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ドローン撃墜はおまかせ...インド軍が「対ドローン兵器」として調教した「タカ」の凄技を披露

ニューズウィーク日本版 2024年3月9日 14時2分

<2月に陸上自衛隊とインド陸軍が共同訓練を実施。タカは相手のレーダーに検知されることなく監視や妨害の任務を遂行できるという>

ウクライナの戦場で示されているように、現代の戦争においては「ドローン」が戦況に大きな影響を与える兵器となっている。この厄介な新兵器にどう対応するのか──各国が頭を悩ませるなかでインド軍は今月、日本の自衛隊との合同訓練の場で「ドローンを撃墜させるよう調教されたタカ」を披露した。

■【動画】高性能ドローンに対抗する秘密兵器...インド陸軍の軍用「タカ」、ドローンを撃墜する「凄技」を披露

ドローンは安価で大量に生産することができ、操作性能は高く、敵に気付かれにくく、ひとたび攻撃に成功すれば相手に深刻なダメージを与えられる。各国で開発競争が激しさを増している一方、高性能なドローンを妨害・捕捉したり撃墜するための「アンチドローン技術」については成功率やコスト面などで多くの課題が残っているのが現状だ。

インド軍は2月下旬から、ラジャスタン州で日本の陸上自衛隊と毎年恒例のテロ対策共同訓練「ダルマ・ガーディアン」を開始。この中で、不審なドローンの飛行を制御するアンチドローン活動や監視任務ができるよう訓練されたタカを披露した。

インド軍は3月4日にX(旧ツイッター)に投稿を行い、「任務のために共に訓練を行っているインド軍と日本陸上自衛隊のシームレスな相乗効果をご覧あれ」と書き込んだ。

兵器の発展にともなう新たな課題に対処するため、自然界にヒントを得た解決策を取り入れる傾向は、インドだけでなく世界各国の軍で強まっている。特にドローンの分野ではそれが顕著で、今回の共同演習ではそのことが改めて強調された形だ。

各国で革新的な解決策が模索されており、ひとつの方法として鳥類や鳥類学にヒントを得た技術を開発し、検知されずに偵察することなどを可能にしようと試みている。

レーダーに検知されないという強みも

そうしたなかでインド軍は今回、日本の陸上自衛隊の共同演習の中で「アルジュン」と「ディープ」と名付けた2羽のワシを披露した。鳥類にヒントを得た技術を使うのではなく、鳥そのものの能力を借りようという発想だ。

インドのトリビューン紙は3月6日、「『アルジュン』と『ディープ』はドローンを妨害・捕捉し、地上とセキュア通信で接続されている頭部カメラを使ってライブ映像を提供するよう訓練されている」と報じた。

「アルジュン」と「ディープ」のような鳥は敵のレーダーに検知されることなく監視や妨害の任務を遂行し、注目を集めることなく複雑な地形の中を進む方法を提供する。これは敵のレーダーに検知される従来のドローンと比べて重要な強みだ。

インド軍は2022年11月にウッタラカンド州アウリで行ったアメリカとの合同演習「ユド・アビヤス」で、「アルジュン」と名付け訓練したタカを使用している。演習の際に撮影された映像には、アルジュンが4つの回転翼を持つドローンを巧みに妨害・捕捉する様子が映っており、その技術の精度と効果を見せつけている。

インド軍は訓練した犬やタカを軍事作戦に活用

インド陸軍の関係者は2022年11月にインドのニュースメディア「ANI」に対して、「インド軍は敵のドローンを捕捉するために、初の試みとしてタカを使用している。インド軍では訓練を施した犬やタカを軍事作戦に活用している」と述べていた。

また2020年11月30日にはインドのメディア「ザ・プリント」が軍関係者の発言を引用し、次のように伝えた。「これらのタカは訓練の中で数百のクワッドコプターを妨害・捕捉し、時には完全に破壊した。相手がクワッドコプターだから、これまでのところどのタカも怪我をしていない」

一方で中国は、鳥にヒントを得た新たな軍事技術の開発を進めている。

中国・西北工業大学の研究者たちは、「リトル・ファルコン」という名前の羽ばたき型ドローンの開発に取り組んでいる。西安省で飛行実験が行われたこの鳥のようなドローンは、軍事偵察などさまざまな用途に使える最先端の設計だという。

また中国の国営放送局CCTVは最近、鳥に似た新しいドローンを紹介した。CCTVの報道によれば、新たなクランク機構を発明したことで機敏な飛行制御が可能になり、翼を羽ばたかせながら折りたたむことが可能になったということだ。


アーディル・ブラール

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