一田和樹
<日本では首相が民主主義の偽情報は脅威と発言し、EUは厳しい法規制を次々と打ち出している。中露イランが行っている認知戦に対して、民主主義陣営が一丸となって取り組んでいるように見えるが、その対策全体に効果はあるのか......>
2024年4月19日に公開された論文「Beyond misinformation: developing a public health prevention framework for managing information ecosystems」はコロナ禍でのインフォデミックを反省材料にして、インフォデミック予防するためのアプローチを整理したものである。ここで提示されたアプローチはインフォデミックに限らず、広範な誤・偽情報対策としても有効と考えられる。また、既存のさまざまな対策、ファクトチェック、リテラシー向上などを予防段階ごとに整理することもできる。
最近増えてきた誤・偽情報、認知戦などの見直し
日本では首相が民主主義の偽情報は脅威と発言し、各省庁が偽情報対策に乗り出している。アメリカではTik Tokが風前の灯火になり、EUは厳しい法規制を次々と打ち出している。中露イランが行っている認知戦に対して、民主主義陣営が一丸となって取り組んでいるように見える。その一方で、こうした動きの見直しも始まっている。
攻撃も対策も効果が検証されていなかった
意外かもしれないが、中露イランが行っている偽情報や認知戦、デジタル影響工作と呼ばれるものの効果は検証されていない。民主主義陣営各国は口を揃えて民主主義に対する脅威と叫んでいるが、それは検証されていない。正確には効果があるという調査研究はあるものの、その一方で効果がないという調査研究も存在しており、検証されたとは言いがたい状態だ。「民主主義の危機」と言うほどの深刻な効果はないと考える研究者は少なくない。
偽情報対策の領域の調査研究で発表され、メディアでもよく言われていることの多くには方法論上の問題があり、異なる結論の調査研究が存在する。たとえば偽情報は真実よりも早く拡散することをツイッターの過去の全データから検証したSoroush Vosoughi、Deb Roy、Sinan Aralによる有名な論文、「The spread of true and false news online」は、その対象をファクトチェックされた偽情報に限定している。しかし、ファクトチェックされていない情報を調査した論文や複数のプラットフォームを横断的に調査した結果はそうはなっていない。なにを偽情報として、どの範囲で調査するかによって結論は変わってくるのだ。
2016年の大統領選においてはフェイスブックで900万のエンゲージメントの記事が最大だったが、15億人のフェイスブックユーザーのエンゲージメントとしては脅威を感じるほどの数ではない。それ以上のエンゲージメントを獲得したふつうのニュースはいくらでもある。
また、SNSを含め多くのメディアにおいてニュースの消費は多くないという論文「Evaluating the fake news problem at the scale of the information ecosystem」もある。SNS上のニュース研究はテレビより多いがニュースの消費ではテレビ経由が多く、ニュースに関する研究では偽情報テーマは飛び抜けて多いがニュース全体の中での偽情報の比率は極めて少ない。調査研究において誤・偽情報に過度に集中していることがわかる。後述のフォーリン・アフェアーズの記事で「パニック」という言葉が使われたのも当然だ。
以前書いたように思い込みや仮説に内包されている問題はビッグデータを解析しても消えるものではない。「パニック」で増えた予算をつぎ込んだ調査の結果がどのようになるかは予想できる。
また、中露イランが行ったことに影響工作についての調査研究のほとんどは事例研究であり、社会全体への影響などについて整理、分析されているわけではない。
同様にファクトチェックやリテラシー教育などの対策についても効果は検証されていない。そもそもこの領域の調査研究はきわめて偏っていることもわかっている。過去の調査研究の内容の統計を取ると、圧倒的に多いのはファクトチェックに関するもので、次はリテラシーである。カーネギー国際平和財団が行ったこの調査の結果では、ファクトチェックに関する調査研究の多くは偽情報対策に特別効果があるわけではないという内容が多く、効果がある対策だからたくさん研究されているわけではないのだ。無駄遣いと思うのは私だけではないだろう。
