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5、10、15歳までに、わが子に教えるべきこと...話しにくいが、不可欠な話は「いつ」「どう」伝えるべきか

ニューズウィーク日本版 2024年3月7日 17時56分

<子供が無事に育ち、充実したその後の人生を送るには、5歳、10歳、15歳の節目までに知っておくべき知識とスキルがある>

人の子の親ともなれば、時には話しにくいことも子供に伝えなくてはならない。「知らない人には用心しなさい」とか、「赤ちゃんはどうやって生まれてくるのか」とか。でも、それだけじゃない。年齢に応じて、子供に教えておきたいことはたくさんある。

子供は日々、何か新しいことを学んでいく。そんなわが子が巣立つ日まで、必死で支えてやるのが親の役目。しかし2019年にミシガン大学の小児科病院が行った「子供の健康に関する全米調査」によると、わが子が大人になるために必要なことはきちんと教えていると答えた親は全体(回答総数2032人)の63%にとどまった。

また10代の少年少女には、時に間違ったことをする経験も必要とされるのだが、そうした認識を持っている親は全体の52%にすぎなかったという。

そこで本誌は子育ての専門家3人に、子供の社会的成長の節目となる5歳、10歳、15歳までに教えておきたい大事な(そして最低限の)スキルは何かを聞いた。

■まず5歳までに

秋になって義務教育(1年制のキンダーガーテン)が始まる前に、自分の姓と名、親の名前、自宅の住所、緊急時にかける電話番号だけは覚えさせたい。そう語ったのは、育児を専門とする児童心理学者のケイトリン・スレイブンス。子供が3~4歳になったら、緊急事態とはどんなもので、どうすれば警察に電話できるかも教えておきたいという。

誰かがけがをしたり、危険な状態にある場合にどうすればいいかを子供が理解し、実践できるようにするには、そういう事態の「ごっこ遊び」をしてあげるといい(子供が忘れてしまうといけないから何度でも繰り返して!)。

5歳からの学校は社会生活の始まりだから、それまでに「知らない人は危険かも」ということを理解させたい。たとえ知っている人でも信用できるとは限らず、悪くすればだまされることもある。近所の人や親戚の人も例外ではない。

「大事なのは、自分を操ったり欺いたり、利用したりするような行動に気付く能力を身に付けさせること」だと、スレイブンスは言う。

「どんな人も、子供にとっての脅威となり得る。しかも多くの調査によれば、子供の場合は、知っている人から危害を加えられることが多い。子供のパーソナルスペースに勝手に入り込んだり、『親には内緒だよ』と念を押すような人は信じちゃ駄目。それくらいは教えておきたい」

「子供を怖がらせるような言い方はよくない。でも(相手がいい人かどうかは)自分の直感を信じて判断し、行動するよう励ますのが大事だ」

スレイブンスはまた、この年頃の子には「大人の付き添いなしにプールや川などの水辺に近づかない」ように教えることが必要だと言う。もちろん道路を横断する際は左右をよく見て、信号が青になってから渡り始めることも。

そして「うれしい」「悲しい」「怒っている」などの感情を言葉で表現する能力も大事。それがコミュニケーションの第一歩だし、共感力を養うことにもつながる。

10歳を過ぎてパソコンやスマホを使う機会が増えたら使用時間やアクセスできるコンテンツに制限を設けよう DIKUSHIN/ISTOCK

■そして10歳までに

もうすぐ中学生だけれど、子供にとってはまだ毎日が新しい学びの連続。でもだんだんと独立心が芽生え、周囲の人を気にし始める。思春期は女子なら8~13歳、男子なら9~14歳で始まる。

「この年頃の子は肉体的にも心理的にもどんどん変化していくから、自分の体に何が起きているのかをちゃんと教えておきたい」と言うのは、子育て世代の共助組織「ペアレント・アノニマス」のリサ・パイオンバーリン会長だ。

悲しいことに、10歳にもなると無邪気ではいられない。特にアメリカでは、幼い子でも銃による暴力から逃れられない。調査機関ピュー・リサーチセンターによると、アメリカでは銃撃で死亡した18歳未満の子供の数が、19~21年に50%も増えている。実際、小学生も複数の銃乱射事件で犠牲になっている。

