ブレンダン・コール
<昨年末から遅れに遅れたアメリカの追加支援がようやく議会で可決された。ウクライナの挽回は間に合うのか>
ウクライナは、陸海でロシアの侵攻を押し返すため、イギリスから新たに5億ポンド(約960億円)超の軍事支援を受けると、リシ・スナク英首相は発表した。
スナクは4月23日にこの新たな支援策を発表した後、ポーランドを訪問して同国のトゥスク首相およびNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長とヨーロッパの安全保障について会談した。その結果、イギリスのウクライナ支援は2024年度だけで30億ポンド(約5800億円)規模に膨らんだ。
この発表前には、米下院が数カ月に及ぶ迷走の末、600億ドル(約9兆3000億円)規模の軍事支援を可決した。米国の支援策は、4月30日に上院で可決され、ジョー・バイデン大統領によって署名される見込みだが、追加支援の遅れでロシアを勢いづかせてしまった今、どれほど効果があるかについては懸念がある。
【動画】追加支援でウクライナ軍が受け取るストームシャドウ、ハスキー、ATACMSの実力
ウクライナのアナリスト、ヴィクトル・コヴァレンコは本誌の取材に対し、西側がウクライナ軍への支援を強化した今、ウクライナ軍司令部は、「反攻と国土奪還について、真剣に考え始める」必要があると述べている。
過去最大の支援パッケージ
スナク政権が4月23日に発表したところによると、今回の資金は、弾薬や防空システム、ドローン、技術支援の迅速な供給のために使われると説明した。ドローンは英国で調達され、支援金がウクライナ国内の防衛サプライチェーン拡大を促進するほか、英国防省が「英国からの単一のパッケージとしては過去最大」と呼ぶ装備が送られる。
装備の内容は、以下の通り。
・沖合攻撃艇(offshore raiding craft) 、高速攻撃艇(rigid raiding craft)、ダイビングボート、艦砲(maritime guns)を含む船艇60隻
・攻撃・防空ミサイル1600発以上
・長距離精密誘導ミサイル「ストームシャドウ」
・歩兵機動車「ハスキー」160台
・装甲車162台
・全地形対応車78台
・弾薬400万発
アメリカがウクライナに初めて供与する空中発射型の長距離精密誘導ミサイル「ストームシャドウ」はすでに、ロシアの黒海艦隊に対する攻撃で有効性が証明されている。重要なのは、支援パッケージのなかにウクライナ軍が切に必要としている小火器弾薬400万発が含まれていることだ。
グラント・シャップス英国防相は声明の中で、この「記録的な軍事支援策」は、ウクライナが「ウラジーミル・プーチンのロシアを追い出し、ヨーロッパの平和と安定を取り戻す」助けになると述べている。
「イギリスは、対戦車ミサイルNLAWをウクライナに最初に提供し、最新式の戦車も長距離ミサイルも最初に送った。そして今、私たちはさらなる一歩踏み出そうとしている」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、アメリカの追加支援策が下院を通過した後、約300キロ離れた標的を攻撃可能な地対地ミサイル「ATACMS」がついにウクライナにやってくることを歓迎し、「ウクライナのATACMSに関する交渉は、すべてが決着した」と述べた。
アナリストのコヴァレンコは、2014〜2015年にかけてウクライナ軍の一員として戦闘に参加した経験がある人物だが、たとえウクライナが西側から追加支援を受けたとしても、「ロシアがドンバス地方のすべてを手に入れる時間の余裕は十分にあり、彼らにはそのための人員もある」と分析している。
「ウクライナが年内に占領地を奪還できなければ......あるいは、取り戻したとしてもわずか数村にとどまれば、ゼレンスキー大統領はプーチンとの交渉のテーブルにつかなければならない。ウクライナを国家として、少なくとも現在の形で救うために」
(翻訳:ガリレオ)
<昨年末から遅れに遅れたアメリカの追加支援がようやく議会で可決された。ウクライナの挽回は間に合うのか>
ウクライナは、陸海でロシアの侵攻を押し返すため、イギリスから新たに5億ポンド(約960億円)超の軍事支援を受けると、リシ・スナク英首相は発表した。
スナクは4月23日にこの新たな支援策を発表した後、ポーランドを訪問して同国のトゥスク首相およびNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長とヨーロッパの安全保障について会談した。その結果、イギリスのウクライナ支援は2024年度だけで30億ポンド(約5800億円)規模に膨らんだ。
この発表前には、米下院が数カ月に及ぶ迷走の末、600億ドル(約9兆3000億円)規模の軍事支援を可決した。米国の支援策は、4月30日に上院で可決され、ジョー・バイデン大統領によって署名される見込みだが、追加支援の遅れでロシアを勢いづかせてしまった今、どれほど効果があるかについては懸念がある。
【動画】追加支援でウクライナ軍が受け取るストームシャドウ、ハスキー、ATACMSの実力
ウクライナのアナリスト、ヴィクトル・コヴァレンコは本誌の取材に対し、西側がウクライナ軍への支援を強化した今、ウクライナ軍司令部は、「反攻と国土奪還について、真剣に考え始める」必要があると述べている。
過去最大の支援パッケージ
スナク政権が4月23日に発表したところによると、今回の資金は、弾薬や防空システム、ドローン、技術支援の迅速な供給のために使われると説明した。ドローンは英国で調達され、支援金がウクライナ国内の防衛サプライチェーン拡大を促進するほか、英国防省が「英国からの単一のパッケージとしては過去最大」と呼ぶ装備が送られる。
装備の内容は、以下の通り。
・沖合攻撃艇(offshore raiding craft) 、高速攻撃艇(rigid raiding craft)、ダイビングボート、艦砲(maritime guns)を含む船艇60隻
・攻撃・防空ミサイル1600発以上
・長距離精密誘導ミサイル「ストームシャドウ」
・歩兵機動車「ハスキー」160台
・装甲車162台
・全地形対応車78台
・弾薬400万発
アメリカがウクライナに初めて供与する空中発射型の長距離精密誘導ミサイル「ストームシャドウ」はすでに、ロシアの黒海艦隊に対する攻撃で有効性が証明されている。重要なのは、支援パッケージのなかにウクライナ軍が切に必要としている小火器弾薬400万発が含まれていることだ。
グラント・シャップス英国防相は声明の中で、この「記録的な軍事支援策」は、ウクライナが「ウラジーミル・プーチンのロシアを追い出し、ヨーロッパの平和と安定を取り戻す」助けになると述べている。
「イギリスは、対戦車ミサイルNLAWをウクライナに最初に提供し、最新式の戦車も長距離ミサイルも最初に送った。そして今、私たちはさらなる一歩踏み出そうとしている」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、アメリカの追加支援策が下院を通過した後、約300キロ離れた標的を攻撃可能な地対地ミサイル「ATACMS」がついにウクライナにやってくることを歓迎し、「ウクライナのATACMSに関する交渉は、すべてが決着した」と述べた。
アナリストのコヴァレンコは、2014〜2015年にかけてウクライナ軍の一員として戦闘に参加した経験がある人物だが、たとえウクライナが西側から追加支援を受けたとしても、「ロシアがドンバス地方のすべてを手に入れる時間の余裕は十分にあり、彼らにはそのための人員もある」と分析している。
「ウクライナが年内に占領地を奪還できなければ......あるいは、取り戻したとしてもわずか数村にとどまれば、ゼレンスキー大統領はプーチンとの交渉のテーブルにつかなければならない。ウクライナを国家として、少なくとも現在の形で救うために」
(翻訳:ガリレオ)