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ロシアとの戦場への出撃はいつ? ウクライナが、ジェットエンジン搭載「新型」カミカゼドローンを公開

ニューズウィーク日本版 2024年1月26日 19時46分

<ドローンが主役となっているウクライナでの戦争。ジェットエンジン搭載型の試験飛行の様子と見られる映像が公開された>

ロシアとウクライナが互いにドローン開発でしのぎを削るなか、ウクライナがジェットエンジンを搭載した自爆型ドローンの試験を行っている様子だという動画が浮上した。動画には、前方に短い翼が付いた独特の形状をした無人の航空機が、自在に空を飛び回っている様子が映っており、かなりのスピードが出ているように見える。

■【動画】段違いのスピード...ウクライナ軍が公開した、ジェットエンジン搭載「新型」カミカゼドローンの映像

ウクライナのメディアが投稿した短い動画は、ジェットエンジンを搭載したウクライナの「新型」自爆型ドローンの「試験が順調に進んでいる」らしいことを示している。

本誌はこの動画の信ぴょう性について独自に確認することはできず、ウクライナ当局にコメントを求めたが現在までに返答はない。

イギリス在住のドローンの専門家、スティーブ・ライトは本誌に対して、「このドローンは、昨年モスクワを攻撃したウクライナの国産ドローン『ビーバー』とよく似た先尾翼(前方に小さな翼がある)機で打ち上げシステムも同じだが、大きな進化を遂げている」と述べた。

長距離ドローン「ビーバー」はモスクワ攻撃に使用

長距離自爆型ドローンの「ビーバー」は、2023年にモスクワに対する攻撃で使われたドローンだ。「ビーバー」はガソリンエンジンを搭載した先尾翼機とされている。

ライトは、ガソリンエンジンだとドローンの最高速度は時速210キロ程度が限界だと指摘。これを安価なジェットエンジンに替えることで最高時速320キロ程度を達成することが可能で、また「(ビーバーよりも)やや湾曲した翼からも、新型ドローンがそれぐらいの速度で飛行することを想定した設計であることが伺える」と主張した。

ウクライナのメディアは今月はじめ、ウクライナ人の軍事ブロガーの記事を引用し、ウクライナ軍が初めて、ロシア軍が多用している自爆型ドローン「シャヘド131」「シャヘド136」のアップグレード版でジェットエンジンを搭載した「シャヘド238」を迎撃したと報じた。ウクライナ空軍はこれを確認していないが、ロシアは2023年末に、近いうちにジェットエンジン搭載型のシャヘドを使用するとほのめかしていた。

シャヘド238がウクライナの戦場に出現した事実は確認されていないものの、軍事・兵器専門家のデービッド・ハンブリングは1月9日に本誌に対して、「十分にあり得ることだ」と述べた。

ウクライナでの戦争はドローンが主役

開戦からまもなく2年を迎えるウクライナの戦争では、ドローンが大きな役割を果たしている。ウクライナのドローンの第一人者であるミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル改革担当相は、2023年12月に本誌に対して、「これは不眠不休の戦争だ」と語っていた。

そして戦争が始まってすぐに、ウクライナの「ビーバー」やロシア軍が使用しているイラン製の「シャヘド」など、さまざまな種類の自爆型ドローンが使われるようになった。

シャヘド(ロシア名はゲラン)は低い震動音が特徴的で、標的に到達すると搭載された弾頭が粉砕または爆発する。ウクライナ軍にとって、見つければ比較的簡単に撃墜が可能だが、多くの場合は検知するのが最も難しい部分だ。

こうしたなか、ウクライナ軍の当局者らは2023年11月、ロシア軍がシャヘドの改良版をウクライナ領内に送り込むようになっていると述べた。改良版は機体の色がより黒っぽく、カーボンファイバー製で、ウクライナの防空システムで検知するのがさらに難しくなっているという。

イランは11月に、ジェットエンジン搭載のドローン「シャヘド238」を発表した。



エリー・クック

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