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最高値更新の日本株...「世界と闘う覚悟を持った経営者が日本に出てきた」藤野英人

ニューズウィーク日本版 2024年3月26日 16時45分

<株価は絶好調。いよいよ日本がインフレの時代になるという期待が高まっている。『「日経平均10万円」時代が来る!』の著者、藤野英人氏が挙げる変化の要因は?>

GDP(国内総生産)世界4位への転落など日本経済の衰退が囁かれる一方、株価は絶好調だ。2024年3月4日、日経平均株価の終値が史上初めて4万円を超えた。

バブル崩壊後の1990年代初頭から続いた長期停滞「失われた30年」を、日本経済が脱した理由とは何だったのか?

日本の資産運用会社レオス・キャピタルワークスの最高投資責任者であり、1月に『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP)を上梓したばかりの藤野英人氏が解説する。

同社のYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画「絶好調の日本株!インフレ時代の始まり?」(2月24日公開)で、藤野氏はまず、このように分析した。

「元日の能登半島地震や航空機事故など、2024年は最悪の気持ちのスタートとなったが、一方でこれらが日銀の金融緩和策に影響を与えた。日本企業や日本株はまだ割安であり、金融緩和も長く続くから安心して買える。このことが年初からの大きな株価の上昇につながったのではないか」

米国の大統領選挙や中国の景気減速をはじめ、世界経済全体が不透明な中、日本の相対的な堅実感が浮き出た結果だと推測されるという。

「日本の株式市場は非常に絶好調。諸般の状況でロケットスタートになり、これから株価は調整されるかもしれないが、基本的に強い状態が続くのではないか」と楽観的な見通しを語る。

藤野氏が就職したのは1990年4月で、まさに日本経済および株式市場のピーク。その後、社会人としての人生の大半をデフレ(デフレーション)とともに歩んできた。

デフレとは、モノの値段が下がるのと相対してお金の価値が上がること。これが10~15年続くと日本人の生活スタイルに染み込み、「節約・倹約こそ正義」「投資・消費をしない」という生き方につながっていったと、藤野氏は振り返る。

「お金のまなびば!」より

インフレが来る、と多くの外国人投資家が思った

デフレにより「良いモノをより安く買えること」はメリットだと思っている人が多い。事実、日本の「コスパ主義」はどんどん加速していった。

だが、良いモノを安く売って企業の取り分が減れば、当然ながら賃金も上がらないことになる。日本は自ら首を絞めたことで、デフレ経済が長引いたと指摘されている。

一方、日本を除く世界の物価はどんどん上昇しており、「日本と他国の物価は歴史的に限界くらいまで差が開いている」と藤野氏は言う。

例えば、日本のコンビニでサンドイッチを買う場合、約300円で非常に美味しい商品が手に入る。一方、欧米に行けば同様の商品が3倍以上の価格で販売されている上、品質は日本よりも3倍下回ると藤野氏は実体験を語る。つまり、約9倍の価値の差があるということだ。

「世界中の人が日本に来て思うことが、『なんでこんなに安くて美味しいの?』。これがインバウンド観光が盛んな理由。この差は必ず解消されていくので、日本は今後物価が上がり、インフレが起きることは間違いないと多くの外国人投資家が思った。そして、日本の株・土地を買う動きが加速していった」

経済の原理からすると、行き着いたものは必ずもとに戻る。長過ぎたデフレ局面にようやく終止符が打たれ、少しずつインフレに向かいつつあるのが今の日本の状況だという。

「今は労働者不足で、若い人を採用するには賃金を上げなければならない。大学卒の初任給は2023年度から上昇傾向にあり、これに乗じて元からいる社員の賃金も今年の4月以降に上がる可能性がある」(編集部注:その後、春闘での賃上げ率は33年ぶりに5%を超えた)

さらに藤野氏は、経営者の意識の変化にも触れた。

「この20~30年ほどは、比較的『眠い』経営者が多いと思っていた。社長になるのがゴールという人が多かった。しかしコロナを経て日本の会社は変わりつつあり、生き残るために世界と競争して闘う覚悟を持った経営者が出てきた。さまざまな条件が重なって、この30年のデフレからインフレの時代のとば口に入ったと考えられる」

業績・賃金の水準が上がり、株価が上がる。好循環に入った日本株式市場の動向は今後も目が離せない。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

■絶好調の日本株。これはインフレ時代の始まり?

絶好調の日本株!インフレ時代の始まり?/YouTube



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