それから、この年齢で携帯電話を持つのは「特別」であって「当然」ではないということも教えておきたい。「スマホを持たせるのは遅ければ遅いほどいい。いったん持たせたら、インターネット上で語られていることの全てが真実ではないと、しっかり教えておく必要がある」と、パイオンバーリンは言う。

ペアレンタルコントロール機能を使って、自分の子が不適切なチャットルームや見るべきではないコンテンツにアクセスしないように管理する責任が、親にはある。子供のスマホ使用時間にも、一定の制限を設けておきたい。

また、この年になったら一定の危険には自分で対処する必要がある。例えば「1人で留守番しているときは、たとえ相手がアマゾンの配達員でも絶対にドアを開けないこと。たった5分でも何が起きるか分からない」と、パイオンバーリンは警告する。

もう1つ、自分の感情をコントロールする方法も学ばせたい。「まずは親が、共感や気付きの手本を示してやること。独立心が芽生えてきたら、子供だって自分の感情を抑えることを知り、相手には相手の感情があることを理解しなければいけない」と、パイオンバーリンは言う。「そのためにも、家庭内では子供が自分の感情を率直に口に出せるようにしてあげたい」

10代半ばには新しい友人との出会いを深める能力も大事になる MONKEYBUSINESSIMAGES/ISTOCK

■さらに15歳までに

高校に入って、そろそろ自分の進路を考え始める時期になれば、もう道路を渡るときに手をつないでやる必要はない。でもこれから厳しい世の中を渡っていくには、まだまだ親の手助けが必要なはずだ。

本誌が相談したのは認定ライフコーチのハンナ・キーリー。行動療法や神経科学の知識もあり、7児の母でもある彼女によれば、10代も半ばになったら、まず知らない人と話すスキルを身に付けたい。

「うちの子供たちがこの年齢にさしかかると、私は必ず、適切な状況なら知らない人とも積極的に話すよう勧めている」と、キーリーは言う。「生きていくには、ほかの人たちと交わる能力が必要だ。子供はたいてい、大人よりも気配を読める。だから危ない人には近づかない。でも誰かに道案内を頼むとか、図書館の司書に本を探してもらう場合には、こちらから声をかける必要がある。自分から会話を始めるすべを学べば、きっと大人の世界でも自信を持って生きていける」

親が目覚まし時計の代わりをするのも、この年齢になったらやめるべきだと彼女は言う。自分で自分を律することを、そろそろ学んでもらわないといけない。それが大人への第一歩だ。

「ティーンエージャーなら、自分の服の洗濯くらいはできてほしい。自立して生きていくには欠かせないことだから。簡単な料理を作り、食料品の買い出しをし、お金の管理をする能力。そういうのも15歳までには身に付けたい」

そして、インスタグラムなどのSNSとの付き合い方も大きな問題だ。ピュー・リサーチセンターが22年にアメリカの10代の若者1316人を対象に実施した調査では、回答者の半数以上(54%)が、SNSなしの生活は考えられないと答えていた。

この現状を踏まえ、キーリーは言う。世間の親たちは自分の子たちに、オンラインコンテンツの単なる「消費者」ではなく、「クリエーター」になるよう促すべきだ。そして誰かの作ったゲームで遊ぶだけでなく、「何かみんなの役に立ちそうなコンテンツを生み出すように仕向けるといい。ただし『ベッドでスマホは厳禁』といったルールを守らせることも忘れずに」。

この年頃になると、友達付き合いも何かと難しくなる。でも、まずは自分と違う考え方もリスペクトすることを学ぶべき。なぜって、どんなことにも表があれば裏がある。そういうものだから。

「ティーンの子たちには、自分が常に正しいわけじゃないってことを教えてほしい」と、キーリーは言う。「この世に完璧な人はいないし、誰にもその人なりの意見がある。だから他人に共感し、自分の知らない世界や考え方をきちんと理解しよう。そう教えてあげるのがベストだと思う」

ルーシー・ノタラントニーオ(ライフスタイル担当)

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