Infoseek 楽天

「死人が出る」──米元国家情報長官が「もしトラ」に懸念を表明

ニューズウィーク日本版 2024年2月27日 15時3分

<トランプが次期大統領になり、いま計画している通りにアメリカのスパイ組織に手を突っ込めば、死人が出る可能性がある?>

ドナルド・トランプ前米政権の複数のメンバーが、トランプが再び大統領になった場合の米情報コミュニティーへの影響について懸念を表明しており、トランプが再びかつてのような行動を取れば死人が出る可能性があると警告する者もいる。

トランプは現在、秋の米大統領選に向けて共和党の候補者指名獲得を目指している。まだ指名を確実にするのに十分な数の代議員を獲得していないものの、2024年に入ってから行われた全ての州予備選でほかの候補に大差をつけて勝利しており、指名獲得はほぼ確実と見る向きが多い。

選挙戦が続くなかトランプの盟友たちは、トランプに忠実な人材を雇うなど、さまざまな方法で大統領権限の拡大を目指す計画(プロジェクト2025)を進めていると報じられている。トランプはまた、「ディープステート(闇の政府)の解体を目指す10項目からなる計画」と称する「真実と和解の委員会」を立ち上げるつもりだとも表明している。この10項目の中には、情報機関の職員を解雇する計画も含まれる。

「我々はアメリカの国家安全保障組織と情報組織から、腐敗した全ての者を一掃する」とトランプは2023年3月に述べた。「脅威になる省庁や機関は全面的に刷新する」

情報提供者の「死につながりかねない」

米ウェブメディア「ポリティコ」は2月26日の記事の中で、2期目のトランプ政権が実際に誕生した場合に備えて、主要な米情報機関の刷新計画の草案が作成されていると指摘。かつてトランプ政権の下で働いていた複数の元政府職員が、トランプは「(1期目の時よりも)さらに強引に、自分の政治課題に敵対的と見なされる者を、自分に忠実な者に置き換えようとするだろう」と警告していると伝えた。

ポリティコはかつてトランプ政権下で働いていた職員や側近18人に、トランプ再選の可能性にまつわる懸念は何かと尋ねた。このうちの一人が、2017年から2019年までトランプ政権の国家情報長官を務めていたダン・コーツだ。コーツはトランプと頻繁に意見が対立するようになり、国家情報長官を辞任。その後はトランプを声高に批判するようになり、ポリティコに対して、トランプが国家安全保障に関する機密文書を適切に扱わなかった疑いがあることを踏まえ、今後を大いに懸念していると語った。

コーツはポリティコに対して、トランプが再び大統領になれば、アメリカに重要な情報を提供する情報源が「命を落とすことになりかねない」と語った。

トランプは機密扱いの文書を適切に扱わず、ホワイトハウスを去った後もフロリダ州の私邸マールアラーゴに不適切に保管していた疑いがある。この疑惑について捜査が行われた結果、2023年6月には米司法省から、国防情報を無断で意図的に保持していた罪など37件の罪状で起訴された。

トランプはこれら全てについて無罪を主張。ホワイトハウスから文書を持ち出す前に、自らの権限で機密指定を解除したと主張した。

本誌は26日午後にトランプの事務所にメールでコメントを求めた。返答があれば今後、内容を補足して記事をアップデートする。


トーマス・キカ

この記事の関連ニュース