年11月、いくつかの武力衝突において、ハマスが出所不明の新兵器を使ったと報告していた。この件についてIDFにコメントを求めたが、詳細は明かされなかった。

本誌は、中国とイランの外務当局とイスラエル国防省にそれぞれ書面でコメントを求めたが、返答は得られていない。

12月には、中国のマイクロブログサイト「微博(微博)」で、ある軍事ブロガーが、イランが支援するイエメンのフーシ派は中国の技術を応用した対艦ミサイルを使用していると示唆したことで波紋を巻き起こした。フーシ派は親イランの武装組織で、ガザとの連帯を示すために紅海でイスラエルと関係する商船を攻撃している。

イスラエルと、世界第二の経済大国である中国は、長年にわたり友好関係にあったが、イスラエルがガザ地区への報復攻撃を開始したあと、関係は打撃を受けた。中国は今でもイスラエルにとって最大級の貿易相手だが、イスラエルに対する10月7日の残虐な攻撃に関して、いまだにハマスを公然とは非難していない。

さらに中国の王毅外相は、ガザにおけるイスラエルの対応に関して「自衛の範囲を越えている」と批判した。また、中国の中東問題担当特使が10月後半に中東を訪問した際にイスラエルを素通りしたことで、両国の亀裂はいっそう深まっている。

 

イスラエルの報復攻撃開始後、中国のソーシャルメディアには、反ユダヤ主義的発言やイランのプロパガンダがあふれている。イスラエル支持のコメントを削除する中国政府の検閲もそれを助長しているようだ。

中国の観測筋のなかには、中国がこの紛争を利用して、中東における米国の影響力を削ぎ、グローバルサウスの守護者としての地位を固めようとしている、との見方もある。
(翻訳:ガリレオ)



マイカ・マッカートニー

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