Infoseek 楽天

新しくロシア人義勇軍に加わった「シベリア大隊」は、プーチン体制下で地獄を味わってきた

ニューズウィーク日本版 2024年3月14日 16時12分

<長年抑圧され、ロシア人扱いされなかった少数民族が打倒プーチンで力を結集>

ウクライナ軍と共に戦うため、ロシア人義勇兵が新たに結成した民兵組織「シベリア大隊」が今週、志を同じくする同胞たちの軍団と合流し、ウクライナからロシア西部に向け一連の越境攻撃を開始した。

ウクライナ側に付いたロシア人義勇兵の3つの組織──自由ロシア軍団、シベリア大隊、ロシア義勇軍団はロシアの大統領選挙を5日後に控えた3月12日、ロシア領内への越境攻撃を開始し、引き続き作戦を展開していると発表した。これに対し、ロシア国防省はウクライナとの「国境地帯に位置するロシアの2つの州、ベルゴロド、クルスクに侵入しようとする試み」を阻止したと主張している。

 

2022年2月のロシアによるウクライナへの本格的な侵攻開始直後に結成された自由ロシア軍団とその後に結成されたロシア義勇軍団は、これまでも度々、ウクライナからベルゴロド州に越境攻撃を行ってきた。

【動画】ウクライナ兵とロシア兵の接近戦を捉えた11分間のビデオ

今週初めてこの2軍団の越境攻撃に加わったのが、昨年10月の創設以来、拡大を続けてきたシベリア大隊だ。この組織は主としてシベリアにあるロシア連邦の共和国や自治管区の少数民族──ヤクート人、ブリヤート人、トゥバ人、カルムイク人らで編成されている。

ロシア軍は「クズの集まり」

地元メディアの報道によると、シベリア大隊はウクライナ国防省情報総局の指揮下にあるウクライナ領土防衛部隊外国人軍団の一部として活動しているという。

これについて本誌はウクライナ当局にメールで確認中だ。

大隊のメンバー数人が昨年11月、チェコのプラハに本拠を置くロシア語チャンネル「カレント・タイムTV」の取材に応じ、少数民族として不当な扱いを受けていたことや、ウクライナ侵攻に踏み切ったロシアのウラジーミル・プーチン大統領への怒りから、祖国を捨て、反プーチンの戦いに加わる決意をしたと語った。

メンバーの1人、「詩人」と名乗る男は、「自分はロシアで生まれ、ロシアで育ったが、ロシア人じゃない。これまでずっとロシア人に踏みつけられていると感じてきた」と話した。「不公正がまかりとおり、俺たちが稼いだカネはみんなモスクワに吸い取られる」

「バルガン」と名乗る戦闘員は「ロシア人は腐っている」と吐き捨てた。「生活が苦しいからだ。彼らはカネのためなら母親を売ることだってためらわない。(ロシア軍には)ありとあらゆるクズが集まっている。血に飢えたモンスター、サディストたち。奴らが非人道的な残虐行為をやりまくっている」

「モスクワから50キロ程先まで行けば、ロシアの本当の姿が分かる」と話すのは「ブリヤート」と名乗る戦闘員だ。「(地方の)暮らしは酷いものだ。何もかもボロボロで、誰もが補助金頼みで生活している。われわれの共和国は本来はとても豊かなんだ......金鉱もありヒスイも採れるし、森林資源もある。だが資源は全てモスクワのもの。われわれは彼らから施しを受けるしかない!」

ロシアのウクライナ侵攻は「恥ずべきことだと思った」と、ブリヤートは言う。

 

「自分は(侵攻に)一切関わりたくなかった。国を出ようと決め、最初はアルメニア、次にジョージアに向かったが、(ウクライナに)行って、共に戦おうと覚悟を決めた。鏡に映った自分に『俺はやった』と言えるように。戦争に加担しないだけでなく、それに反対する人たちをこの手で助けた、と」

バルガンも、「ロシアで動員が始まったとき、最初はモンゴル、次にトルコに向かったが、最終的にウクライナ行きを決意した」と話す。「クレムリンは世界中をめちゃくちゃにしようとしている。俺たちの力で何とかして止めないと」

住民に避難を呼びかける

越境攻撃を行ったロシア人義勇兵の3つの組織は3月13日、ウクライナと国境を接するロシア南西部のベルゴロド州の住民に避難を呼びかける合同声明を出した。

「プーチンの殺人部隊は、あなたがたの家や子供たちが通う学校、役所の建物がある地域に陣取って、人々がただ静かに暮らしてきたウクライナの諸都市に大規模攻撃を仕掛けている」と、声明は訴える。

「ベルゴロドからの砲撃で、罪のないウクライナの民間人が日々何十人も死んでいる。その大半は女性と子供だ。ベルゴロドからのウクライナへの砲撃は、何としてもやめさせなければならない!」そう述べた上で、声明はこう続ける。「そのために、われわれはベルゴロドにある軍事拠点をたたかざるを得ない。どうか直ちに町から出てほしい」



イザベル・バンブルーゲン

この記事の関連ニュース