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夜の海に燃え上がるロシア大型揚陸艦...ウクライナ無人艇が「ツェーザリ・クニコフ」を撃沈する瞬間

ニューズウィーク日本版 2024年2月19日 18時30分

<クリミア半島沿岸で黒海艦隊の大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を撃沈したと、ウクライナの情報機関が公表。当局がこの攻撃を「象徴的」と述べる理由とは?>

テレグラムチャンネルに投稿された、ロシアの軍艦が炎に包まれているとみられる映像が広まっている。動画が出回る前、ウクライナ軍の無人水上艇(海上ドローン)が、黒海でロシアの大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を撃沈したとの発表があった。

【動画】海面スレスレを飛び接近...ウクライナ無人艇がロシアの大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を撃破する瞬間

ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」が、同国の情報機関の話を引用する形で報じたところによると、ロシア黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」は今月14日、ウクライナ軍の攻撃を受けて沈没したという。

ウクライナ国防省情報総局はまた、海上ドローンがツェーザリ・クニコフを攻撃した瞬間とされる映像をテレグラムで公表した。その投稿では、ウクライナ軍の無人水上艇「マグラV5」が、ロシアに併合されているクリミア半島の都市アルプカの近海で同艦を攻撃したとしている。ツェーザリ・クニコフは左側に損傷を受けて沈み始めたという。

同機関はさらに、今回の撃沈は象徴的だと述べている。この揚陸艦の名前の由来となった旧ソ連の海軍少佐ツェーザリ・クニコフが、まさに81年前(1943年)の2月14日に死亡しているからだ。

本誌はこの動画の信ぴょう性を確認できておらず、ロシア国防省にメールでコメントを求めている。

黒海艦隊の約3分の1を「無力化」

ウクライナ軍参謀本部はソーシャルメディアの公式ページ上に声明を発表し、ツェーザリ・クニコフの破壊についてこう説明している。

「ウクライナ軍は、ウクライナ国防省情報総局と共同で、ロシアの大型揚陸艦ツェーザリ・クニコフを破壊した。破壊時、同揚陸艦はアルプカに近いウクライナの領海上にいた」

テレグラムのチャンネル「クリミアン・ウィンド」は14日、クリミア半島にあるヤルタ、アルプカ、ミスホルの住民が爆発音を5回耳にしたと報じた。

ロシア政府は今回の報告について、今のところ何の反応も示していない。ロシア国防省はこれに先立ち、黒海でウクライナの無人機6機を破壊したと発表していた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、ウクライナはロシアの黒海艦隊に多大な損害を与えてきた。

同年4月には、同艦隊の旗艦「モスクワ」が、ウクライナ軍の攻撃を受けて沈没した。23年9月には、クリミア半島の都市セヴァストポリにある黒海艦隊司令部が、ウクライナのミサイル攻撃を受け、幹部数人が死亡。潜水艦も破壊されたと報じられた。同年12月には、黒海艦隊の戦車揚陸艦「ノボチェルカスク」がウクライナ軍の攻撃で破壊され、少なくとも37人の乗組員が死亡したとされる。

今月に入ってからも、ウクライナ海軍の無人水上艇がクリミア半島沿岸で夜間攻撃を実施し、ミサイルを搭載したロシア軍のコルベット艦「イワノベツ」を破壊した。ウクライナの発表によれば、この攻撃でも無人水上艇マグラV5が使われていた。

ウクライナの戦略コミュニケーション・センター(StratCom)によると、ウクライナ側は今月6日までに、黒海艦隊のおよそ33%を「無力化」したという。テレグラムへの投稿で、「ウクライナ軍参謀本部によると、わが軍はこれまでにロシアの艦船24隻と潜水艦1隻を無力化した」と述べている。

StratComはまた、「オープンソースのデータによれば、ロシア軍が全面侵攻を開始した時点で、ロシア黒海艦隊は74隻の軍艦を保有していた」と付け加える。「ウクライナへの侵略は黒海艦隊にとって損害のもとだ」

(翻訳:ガリレオ)

イザベル・ファン・ブリューゲン

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