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キノコ、代替肉、セラム...体の中から若返り! 世界最新美容トレンドを追う

ニューズウィーク日本版 2024年3月15日 10時10分

<食材、トリートメント、オゼンピックの影響......より自然で長続きする「アンチエイジング」の極意をリストアップ。2024年に注目したい最新美容とは>

ボトックスみたいな異物を注入して「若見え」顔をキープしていた日々よ、さようなら。そろそろもっとナチュラルに、体の中から若返る努力をしたいもの。

そこで本誌は美容やウェルネスの専門家や医師に取材し、食と健康・美容の最新トレンドを探った(編集部注:本稿記載の薬剤や施術を使用・利用される際は必ず事前に日本の専門医にご相談ください)。

■食材

①キノコ類

2005年に化粧品ブランドの「オリジンズ」がキノコエキス含有ローションを発売して以来、キノコへの注目度は高まるばかり。驚異的な健康パワーを秘めるキノコ類から今年も目が離せない。

ロンドンで開業する美容専門医ソフィー・ショッターは、「霊芝からシロキクラゲまでさまざまなキノコに保湿効果だけでなく、多くの肌トラブルを改善する効果があるとされ、広くスキンケア製品に使われている」と指摘。

さらに、キノコには集中力を高めたり気持ちを落ち着かせたりする効能も認められ、ストレスへの適応力を高める効果もあるという。

ちなみに、ストレスへの適応力を高めるものを総称する「アダプトゲン」という表現が注目されている。キノコに加えて各種のハーブやサプリメントもアダプトゲンの1つで、いずれもストレスの低減や心身のバランス回復に役立つと考えられている。

②植物由来の食材

米フロリダ州のチャーリーズ・ステーキハウスが牛肉より高い69ドルで植物由来のヒレステーキの提供を始めるなど、最近は多くの外食チェーンが植物由来の代替肉を使った商品をメニューに加えている。

植物由来の代替肉の需要は今後もますます高まると予想するのは、ニューメキシコ州の認定皮膚科医ディープテジ・シン。

「今は栄養学の情報がちまたにあふれているから、老化を遅らせることができるなら食生活を変えてみようと思う人が増えている」と指摘し、さらにこう続けた。

「(牛肉の消費量を減らすのは)あなたの健康にいいだけでなく、地球環境の持続可能性を高め、動物たちの命を守ることにもつながる」

③NADサプリ

聞き慣れない名前だが、NADは「ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド」の略で、体内に自然に存在し、代謝を促す物質として知られる。

美容専門医のエメリン・アシュリーによれば、「NADは加齢に伴って減少するが、それをサプリで補えば代謝がよくなるだけでなく、DNAの修復も促進され、炎症が減少し、コラーゲンの生成が増えるから、見た目も若々しくなると考えられる」。

NADのサプリは、粉末や錠剤の形で幅広く入手可能。ただし、血糖値に影響を及ぼす薬などを服用中の人は事前に医師に相談してほしい。

植物由来の食材が大人気。消化器の健康は肌の健康に直結している VAASEENAA/ISTOCK

■トリートメント

①再生美容

美容専門医のショッターによれば「エステの技法は常に進化しており、その選択肢はどんどん増えている」。だから今はヒアルロン酸などの異物をフィラーとして使わなくても、自分の皮膚細胞組織を「再生」させて肌のハリを取り戻すことが可能だ。

そしてショッターの予想では、今年はサーモンやマスのDNA(ヒトのDNAによく似ているそうだ)から抽出したポリヌクレオチドなどの「スキンブースター(肌を若返らせる物質)」を注入する施術が注目を集めそうだ。

こうしたスキンブースターは保湿効果があるだけでなく、コラーゲンやエラスチンを生成する結合組織(いわゆる線維芽細胞)の働きを刺激することで、その再生を促進するという(コラーゲンやエラスチンなどの物質は加齢とともに失われていき、しわやたるみの原因となる)。

細胞本来の再生機能を刺激することに焦点を当て、より自然な形で肌の若さを保つ施術の人気は、今後もますます高まるに違いない。

「より長く健康的な人生を送りたければ、まずは若々しく健康な肌を保つことだ」と、ショッターは言う。「最近の研究では、肌の老化が心臓や脳などの臓器の老化にもつながることが分かっている」

②レヌバ

美肌の再生にこだわる人が増えるなか、フロリダ州の認定皮膚科医シノ・ベイ・アギレラが注目するのはMTFバイオロジクスの開発した新しい注入剤レヌバだ。

レヌバはヒトの脂肪組織に由来する注入剤で、外科手術を必要とせず、ヒアルロン酸を含まないアンチエイジング剤として米食品医薬品局(FDA)の認可を得ている。

今の美容業界では「フィラー疲れ」が広まっており、過剰にフィラーが注入されたパンパンの顔にうんざりした人たちが、それに代わる若返りの方法を求めている。

ヒアルロン酸のフィラーでも一時的に顔のハリを取り戻すことはできるが、体内の酵素によって分解・吸収されてしまうから効果が持続しにくい。

対してレヌバは、注入した場所で患者本人の脂肪を増やす効果がある。あとに残るのは自分の脂肪だけだから、よりふっくらとした若見えの顔になり、効果も持続する。しかも今のところ、副作用はほとんど報告されていない。

