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皆既日食で盛り上がるアメリカ

ニューズウィーク日本版 2024年4月3日 12時0分

<今月8日、テキサスからメインにかけて皆既日食が見られる「皆既帯」がアメリカを横断する>

4月8日の月曜日に皆既日食が見られるということで、アメリカでは連日各地での盛り上がりの様子が報道されています。皆既日食というのは、新月の際に太陽と地球の間に月が入って、月が完全に太陽を隠す現象です。皆既日食が起きている状況を高空から見ることができれば、丸く黒い月の影が地表を移動していくことになります。

その黒い影の場所では、完全に太陽の隠れる皆既日食になりますが、その範囲は幅100キロ程度の狭い帯状のエリア(皆既帯)だけです。その周囲の幅広い地域では部分的に太陽が隠れる部分日食が見られます。多くの場合には、皆既日食が起きるエリア、つまり皆既帯というのは大洋上であったり、人口の少ない砂漠地帯であったりするわけで、特別な「日食観測ツアー」が設定されたりします。

ですが、今回は皆既帯が北アメリカ大陸を斜めに移動してゆく中で、数多くの大都市を通過してゆくという非常に珍しい日食になっています。月の影は、まず太平洋からメキシコ西岸に上陸し、メキシコを斜めに縦断して、米国中部時間の午後1時27分にテキサス州に入ります。

そこから、テキサスの中心部を斜めに通過、アーカンソー州のリトルロック、インディアナ州のインディアナポリスを通って、オハイオ州のクリーブランド、ニューヨーク州のバッファローを通って北東へ向かい、東部時間の3時35分にメイン州からカナダに抜けます。

「一生に一度」の一大イベント

この皆既帯に含まれる地域では、4月7日から8日にかけて主要なホテルは予約で一杯になっています。例えば、私の住むニュージャージー州では、太陽の約70%が隠れる部分日食が見られることになっています。ですが、少し足を伸ばせば皆既日食が見られるということで、バッファローやクリーブランドに「遠征」するという人はかなりいるようです。

今回を逃すと、アメリカ本土で皆既日食が見られるのは20年後の2044年で、その時は西部モンタナ州とノースダコダ州に限られます。ということは、今回のように大都市圏で皆既日食が見られるのは「一生に一度」ということになるわけで、かなりの盛り上がりになっています。

実は、7年前の2017年にもアメリカで皆既日食があり、かなり盛り上がったのですが、この時は人口密集地を通ることはあまりなく、また、曇天で観測ができなかった地域も多かったのです。この時と比較すると、今回の盛り上がりは相当なものになっています。量販店でも、あるいは通販サイトでも「日食観測用メガネ」が大々的に売り出されています。また、皆既日食が通る各地の国立公園では「皆既日食観測」を証明するスタンプを用意しているそうです。

そんな中で、各地のローカル報道の様子から見てみると、いちばん盛り上がっているのはテキサス州とニューヨーク州です。

まず、テキサスの場合は、サンアントニオ、オースティン、ダラスという大都市がいずれもほぼ皆既帯に入っています。特にサンアントニオでは、直前に天文学者が再計算したところ、以前の予報とは違って、市の中心部はほぼ皆既帯に入るらしいという予報に変わり、該当するエリアの住民は喜んでいるそうです。また、オースティン市を含むトラヴィス郡では観光客が殺到することや、交通がマヒすることを予測して、1カ月前から非常事態宣言を出して対応しています。

一方で、ニューヨーク州の場合は、州の北西にあたるバッファロー市が皆既帯に入っています。そして、市の中心に近いナイアガラの滝でも皆既日食になるということで、こちらも空前の人出が予想されています。また、州内の刑務所では、日食に興奮した受刑者が騒動を起こすのをおそれた当局が、日食の時間帯は各房内で静粛にせよという命令を出したところ、受刑者が「日食を見る権利が侵された」として訴訟を起こしており、その結果が注目されていたりもします。

ところで、皆既日食が起きている時間帯では完全に太陽が隠れてしまうため、昼でも恒星や惑星が見られることになります。そこで期待されているのが、現在地球に接近中の「悪魔の彗星」こと「12P/ポン=ブルックス彗星」が皆既日食と同時に肉眼でも見られるという可能性です。

この彗星はガスなどを噴出している様子が「鬼の角」のように見えることから、「悪魔の彗星」と言われているのですが、その姿が皆既日食の時間帯に真っ黒な太陽と一緒に観測されるかもしれないということで、各地のメディアが取り上げています。

現時点の天気予報は、テキサスでは曇り、ニューヨーク州のバッファロー市からカナダ方面では曇り時々晴れとなっています。ただ、春のこの時期は天候が変わりやすい季節でもあり、日食当日に至るまで天気予報にも大きな関心が寄せられそうです。いずれにしても、今週から来週にかけてのアメリカは、この皆既日食の話題一色になりそうです。

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