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仏「マクロン夫人は男」と言い張る、アメリカの新たなデマゴーグ

ニューズウィーク日本版 2024年3月13日 15時41分

<フランス大統領の夫人が「男だ」という根拠のない噂をさも真実かのように言い募り、遂には自分のキャリアを懸けてもいい、と言うオーウェンズは新種の陰謀論者か?>

米国の保守系政治評論家キャンディス・オーウェンズが、フランスの大統領エマニュエル・マクロンの妻ブリジットは男性であることに、自分のキャリアを賭けてもいいと発言した。

  

オーウェンズは3月12日、「調べてみたが、ブリジット・マクロンは男だということに、プロとしての名誉を賭けてもいい」とX(旧ツイッター)に投稿した。「この妥当性を否定しようとするジャーナリストや出版物は、すぐに体制側だとわかる」

オーウェンズは11日、自身のポッドキャストで、以前からあるこの陰謀論を深掘りし、もしブリジットが本当にこの説を否定したいのであれば、30歳以前の写真を公開すればいいだけだと主張した。オーウェンズは、ブリジットが赤ん坊だったころの貴重な家族写真を分析し、ブリジットは兄と「うり二つ」なため、2人は本当は同一人物だと結論づけた。

フランスの裁判所は2023年、ブリジットに関する陰謀論を流布したとして、2人の女性に罰金を科した(すでに削除されているユーチューブ動画が問題になった)。霊能者のアマンディーヌ・ロイと、自称フリージャーナリストのナターシャ・レイは2021年、4時間にわたる動画で、ブリジットはジャン=ミシェル・トロニューという男の子として生まれたと主張した。ジャン=ミシェル・トロニューは、ブリジットの兄の名前だ。さらにこの動画では、ブリジットは子どもを産んでおらず、最初の夫は存在しないと主張している。

「社会のレベルが心配」

マクロンは8日、国際女性デーのイベントでこの噂に言及し、「最悪なのは、偽情報とつくり話だ」と断じた。「人々は、やがてそれを信じて動揺する。たとえ親密な関係でも、それによってかき乱される」

マクロン夫妻の型にはまらない関係が、メディアの注目を集め、陰謀論の火種となった面もある。マクロン夫妻が最初に出会ったのは、ブリジットがラ・プロヴィダンス高校で演劇を教えていたときだ。当時15歳だったマクロンは、ブリジットの娘ローランスと同級生だった。フランスでは、性的同意年齢は15歳だ。

マクロンが16歳のときに交際が始まり、2007年、マクロンが29歳、ブリジットが54歳のときに二人は結婚した。マクロンは、ブリジットの子ども3人の義父になった。

2017年、マクロンは39歳で、フランス最年少の大統領に選出された。

ブリジットの娘ティファニー・オーゼーヌは2月、写真週刊誌『パリ・マッチ』の取材に対し、「ソーシャルメディアで出回っている、母が男だという噂を聞くと、社会のレベルが大丈夫か心配になる」とコメントしている。

「自信を持って断言されると、確かなように感じてしまう。誰もが、誰かについて何でも言えるし、それを取り下げてもらうには時間がかかる」

オーウェンズは11日、もし自分がブリジットで、陰謀論に終止符を打ちたいのであれば、兄と一緒に記者会見を開き、自分の成長過程の写真を見せると述べた。

  

「そうすれば私は言うだろう。『陰謀論は有害だ。これで陰謀論は否定されたのだから、陰謀論の有害性について語ろう』と」と、オーウェンズは続けた。「しかし、彼らはそれをしようとしない。ただ混乱を助長している」

オーウェンズはさらに、政治工作員はマクロンを脅迫し、ブリジットについて沈黙する代わりに、特定の法律や政策を通すよう要求している、と主張した。

「もしそれが事実だと証明されれば、私たちがここで解き明かしていることは、まさに米国で解き明かされていることと同じだ。つまり、脅迫が世界を支配しているということだ」
(翻訳:ガリレオ)

【画像】トランプとオーウェンズのツーショット
It's fight night. Fighters only. @PBDsPodcast @danawhite @ufc pic.twitter.com/fCQtzzVBCm— Candace Owens (@RealCandaceO) March 10, 2024

  

キャサリン・ファング

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