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中国海警局がフィリピン船に放水銃発射や衝突攻撃、南シナ海でエスカレートする妨害行為

ニューズウィーク日本版 2024年3月6日 15時49分

<資源豊かな南シナ海のセカンド・トーマス礁の領有権をめぐるフィリピンと中国の対立が過熱している。フィリピンに何かあれば、同盟国アメリカと中国の衝突になりかねない>

南シナ海にある岩礁に向かっていたフィリピンの補給船隊が、中国海警局に行く手を阻まれ、高圧放水銃による執拗な攻撃を受けた。

補給活動に参加していたフィリピンの2隻の船舶のうち1隻は、この放水で損傷を受け、帰還を余儀なくされたほか、複数の乗組員が負傷した。もう一方の船は、目的地への航行を継続できたと、フィリピン政府は発表している。

 

これは、この1年間に何度も発生した衝突の最新の事例であり、力と力の衝突になる懸念も抱かせる。フィリピンに何かあればアメリカ軍がくることになっている。フィリピンは、アメリカと米比総合防衛条約を結んでいる。これは、アメリカのジョー・バイデン大統領が「鉄壁」と呼ぶ、両国間の安全保障条約だ。

今回中国海警局から妨害を受けた補給船は、新たな人員と物資を、フィリピンの戦車揚陸艦「BRPシエラ・マドレ」に運ぶ途中だった。建造から80年を経過したこの戦艦は、現在はセカンド・トーマス礁に座礁させられている。天然資源が豊かなこの海域に進出しようとする中国に、フィリピンがこの海域の実効支配を主張するための拠点としてっている。

戦艦を座礁させ、そこにフィリピンの海兵隊隊員を駐留させている行為は国際法に違反すると中国政府は主張しており、この老朽化した戦艦の補強や人員への補給に向かう船をことごとく阻止しようとする。

中国の実力行使

フィリピン政府の国家安全保障会議は3月5日朝の声明で、中国船は「嫌がらせをし、行手を阻み、放水銃を発射し、衝突するような危険な操縦をして、またしても、定期業務であるシエラ・マドレへの補給と人員交代ミッションを不法に遅延・妨害しようとした」と抗議した。

フィリピンの中国大使館も同日に声明を発表し、セカンド・トーマス礁への「不法侵入」に関して、フィリピン政府に抗議したことを明らかにした。

この声明は、領有権を両国が領有権を争うセカンド・トーマス礁について、フィリピン側の船舶は、「中国政府の許可を得ず、不法に座礁させた船舶に建設資材を含む補給品を届けようとした」と主張した。

「中国海警局の対応は、職務に忠実かつ抑制的で、理にかなっており、合法的だった」と、同大使館は付け加えた。

中国は、天然資源が豊富な南シナ海の大半について領有権を主張している。その中には、セカンド・トーマス礁と同様に、近隣諸国の国際的に認められた海域も存在する。

フィリピンの沿岸警備隊が公開した動画では、フィリピンと中国の沿岸警備艇の間の攻防も映し出されている。中国海警局のほうも、同局の船舶と補給船が衝突する様子を映したように見える動画を公開し、補給船が危険な行為を行なったと非難している。

■【動画】フィリピン船に放水銃をあて、衝突する中国船

フィリピン政府は、同国の沿岸警備隊の巡視船は「外面の構造に損害」を受けたと主張し、前述の補給船は、放水銃による攻撃を受けたのち、他船の護衛のもとで港に帰還したと述べた。

フィリピン政府の国家安全保障会議は、被害を受けた補給船の乗組員のうち少なくとも4名が、放水銃による攻撃で負傷したと述べている。

スタンフォード大学の傘下にあるシーライト・プロジェクトの責任者を務めるレイ・パウエルは5日朝、ソーシャルメディア上に、中国の政府機関である中国海警局に加えて、中国の「海上民兵」も、セカンド・トーマス礁付近での存在が確認されていると投稿した。

「1平方インチも譲らない」

パウエルは、船舶の位置情報データに基づく画像を投稿し、こうした海上民兵の船が、フィリピンの沿岸警備隊の船に「群がっている」様子を示した。

5日に起きた衝突は、2月に行われた前回のセカンド・トーマス礁への補給とは著しい対照を成している。このときは、中国側からの妨害を受けることはなかった。

フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は4日、オーストラリアのメルボルンで開催された、ローウィー研究所が主催するイベントの席上で、「我々はルールに基づく国際秩序を維持し、守り、支持する国際的な取り組みの最前線に立っている。これは、第二次大戦後のアジア諸国に経済的な奇跡をもたらす礎となったものであり、オーストラリアなどの国々が繁栄を続けるよりどころでもある」と述べた。

メルボルンでは現在、フィリピンを含む東南アジア10カ国が加盟するASEANとの、特別首脳会議が開催されている。

マルコスは、2月29日に開催されたオーストラリア議会での演説において、強大な隣国である中国との対立について間接的な形ながら言及し、フィリピンの領土を「1平方インチ」たりとも他国に譲るつもりはないと言明した。
(翻訳:ガリレオ)

【動画】フィリピン船に放水銃をあて、衝突する中国船



マイカ・マッカートニー

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