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「しょせん男社会」とネット愕然...『バービー』主演女優&監督のオスカー落選に「ケン」が一言 ヒラリーも反応

ニューズウィーク日本版 2024年1月26日 20時15分

<社会現象レベルのヒットを記録しただけに、バービーを演じたマーゴット・ロビーとグレタ・ガーウィグ監督の落選は波紋を呼んでいる。2人に対し、ヒラリー・クリントンからもメッセージが>

現地時間1月23日に発表された映画芸術科学アカデミー主催の第96回アカデミー賞ノミネーションで、バービー人形を実写化して社会現象レベルの大ヒットとなった『バービー』の主人公と監督が候補入りしなかったことが、「女性蔑視」と波紋を広げている。

●落選した2人にヒラリー・クリントンから激励メッセージ、その内容とは?

バービーを演じた立役者マーゴット・ロビーと女性監督として新たな興行記録を打ち立てたグレタ・ガーウィグ監督が候補から漏れる予想外の結果に、「バービーの映画で主人公だけ選出されないのはおかしい」と失望の声が相次いでいる。

同日公開の『オッペンハイマー』は13部門に名を連ねる快挙

マーゴットはこれまでゴールデンローブ賞や放送映画批評家協会賞、全米映画俳優組合(SAG)賞などで主演女優賞にノミネートされており、受賞の有無に関係なく、アカデミー賞でも主演女優賞候補入りが確実視されていた。一方のグレタ監督もオスカー初受賞が期待されていた。

今年のアカデミー賞を席巻したのは、最多13部門にノミネートされたクリストファー・ノーラン監督が「原爆の父」を描いた『オッペンハイマー』。作品賞、監督賞、俳優賞、脚色賞など主要部門を独占し、ノミネート可能なすべての部門に名を連ねる快挙となった。

一方、同日公開で「バーベンハイマー」現象を巻き起こした『バービー』は、作品賞、ケン役のライアン・ゴズリングの助演男優賞、脚色賞、歌曲賞など8部門で候補入り。バービーの持ち主の母グロリアを演じたアメリカ・フェレーラが助演女優賞にサプライズノミネートされた一方、主演女優賞と監督賞では候補入りすることができなかった。

「ケン」が異例の声明

この結果を受け、メディアは一斉に『バービー』が「冷遇」されたと報道。多様性やジェンダー平等を訴えた作品であることから、「ハリウッドはしょせん男社会」と皮肉る声も上がり、CNNは「女性が公平に扱われるのは難しい」と家父長制度が文化のあらゆる側面に組み込まれている現状に言及した。

そんな中、ライアンは「ケンという名のプラスチック人形を演じたことをとても誇りに思っているが、バービーなしでケンは存在しない。そして、グレタ・ガーウィグとマーゴット・ロビーなしに、本作は存在しなかった」と異例の声明を発表。世界で称賛された歴史的な作品の一番の功労者が選出されなかった「冷遇」に異論を唱えた。

また、ヒラリー・クリントン元米国務長官もX(旧ツイッター)で「グレタ&マーゴットへ」と題した激励メッセージを投稿。「興行収入で勝っても、金メダルを手にできないのはつらいかもしれませんが、何百万人ものファンはあなたたちを愛しています。2人ともケナフ(Kenとenough=十分を合わせた造語で今のケンのままで満足の意味)よりずっと素晴らしい」と綴り、エールを送った。

一方、2人の落選が世間をざわつかせていることに対し、「候補となった他の女性たちの偉業に暗い影を落とした」との批判や「マーゴットはプロデューとして作品賞、共同で脚本を手がけたグレタ監督も脚色賞で候補入りしたじゃない」との声もあり、賛否を呼んでいる。

[筆者]
千歳香奈子
北海道・札幌市出身。1992年に渡米し、カリフォルニア州サンタモニカ大学で写真を学ぶ。96年アトランタ五輪の取材アシスタントとして日刊スポーツ新聞社アトランタ支局に勤務。ロサンゼルス支局、東京本社勤務を経て99年よりロサンゼルスを拠点にハリウッドスターら著名人へのインタビューや映画、エンターテイメント情報等を取材、執筆している。日刊スポーツ新聞のサイトにてハリウッド情報や西海岸のトレンドを発信するコラムも寄稿中。著書に『ハリウッド・セレブ』(学研新書)。



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