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英王族にプライベートは許されない? 「ドタキャン」騒動でキャサリン妃の健康状態にウワサ渦巻く

ニューズウィーク日本版 2024年3月1日 17時10分

<タブロイド紙にプライベートを狙われ続ける英王室メンバー。その中でウィリアム皇太子は秘密主義と情報管理に徹してきた>

[ロンドン発]ウィリアム英皇太子が2月27日「プライベートな問題」で名付け親の1人であるギリシャ最後の国王コンスタンティノス2世の追悼式をドタキャンしたことが、腹部の手術を受けて公務から離れているキャサリン皇太子妃の健康状態を巡る憶測に火を付けている。

英大衆紙(タブロイド)は常に特ダネを求めてハイエナのように嗅ぎ回る。英王族に「プライベート」が許されるのは母親の子宮の中にいる時だけと皮肉られる。しかし母、ダイアナ元皇太子妃の悲劇を目の当たりにしたウィリアム皇太子は秘密主義と情報管理に徹してきた。

2005年、英大衆日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド(廃刊)が担当医しか知らないウィリアム王子(当時)の膝の治療をスクープした際、携帯電話のボイスメールが盗聴されていると疑い、同紙による組織的な大規模盗聴事件を暴く端緒をつくったことがある。

ウィリアム皇太子が自分のインナーサークルの中に入ることを許すのは秘密を守ることができるごく限られた人物だけ。弟のヘンリー公爵(王位継承順位5位)とその妻メーガン夫人と上手く行かなくなった大きな理由の1つにもウィリアム皇太子の秘密主義と情報管理が挙げられる。

昨年のクリスマス以来、姿を見せない皇太子妃

米紙ニューヨーク・タイムズ(2月28日付)は「キャサリン皇太子妃を心配するウワサが渦巻く。ウィリアム皇太子が未公表の『プライベートな問題』を理由に王室行事への出席を急遽取りやめたことで、ネット上ではキャサリン妃の健康状態に関する憶測が飛び交う」と報じている。

昨年のクリスマス、英ノーフォーク州サンドリンガムの聖メアリー・マグダレン教会の礼拝に家族で参加して以来、キャサリン妃は公の場に姿をあらわしていない。キャサリン妃はロンドンのクリニックで予定されていた腹部の手術を受けたと今年1月17日に発表された。

そのわずか1時間後、今度はチャールズ国王が前立腺肥大の治療を受けることが発表された。2月5日には国王はがんであることが明らかにされた。それ以来2人の健康状態は国民の関心の的となった。中でもキャサリン妃の健康状態を巡っては多くの憶測や懸念、陰謀説が飛び交う。

「キャサリン妃の健康状態はいまだに謎のままだ。腹部手術は盲腸から胃腸まで何でもあり得る。手術は成功したと英王室は1月17日に発表した。キャサリン妃の診断や予後について『がんではない』ということ以外の詳細は明らかにされていない」(ニューヨーク・タイムズ紙)

個人的な医療情報を非公開にしたい皇太子妃の願い

手術は前日の1月16日に行われていた。「皇太子妃は声明が関心を呼ぶことに感謝している。子供たちのためにできる限り平常心を保ちたい、個人的な医療情報を非公開にしたいと望む皇太子妃の願いを一般の人々が理解してくれることを願っている」(17日の声明)

1月29日「皇太子妃は術後療養のためロンドン郊外のウィンザー城に戻った。経過は良好だ。皇太子と皇太子妃はクリニックのチーム全員、特に献身的な看護スタッフに感謝の意を伝えたい」と英王室は広報した。皇太子妃は現在、ウィンザー城内のアデレード・コテージで療養中だ。

昨年1月に亡くなったコンスタンティノス2世はウィリアム皇太子の祖父フィリップ殿下(故人)のセーリング・パートナーで、チャールズ国王とも親しい。チャールズ国王はがん治療のためコンスタンティノス2世の追悼式に出席できなかった。

ウィンザー城聖ジョージ礼拝堂で追悼文を朗読する予定だったウィリアム皇太子はコンスタンティノス2世の遺族に電話で出席できなくなったことを伝えた。英王室は「プライベートな問題」の詳細を明らかにしなかったが、キャサリン皇太子妃は「順調に回復している」と説明した。

プーチンと同じく秘密は憶測を増幅させる

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の健康問題と同じように秘密は憶測を増幅させる。キャサリン皇太子妃は復活祭(今年の学校休日は3月29日~4月12日)が終わるまで公務に復帰する可能性は低いとされる。皇太子妃が公の場に姿を見せない限り、憶測を一掃するのは難しい。

スペインの人気ニュース番組で司会者のジャーナリストは「王室の側近と完全オフレコで話した」として「皇太子妃は合併症が生じたため医師は思い切った決断を下さなければならなかった。彼女を昏睡状態にして挿管しなければならなかった」とまことしやかに語った。

どんなニュースにも「肯定もせず、否定もせず」を旨とする英王室も「全くのナンセンスで滑稽だ。根本的に全くのデッチ上げで絶対にあり得ない」と全面否定した。しかし英大衆紙デーリー・メールのヤン・モア記者は2月29日付コラムでウィリアム皇太子にも批判の目を向ける。

「皇太子に正当な欠席の理由があるのなら私たちに話すか、あるいはヒントぐらい出すべきだろう。彼にも私生活を送る権利があるが、危機的状況の時にプライバシーがどうのこうのと騒ぐ映画スターではない。彼は英国の王位継承者であり、公的な責任を負わなければならない」

「やがて彼は国のトップとなり、国民のアイデンティティー、団結、誇りの中心となる。セレブ気取りの振る舞いをやめ、不遜な態度と強迫症的な秘密主義を抑えるべきだろう。もしこれが、彼が王位に就いた時に起こることの兆候だとしたら、とても心配なことだ」と忠告する。



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