レヌバを使えば「若く見せるのではなく、本当に肌が若くなる」と、アギレラは言う。「そういう施術が確立され、レヌバのような製品もできたのだから、使わない手はない。

レヌバは脂肪移植のような手術を必要とせず、顔にも手にも注入でき、加齢によって減ってしまった脂肪を自分の脂肪で補うことができる」

ただし安くはない。注入量1.5立方センチ当たり1800ドルくらいは覚悟して。

皮膚の細胞を活性化する光療法マスク ANDREI ORLOV/ISTOCK

③高気圧酸素室

純酸素での呼吸を可能にする高気圧酸素室は、スキューバダイビングで起きる減圧症などの治療に用いられるが、美容法としても注目されている。

「純酸素は神経変性疾患のような多くの疾患に効果があるが、アスリートの健康と回復にも役立つことが知られている」と、ショッターは言う。「組織への酸素供給を最適化するから、肌の健康的な輝きを取り戻せる」

酸素室に入る時間は、60分くらいが目安だ。

④赤色光セラピー

オムニラックスや家庭用の光療法マスクなど、皮膚の細胞を活性化させる赤色光治療器の人気が高まっている。

「肉眼では見えない特定の波長の赤色光と近赤外光を利用し、細胞全体の健康に重要なミトコンドリアを刺激する方法だ」と、皮膚科医のシンは言う。

「赤色光セラピーには美容効果だけでなく、精神の健康と認知機能の改善効果も期待できる。気分がよくなり、頭が冴えてくる」

光を浴びる時間は1回につき10~15分ほどだ。

■新製品

①No7フューチャーリニューセラム

ドラッグストアで購入可能なNo7フューチャーリニューセラムの人気は、今年も続きそうだ。

「昨年の発売当初からすごい反響があった」と、美容専門医のアシュリーは言う。「目に見える肌のダメージを修復する働きがある。抗酸化物質やコメ由来のプロテイン、ヒアルロン酸、ナイアシンアミドが配合されていて、特にペプチドのブレンドがいい」

②パウダー・サンスクリーン

肌の老化をもたらす最大の原因と言えば、自然な加齢プロセスと余計な紫外線によるダメージだ。そこで登場したのがパウダー状のサンスクリーン剤。

顔の再建手術を得意とするハーバード大学医学大学院の外科医リンダ・リーは「自分でも愛用しているし、今年の夏は大ヒットすると思う」と言う。

「UVケアの重要性は今や誰もが知っているが、日焼け止めの効果が薄れたときにフルメークの上から塗り直すのは難しい」と、彼女は言う。

「でも『スーパーグープ!』のパウダー状サンスクリーンなら、いつでもどこでも素早く塗り直せる。大切なのは(夏のビーチだけでなく)普段から紫外線対策をすること。紫外線のダメージは、積み重なると取り返しがつかない」

■トレンド

①よりインクルーシブに

美容・化粧品業界のブランドはまだ、消費者のさまざまな肌色や体形、髪質に対応できていない。「社会全体が多様性と包括性を重視し、変化を求め続けるなかで、美容業界も対応を迫られている」と本誌に語ったのは、美容外科医のキンバリー・リー。

「これからはさまざまな肌の色や髪質に対応できる製品がさらに必要とされるだろう」

消費者の意識の変化はメーカー側も無視できない。ある市場調査によると、美容製品の購入に当たって特定のブランドにこだわると回答した人は非白人で約25%。この数字は白人のほぼ2倍だ。

②オゼンピックの影響

2型糖尿病の治療薬として承認されていたGLP-1受容体作動薬のセマグルチド注射剤(商品名ウゴービ)は、21年に長期的な体重管理への適用がFDAに承認され、以来、利用者が大幅に増加した。

一方で昨年には、肥満治療薬として未承認のセマグルチド製剤「オゼンピック」の乱用が問題になり、無責任な処方や使用が懸念された。

「今後5~6年で、1500万人以上が減量目的でこの薬を使うと予測される」と、アメリカ美容整形学会のスティーブン・ウィリアムズ会長は本誌に語った。

「減量意識の高まりで、一時的には腹部の脂肪吸引など、主にボディーの美容整形需要が高まるだろう」と、ウィリアムズは言う。

「一方でオゼンピックのような薬のせいで脂肪が減りすぎたと感じる人がいれば、逆に脂肪をつける手術、例えば胸や腕をふくよかに見せる手術が増えるかもしれない。また体重の軽い人が増えれば、股関節や膝関節の手術は減るかもしれない」

オゼンピックの無責任な使用で急激に脂肪が減少し、顔の皮膚がたるんでしまった顔を「オゼンピック・フェイス」と呼んだのは、著名な美容皮膚科医のポール・ジャロッド・フランク。

彼の見立てでは、セマグルチド剤で無理に減量する人が増えれば、失われたボリューム感を取り戻すためにフィラーを入れたがる人も増えるはずだ。

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