また、調査方法や対象に偏りがあるうえ、行動に影響を与えることを検証したものがほとんどないこともわかっている。多くの調査研究は情報を受け入れることと、信じることまでを調査しており、行動するまでは調査していない。情報を受け入れることや信じることと、行動することの間には大きな隔たりがある。アイルランドの研究者のグループが2016年から2022年の間の公開されたこの領域の論文などを調査して判明した。
中露イランが行ったデジタル影響工作に効果があるように錯覚しやすいのは、現在の世界は民主主義にとって逆風であり、対策を講じなければ衰退してゆくからである。民主主義陣営は効果的な対策を講じていないので、長らく民主主義は衰退を続けている。気候変動、資源・エネルギー不足、格差の拡大、移民の増加がその背景にあり、こうした変化に直面した社会は不安定になり、極右など過激なグループが活発になりやすい。
これらは各国が協力して対処すべき問題だが、言い方を変えると外交と政治の問題、つまりは政治家や政党が責任を問われる問題となる。真っ正面から取り組むよりは、中露イランの影響工作のせいにした方が都合がいいうえ、わかりやすい悪役を設定できるので国民の理解も得やすい。
対策も同様で、ファクトチェックやデジタル影響工作のテイクダウンなどのようなわかりやすい対応を中心に行っている。しかし、問題の本質はそこにないので、そんなことをしている間に民主主義はどんどん衰退し、国内はより不安定になり、極右や白人至上主義者といった過激派が台頭する。その結果、アメリカでもヨーロッパでも社会は不安定になる一方だ。
さらに過度に外国からの干渉の脅威を政治家が口にし、メディアが報道しているため、国民の間に情報に対する不信感が広がっている。
こうなることはわかっていた
見直しの動きがでる前から、こうしたリスクについては何度も警告が発信されていた。2016年のアメリカ大統領選について分析したレポートには「パーセプション・ハッキング」が取り上げられている。パーセプション・ハッキングとは、デジタル影響工作の成否にかかわらず、干渉が公になることで不信感や懐疑的な風潮が広がってしまうことを指す。
Metaは四半期ごとに公開している脅威レポートでパーセプション・ハッキングの危険性について繰り返し、警告しており、一部のロシアの作戦が影響工作そののの効果を狙ったものではなく、その後のパーセプション・ハッキングの効果を狙ったものであった可能性も指摘していた。つまり、以前から一部では影響工作の本質的な脅威は、影響工作そのものよりもそれによって社会に不信と不安が広がることであることはわかっていた。
パーセプション・ハッキングは、ロシアの反射統制理論から導かれる手法ともいえるのだが、わかりにくいこともあり、Meta以外が調査研究することは少なかった。
同様に前回の記事で紹介したデータボイド脆弱性も5年間にわたって放置されたままだった。
アメリカは巨大な幻と戦うのが好きで、国民もそれを受け入れる傾向があるようだ。サイバー攻撃でも当初アメリカは「サイバーパールハーバー」のような大規模攻撃を想定しており、中露の閾値以下の戦いに有効な対処ができなかった。
誤・偽情報、認知戦においても派手で規模の大きな作戦、つまり「民主主義を破壊する」という言葉にふさわしい大規模作戦を想定している。実際、中露はその期待に応えるような目立つ作戦を展開している。しかし、一方ではパーセプション・ハッキングやデータボイド脆弱性のような地味だが効果のある作戦を行っていた。
中露が全領域にわたる戦い、ハイブリッド戦を仕掛けているのだとすれば、その成果は社会全体の状況で測られるべきだろう。民主主義指数が下がり続けている欧米の民主主義陣営は敗色は濃くなるばかりだ。認知戦など個々の作戦の効果測定は難しいが、全体としてはうまくいっていることになる。
中国とロシアには、アメリカの派手好きがわかっており、さらにそれが数年は克服されないことも予測可能だ。どこまでが最初からの計画だったかはわからないが、少なくとも現在欧米の民主主義国が行っている対策や報道は中露を利している可能性が高いことは最近公開されたフォーリン・アフェアーズの記事「Don't Hype the Disinformation Threat」やカーネギー国際平和財団のシニアフェローGavin Wildeの「From Panic to Policy: The Limits of Foreign Propaganda and the Foundations of an Effective Response」など多くの論考で指摘されている。
ではどうすればよいのか?
