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射程距離はHIMARSの約2倍 砲弾不足も補う長距離ロケット弾GLSDB獲得で戦況が変わる

ニューズウィーク日本版 2024年2月1日 15時12分

<前線のさらに後方まで攻撃することが可能になるためロシア軍にとっては大きな脅威に>

アメリカはウクライナに供与予定の新型長射程ロケット弾「GLSDB(地上発射型小直径弾)」の試験に成功し、近くウクライナに提供する見通しだ。ウクライナはこのところ弾薬不足や軍事支援の将来をめぐる不安に悩まされていたが、このGLSDBを獲得すれば、前線のずっと後方にあるロシアの軍事拠点を攻撃する能力が強化される。

【動画】徹底解剖、羽の生えたGLSDBの強さ

アメリカが供与する射程約145キロのGLSDBの第一弾は、早ければ1月30日にもウクライナに到着するという。米ウェブメディアのポリティコが、事情に詳しい4人の発言を引用して伝えた。

 

アメリカは2022年の秋からウクライナへのGLSDB供与を計画していたが、米国防総省は2023年11月にロイター通信に対し、試験の成功を見届けるために出荷時期を2024年はじめに延期すると述べていた。ロイター通信はまた、3人の情報筋の発言を引用する形で、試験は1月16日にフロリダ州で実施されたと報じた。

米ボーイング社とスウェーデンのサーブ社が共同開発したGLSDBは、ウクライナ軍が攻撃に使用する長距離精密兵器を補完できる。GLSDBの射程距離は、アメリカがウクライナに供与済みの高機動ロケット砲システム(HIMARS)の約2倍で、ロシア軍は今後、兵器や物資を前線からさらに後方に配置し直さなければならなくなる。

ロシアはGLSDB供与に強く反発

GLSDBは、ウクライナ軍が2023年10月に初めて使用したATACMS(陸軍戦術ミサイルシステム)や、ウクライナ軍がクリミア半島にあるロシアの軍事資産を攻撃するのに繰り返し使用してきた巡航ミサイル「ストームシャドー」よりは射程距離が短い。しかしウクライナ軍としては、より格安に使える長距離兵器だ。

2023年にアメリカがウクライナにGLSDBを供与する可能性が報じられた際、ロシアはこれに強く反発し、戦争をエスカレートさせる「きわめて危険な行為」だと非難した。

まもなく開戦から2年を迎えるウクライナ戦争では、北東部の前線でロシア軍が新たに攻勢を強めるなか、ウクライナ軍は弾薬不足に悩まされている。GLSDBの供与は、長距離兵器が不足しているウクライナ軍に、さらなる弾をもたらすことになる。

米国防総省のパット・ライダー報道官は1月30日にメディアに対して、GLSDB供与の「具体的なタイミングは確認できない」と述べ、作戦上の安全保障をその理由に挙げた。

ライダーは記者団に対して、「引き渡しについて発表するかどうかはウクライナ側に任せる。我々としては今後もウクライナや産業界のパートナーと緊密に協力し、我々が供与する兵器をウクライナ側が可能な限り迅速に受け取り、使用できるようにしていく」と述べた。

米議会でウクライナへの追加支援の審議が難航するなか、ロシア軍は新たな攻勢に出て、消耗が激しいウクライナ軍への圧力を強めている。西側のアナリストらは、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州の要衝アウディーイウカに猛攻を続ける一方で、ロシアと国境を接する東部のハルキウやルハンスクでも攻勢を強めているという。

ウクライナの情報機関を率いるキーロ・ブダノフ少将は1月30日、ウクライナのメディアに対し、ロシア軍はハルキウ州とルハンスク州の境界近くにあるゼレベツ川への到達を目指しており、その後西方に進軍する見通しだと述べた。

アントニー・ブリンケン米国務長官は、1月29日にNATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長と行った共同会見の中で、米議会がウクライナへの追加軍事支援を承認しなければ、「我々が支援し、ウクライナが達成してきたこと全てが台無しになる危険がある」と述べた。



エリー・クック

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