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BTS Vが出演した超話題曲を抜き去りK-POP1位独走する歌手BIBIって誰?

ニューズウィーク日本版 2024年3月9日 21時2分

<今、超話題の韓国スイーツは栗ようかん!? 大ヒットの裏には大物カップルの愛憎劇も!?>

今や世界の音楽シーンで重要な位置を確立するようになったK-POP。最近では『ベイビー・ブローカー』などの出演で俳優としても高い評価を受けているIUが2年ぶりのアルバムを発表。先行リリースされた『ラブ・ウィンズ・オール』はBTSのVが共演したMVが5,300万回以上再生されている。この曲は韓国の音楽配信チャートで1月24日から2月下旬まで約1カ月間トップを独走した。

そんなK-POP女性ソロシンガーの女王にストップをかけたのは、意外にもアイドルではなくIU同様女性ソロシンガーにして俳優業もこなし「闇のIU」というニックネームすらもつ女性シンガーBIBI(비비)だった。

【動画】K-POPチャート独走のBIBIの黒歴史

今、韓国の主要音楽配信サービスで、IUをはじめSEVENTEENの弟分としてデビューしたTWS、LE SSERAFIM、少女時代のテヨンなどを抑えて軒並み1位となっているBIBIの『栗ようかん(밤양갱)』。恋人から突然の別れを告げられた若い女性が、素直になれず「私がいつも欲しかったのはただ一つだけ。甘ったるい栗ようかん。甘くて甘くて甘い栗ようかんだよ」と歌う不思議な雰囲気の歌だ。韓国音楽配信の大手VIBEの分析では20代、30代の女性がこの曲の主なリスナーという分析結果が出ている。

実は彼女、これまでそんなにチャート上位に入るような人気アーティストではなく、2019年のデビュー以降アルバム1枚、シングル16曲、ドラマ挿入歌8曲をリリースしたが、総合チャートでTOP100位入りしたのは今回が初めての快挙。アイドルではなく、所属事務所の代表タイガーJK、ユン・ミレよりはソフトなものの音楽的にはR&Bやヒップホップ系の路線のため、これまで誰もが知っている代表曲というものがないままだった。

それが今回突然の大ブレイクになったのにはもちろん理由がある。韓国地上波局MBCのバラエティ番組『ラジオスター』に作詞・作曲を担当したチャン・ギハとともに出演して、アカペラで曲の一部を歌ったところSNSでにわかに話題となったのだ。結果的に新曲リリースから2週間でチャート1位を獲得。大手配信サービスMelOnでは2月24日から現在まで2週間トップを独走している。

なぜ突然の大ブレーク!?

『栗ようかん』がヒットした理由として、今のK-POPのトレンドに合っているという指摘も出ている。韓国メディア毎日経済によれば、それまでの強いビートと聴き取ることが難しいくらいの高速ラップ、ファンでなければ分からないような独自の世界観で大衆を置き去りにしていたK-POPが、NewJeansの成功以降、イージーリスニングの方向に流れを変えて、1990〜2000年代に流れていたようなポップスに戻っているという。そしてそのトレンドの延長線上にIUの『ラブ・ウィンズ・オール』やBIBIの『栗ようかん』があって、多くの支持を受けているというのだ。

BIBIの『栗ようかん』のヒットについては、別の面白い分析もネット上で出ている。それはこの曲を作ったチャン・ギハによるIUへの復讐だというのだ。

BIBI『栗ようかん』の作詞・作曲を担当したチャン・ギハ。BIBI(비비)『栗ようかん(밤양갱)』のミュージックビデオより BIBI / YouTube

大ヒット曲を生み出したチャン・ギハとは?