私は以前からデジタル影響工作などの脅威に対抗する方法は主に2つであり、ひとつは中露インドが構築しつつある統合型の管理社会である。下図のように監視、誘導、評価で徹底した管理を行う。
現在、日本を含む欧米の民主主義はこちらの方向にシフトしている。しかし、いきつくのは民主主義の顔をした権威主義であり、中露イランからすれば戦うことなく民主主義的価値感を駆逐できることになる。
もうひとつは政府や企業、市民といった主要アクターの相互の信頼の確立である。最近、この考え方を図解する論文「Beyond misinformation: developing a public health prevention framework for managing information ecosystems」が発表された。もともとはアメリカの疾病予防管理センター(CDC)もインフォデミック対策として似たようなフレームワークを公開しており、公衆衛生の分野では以前から利用されてきたもののようだ。公衆衛生から一般的なものに広げたものを作ってみた。
もとの論文によると、対策は4つのレベルをバランスよく行うことが必要であり、3次対策と2次対策に集中するとむしろ逆効果になる危険があると指摘している。現在、欧米の民主主義国で起きているのは、まさにこの状況である。
日本の外務省は最近「偽情報の拡散を含む情報操作への対応」を公開し、メディアでも取り上げられた。政府は誤・偽情報対策を含む「新型インフルエンザ等政府行動計画」を発表した。国民に危機感を持ってもらうことには成功したと思うが、想定したのとは逆の効果が広がっている可能性も高い。政府への不信の増大である。緊急時において他国の民間SNSサービスを重要なインフラと考えるのは異常だ。緊急時のための信頼できる情報インフラを整備することが優先課題のはずであり、基礎的対策なのである。基礎的対策を怠った状態で、3次、2次対策のみ強調すればそれは政府に対する不信感を生み、対策全体の効果を下げる。
海外からの干渉が社会に与える脅威の度合いと優先度をただしく検証し、対策の効果と目的をきちんと検証し、バランスよく実施してゆく必要がある。
<日本では首相が民主主義の偽情報は脅威と発言し、EUは厳しい法規制を次々と打ち出している。中露イランが行っている認知戦に対して、民主主義陣営が一丸となって取り組んでいるように見えるが、その対策全体に効果はあるのか......>
2024年4月19日に公開された論文「Beyond misinformation: developing a public health prevention framework for managing information ecosystems」はコロナ禍でのインフォデミックを反省材料にして、インフォデミック予防するためのアプローチを整理したものである。ここで提示されたアプローチはインフォデミックに限らず、広範な誤・偽情報対策としても有効と考えられる。また、既存のさまざまな対策、ファクトチェック、リテラシー向上などを予防段階ごとに整理することもできる。
最近増えてきた誤・偽情報、認知戦などの見直し
日本では首相が民主主義の偽情報は脅威と発言し、各省庁が偽情報対策に乗り出している。アメリカではTik Tokが風前の灯火になり、EUは厳しい法規制を次々と打ち出している。中露イランが行っている認知戦に対して、民主主義陣営が一丸となって取り組んでいるように見える。その一方で、こうした動きの見直しも始まっている。
攻撃も対策も効果が検証されていなかった
意外かもしれないが、中露イランが行っている偽情報や認知戦、デジタル影響工作と呼ばれるものの効果は検証されていない。民主主義陣営各国は口を揃えて民主主義に対する脅威と叫んでいるが、それは検証されていない。正確には効果があるという調査研究はあるものの、その一方で効果がないという調査研究も存在しており、検証されたとは言いがたい状態だ。「民主主義の危機」と言うほどの深刻な効果はないと考える研究者は少なくない。
偽情報対策の領域の調査研究で発表され、メディアでもよく言われていることの多くには方法論上の問題があり、異なる結論の調査研究が存在する。たとえば偽情報は真実よりも早く拡散することをツイッターの過去の全データから検証したSoroush Vosoughi、Deb Roy、Sinan Aralによる有名な論文、「The spread of true and false news online」は、その対象をファクトチェックされた偽情報に限定している。しかし、ファクトチェックされていない情報を調査した論文や複数のプラットフォームを横断的に調査した結果はそうはなっていない。なにを偽情報として、どの範囲で調査するかによって結論は変わってくるのだ。
