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台湾に100機近い気球を飛ばしてくる中国が意味不明

ニューズウィーク日本版 2024年2月20日 18時0分

<アメリカで戦闘機に撃ち落とされた偵察気球をまだ飛ばしていたのか? そうでなくても嫌がらせには違いない。その執拗さに驚くほかない>

台湾周辺の上空で2023年12月以降、100機近い中国の気球が確認されている件に関して、台湾は2月中旬、さらなる詳細を明らかにした。

これらの気球は、中国の戦略的な嫌がらせと一般に思われている。ただし台湾国防部(国防省)は、気象観測用と思われるこれらの気球と、中国人民解放軍(PLA)を直接結びつけることは避けている。国防部は2月18日、これらの気球が台湾近海にいる人民解放軍の戦艦から打ち上げられているとする説を否定した。

 

中国国防部のコメントは得られていない。米国防総省にも書面を通じてコメントを求めたが、現時点では返答は得られていない。

台湾政府は、10週間にわたる気球打ち上げ作戦----すべて中国沿岸から台湾海峡に向けて打ち上げられたもの----について、中国が仕掛けた心理戦の一形態だと説明している。中国は、強大な力をもつ隣国であり、台湾を自国領土の一部と見なしている。台湾では、気球の撃墜を求める声もあるが、政府は、武力によって応じれば中国政府の思うつぼになるとして、こうした声を抑えている。

打ち上げたのは人民解放軍?

台湾で発行されている中国語の日刊新聞「中国時報」による2月17日付けの報道では、同国の匿名の防衛関係者の発言が引用されている。これによれば、気球の大多数は中国沿岸部から打ち上げられたものだが、航行中の人民解放軍艦艇の甲板から飛び立つところが探知されたものもいくつかあるという。

中国軍の狙いは、台湾の防空システムを攪乱することにある、と同紙は述べている。そうした気球は、台湾周辺における人民解放軍の軍用機および艦艇による日常的な活動と同様に、数を増している。

台湾国防部は、台湾領空に入る気球はすべて監視していると述べた。発見した気球については台湾交通部民用航空局に報告し、航空機の安全確保を図っている。

国防部は、国防部軍事新聞通訊社(軍聞社)が伝えた声明のなかで、「国家安全保障を危険にさらす敵の脅威に関しては、いかなるものでも検証をおこない、しかるべく対処する」と述べている。

国防部のデータを本誌が分析したところでは、12月7日から2月17日にかけて、台湾が気球87機の飛行経路を追跡していたことがわかった。この期間中、少なくとも気球25機が台湾領空を侵犯し、台湾本島上空を飛行した。

防衛アナリストはこれについて、台湾の領土、とりわけ重要な軍事拠点周辺に関する台湾政府の支配力を弱体化させるための圧力戦術だと説明している。気球の発見は、1月中旬におこなわれた台湾総統選挙後に急増した。そのピークは2月9日と10日で、それぞれの日に領空飛行が8機ずつ行われた。

台湾政府は依然として、気球は気象観測用であると見ている。また、気球の出現には中国政府が関わっているとしているものの、その政治的な目的については、台湾政府は公式にはいっさい推測を避けている。

これまでのところ、中国政府が気球を公式に認めた唯一の発言は、1月下旬に中国国務院台湾事務弁公室から出たものだ。台湾事務弁公室の陳斌華報道官は気球について、民間企業が気象観測のために打ち上げたものであり、「なんら目新しいものではない」と述べた。

 

台湾の行政院に属し、対中政策を担当する大陸委員会の志宏報道官は2月、気球の数や飛行頻度、飛行経路を考えれば、陳の説明は「信じがたい」と話した。民間組織には、そうした活動を維持するだけの資金確保手段がないだろう、とは述べている。
(翻訳:ガリレオ)



ジョン・フェン

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