父親が外資系韓国企業の社長、自分はソウル大学社会学科卒業という異色の経歴をもつミュージシャン、チャン・ギハ。2012年の第9回韓国大衆音楽賞では、「今年のアルバム」「今年の音楽人」「最優秀ロックアルバム」「最優秀ロックソング」の4部門受賞するなど韓国のロックシーンをリードするアーティストだ。2018年まで10年間活動していたバンド、チャン・ギハと顔たちには韓国在住の日本人ミュージシャン長谷川陽平が参加していたので日本でも彼らの活動は知られている。

そんなチャン・ギハだが、2015年10月、韓国芸能ニュース専門サイトディスパッチが突然IUとの熱愛スクープを報じて話題を集めた。それも既に交際を始めて2年が経過しているということだった。ソロの女性K-POPアイドルとして人気実力ともナンバーワンのIUと、芸能ニュースとは縁遠いロックシンガーのチャン・ギハという意外なカップルの誕生は、驚きをもって迎えられた。ただ、この2人の交際はスクープから1年あまりの2017年1月に双方の事務所が「良い先輩と後輩の間柄に戻ることにした」と発表して幕を閉じた。

チャン・ギハは2918年にチャンギハと顔たちの最終アルバム『mono』に収録された曲『並んで』に「帆船に乗って果てしない海を渡ったりもしたね。月へ行く宇宙船を予約しているとき僕はびっくりしたよ。もう 君は 立ち去って いなかった。並んで歩けばよかった。向かい合って笑えばよかった。じっと考えてみればよかった。本当に君が何を望んでいるのか」

と書いた。そして今回BIBIが歌った『栗ようかん』はその相手側の女性の気持ちを描いたアンサーソングだという。

確かにIUが人気若手俳優のイ・ジョンソクとの交際を2023年に公表してから初めてのアルバム発売に合わせて、チャン・ギハが5年間しまっていた『栗ようかん』をBIBIに歌わせたことで、結果的にIUのチャート独走にストップをかけた。「何かしら意図があるのでは?」とネット民が騒ぎ立てるのも無理はないだろう。

「闇のIU」BIBIの黒歴史

BIBIが「闇のIU」と呼ばれていることは前述の通りだ。IUと比較されるのは歌手としての活動のほかに俳優としても活躍していることから来ている。また、「闇の」と呼ばれるのは、これまで発表した曲がどれもガールクラッシュ的な男性に媚びることのない強い女をイメージしたものだったことにも由来している。何しろタイトルを見れば一目瞭然だ。『社長、賭博は面白半分でしなければなりません (KAZINO)』『人生は悪いX』『哲学より怖いのはビビの銃弾』......。

また闇といえば、BIBIが今回『栗ようかん』でヒットするまでに一番人びとの記憶に残っている衝撃の「黒歴史」がある。

2022年6月にソウルで行われた音楽フェス「ウォーターボム・ソウル2022」に出演した彼女。ウォーターボムはアーティストとオーディエンスが水を掛け合いながら楽しむスタイルの音楽フェスで、BIBIも、白いTシャツにホットパンツ姿で登場し、全身びしょぬれになりながら、パフォーマンスをしていた。

ウォーターボムソウル2022でTシャツを脱ぐBIBI BIBI • • ONLY / YouTube

ヒートアップするステージで、さらに盛り上げようとしたBIBIはTシャツを脱ぎ捨てて、ビキニ姿になろうとしたとたん、ビキニのストラップがほどけてしまったのだ。幸いにもその日はスタッフがビキニが水で脱げ落ちないようにステッカーを貼るようにと強硬に言っていたため、前と後ろにステッカーを付けていたという。だが激しいパフオーマンスと水のため背中のステッカーは水で取れていて、一つ間違えれば前のステッカーも取れて大惨事になっていたかもしれないという。

この件について後日バラエティ番組で話したBIBIは、「もしビキニがほどけて前の方まで見えていたらすぐに"チチビビ"と呼ばれてネットで騒がれただろう」と辛口のコメントで笑いをとっていた。さすが、「裸の赤ちゃんのように純粋で生の魅力を見せたい」という意味でBabyから転じてBIBIという芸名にしただけのことはある。

黒歴史をものともせず、今回の『栗ようかん』の大ヒットによって「闇のIU」からの脱却も果たしつつあるBIBI。今後の活躍が楽しみだ。

BIBI『栗ようかん』

恋人にフラれる女性と魔法使いの二役をBIBIが演じる『栗ようかん』のミュージックビデオ BIBI / YouTube

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

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