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最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

ニューズウィーク日本版 2024年4月17日 17時29分

ジェス・トムソン<火山の熱や深海の水圧、真空の宇宙空間さえ生き延びるクマムシは、驚くべきDNA修復メカニズムを備えていた>

クマムシは想像を絶するほどの過酷な環境を生き延びることができる生物だが、その生命力の謎が解明される可能性が出てきた。

【動画】クマムシは宇宙の最強生物

クマムシはその愛らしい姿から、水グマやコケブタと呼ばれているが、極端な高温や低温、高圧・低圧、空気不足、放射線、脱水、さらには宇宙の真空状態に至るまで、ほとんどの生命体にとって死を招く環境に耐えることができる。

 

最近、学術誌『カレント・バイオロジー』に掲載された論文によれば、この頑健な生物が放射線を生き延びるメカニズムが解明された。

体長わずか0.5ミリのクマムシは、さまざまな環境で生息している。コケ、落ち葉、淡水や海洋の堆積物などに生息していることが多いが、高温の沸騰泉、ヒマラヤ山脈の頂上、水深4000メートルの深海でも発見されている。

クマムシは信じられないほど極端な環境に耐えることができる。150度の高温、-270度の低温でも数分間生存可能だ。何十年もの間、食べ物や水なしで過ごすことができるが、これは水分含有量を通常の1%以下にまで減らし、クリプトビオシスと呼ばれる状態に入って、代謝活動を実質的に停止させることができるからだ。

放射線にも負けない

この奇妙な生物は、高レベルの放射線にも強く、ほとんどの生物を死に至らしめる放射線量の1000倍以上の放射線を浴びても生き延びることができる。放射線は生物のDNAを傷つけ、突然変異、ガン、組織死などを引き起こし、生物の死を招く。

今回の論文によれば、ドゥジャルダンヤマクマムシというクマムシの一種は、DNA修復遺伝子を増幅させることで、放射線によるDNA損傷を修復している可能性があることがわかった。

「私たちは、目にしたものに驚いた」と、ノースカロライナ大学(UNC)チャペルヒル校のクマムシ研究者、ボブ・ゴールドスタインはこの論文の序論でこう述べている。「クマムシは予想もしなかったことをしている」

クマムシのDNA修復分子は体内にあふれ、強烈な放射線被曝による損傷を迅速に修復する。人間にもDNA修復遺伝子はあるが、クマムシに比べると発現のレベルは、はるかに低い。

「クマムシは放射線に対して驚くべき反応を示した。それが驚異的な生存能力の秘訣のようだ」と、UNCアッシュビル校の生物学助教授で、ゴールドスタインの研究室の博士研究員だったコートニー・クラーク=ハッテルは、論文の序論で指摘した。「クマムシが放射線ストレスを克服する方法について私たちが学んでいることは、他の動物や微生物を有害な放射線から守る方法に関する新しいアイデアにつながる可能性がある」

また、クマムシのDNA修復遺伝子は常時大量に発現しているわけではなく、放射線を検出したときに反応して発現量が上昇していることもわかった。

「クマムシは電離放射線を感知し、特定のDNA修復経路遺伝子を大量に亢進させている。この能力は、DNAの完全性を維持する解決策の進化形を表しているかもしれないという仮説を立てている」と、論文は述べる。

 

科学雑誌イーライフに掲載された査読前論文によれば、フランスの研究者たちも、まったく独立した実験で同様の結果を得ており、その結果、放射線損傷からDNAを保護する可能性のある新しいクマムシタンパク質も発見したという。

「各研究所の結果が独立した形で、互いの研究結果を裏付けていることに、感動している」とゴールドスタインは語った。

<動画>クマムシ生き残りの秘策



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