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インド国産の戦闘機「テジャス」が初の墜落事故...パイロットはパラシュートで脱出 緊迫の現場映像

ニューズウィーク日本版 2024年3月16日 19時10分

<インド軍は兵器調達の「ロシア依存」から脱却しようと、防衛技術の国産化を推進している>

インド西部ラジャスタン州で3月12日、インド軍のジェット戦闘機が墜落する事故があった。パイロットはパラシュートでの緊急脱出を余儀なくされ、その様子を捉えた動画が拡散されている。

■【動画】インドの国産「戦闘機」が住宅街に墜落...カメラが捉えたパイロット脱出と、墜落の現場

インドの国産軽戦闘機「テジャス」にとっては今回が初めての墜落事故だった。複数の報道によれば、テジャスはラジャスタン州にあるジャイサルメール空軍基地から離陸し、インドのナレンドラ・モディ首相も視察していた初開催の軍事演習「バーラト・シャクティ(インドの力)」に参加していた。

同空軍基地には現在、特定の飛行中隊は所属していないが、今回の演習のために3機のテジャスが用意されていた。インド空軍は声明を発表し、問題のテジャスは「飛行訓練中」に墜落したと述べ、「パイロットは無事に脱出した。事故原因を特定するために調査委員会の設置が命じられた」と説明した。

問題の軽戦闘機は、ジャイサルメール郊外にある学生寮の敷地内に墜落した。けが人の報告はない。事故原因は明らかになっていないが、インドのメディア「ザ・プリント」は、エンジンの故障が原因である可能性が示唆されていると伝えている。

これまで墜落事故を起こしたことはなかった

インドの国営航空機メーカーであるヒンドゥスタン・エアロノーティックスが製造した多目的軽戦闘機のテジャスは、これまで墜落事故を起こしたことはなかった。テジャスは2001年に初の試験飛行が行われ、2016年から運用が開始された。

開発の段階で設計をめぐる問題などさまざまなトラブルに悩まされたものの、運用開始後は大きな問題はなかった。ロイター通信によれば、インド海軍はかつて「重量がありすぎる」としてテジャスの採用を拒んでいる。

インド空軍は現在40機のテジャスMK-1を運用しており、インド海軍が運用するテジャスはコックピットが2人乗りになっている改良型だ。

2020年10月には、飛行中にテジャスのコックピット内で急減圧が発生。「ザ・プリント」によれば、機体が急降下して上下に激しく揺れたものの、パイロットがなんとか機体の制御を取り戻して着陸した。

兵器調達における「ロシア依存」脱却を目指す

インド政府は2021年、ヒンドゥスタン・エアロノーティックスと60億ドルの契約を結び、テジャス83機を発注した。インド政府はこれまで軍事装備の調達を頼ってきたロシアへの依存から脱却しようと、防衛技術の国産化を推進している。

陸・海・空軍が参加したバーラット・シャクティ演習は、テジャスをはじめとする国産軍事システムの能力を実証することを目指して行われたものだ。モディは2023年に、インドの防衛装備品の輸出額を2025年までに(2023年の3倍以上の)50億ドル規模に拡大する意向を表明。インド政府はテジャスの輸出に向けて外交努力を続けている。



アーディル・ブラール

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