2016年の大統領選においてはフェイスブックで900万のエンゲージメントの記事が最大だったが、15億人のフェイスブックユーザーのエンゲージメントとしては脅威を感じるほどの数ではない。それ以上のエンゲージメントを獲得したふつうのニュースはいくらでもある。
また、SNSを含め多くのメディアにおいてニュースの消費は多くないという論文「Evaluating the fake news problem at the scale of the information ecosystem」もある。SNS上のニュース研究はテレビより多いがニュースの消費ではテレビ経由が多く、ニュースに関する研究では偽情報テーマは飛び抜けて多いがニュース全体の中での偽情報の比率は極めて少ない。調査研究において誤・偽情報に過度に集中していることがわかる。後述のフォーリン・アフェアーズの記事で「パニック」という言葉が使われたのも当然だ。
以前書いたように思い込みや仮説に内包されている問題はビッグデータを解析しても消えるものではない。「パニック」で増えた予算をつぎ込んだ調査の結果がどのようになるかは予想できる。
また、中露イランが行ったことに影響工作についての調査研究のほとんどは事例研究であり、社会全体への影響などについて整理、分析されているわけではない。
同様にファクトチェックやリテラシー教育などの対策についても効果は検証されていない。そもそもこの領域の調査研究はきわめて偏っていることもわかっている。過去の調査研究の内容の統計を取ると、圧倒的に多いのはファクトチェックに関するもので、次はリテラシーである。カーネギー国際平和財団が行ったこの調査の結果では、ファクトチェックに関する調査研究の多くは偽情報対策に特別効果があるわけではないという内容が多く、効果がある対策だからたくさん研究されているわけではないのだ。無駄遣いと思うのは私だけではないだろう。
また、調査方法や対象に偏りがあるうえ、行動に影響を与えることを検証したものがほとんどないこともわかっている。多くの調査研究は情報を受け入れることと、信じることまでを調査しており、行動するまでは調査していない。情報を受け入れることや信じることと、行動することの間には大きな隔たりがある。アイルランドの研究者のグループが2016年から2022年の間の公開されたこの領域の論文などを調査して判明した。
中露イランが行ったデジタル影響工作に効果があるように錯覚しやすいのは、現在の世界は民主主義にとって逆風であり、対策を講じなければ衰退してゆくからである。民主主義陣営は効果的な対策を講じていないので、長らく民主主義は衰退を続けている。気候変動、資源・エネルギー不足、格差の拡大、移民の増加がその背景にあり、こうした変化に直面した社会は不安定になり、極右など過激なグループが活発になりやすい。
これらは各国が協力して対処すべき問題だが、言い方を変えると外交と政治の問題、つまりは政治家や政党が責任を問われる問題となる。真っ正面から取り組むよりは、中露イランの影響工作のせいにした方が都合がいいうえ、わかりやすい悪役を設定できるので国民の理解も得やすい。
対策も同様で、ファクトチェックやデジタル影響工作のテイクダウンなどのようなわかりやすい対応を中心に行っている。しかし、問題の本質はそこにないので、そんなことをしている間に民主主義はどんどん衰退し、国内はより不安定になり、極右や白人至上主義者といった過激派が台頭する。その結果、アメリカでもヨーロッパでも社会は不安定になる一方だ。
さらに過度に外国からの干渉の脅威を政治家が口にし、メディアが報道しているため、国民の間に情報に対する不信感が広がっている。
こうなることはわかっていた
見直しの動きがでる前から、こうしたリスクについては何度も警告が発信されていた。2016年のアメリカ大統領選について分析したレポートには「パーセプション・ハッキング」が取り上げられている。パーセプション・ハッキングとは、デジタル影響工作の成否にかかわらず、干渉が公になることで不信感や懐疑的な風潮が広がってしまうことを指す。
Metaは四半期ごとに公開している脅威レポートでパーセプション・ハッキングの危険性について繰り返し、警告しており、一部のロシアの作戦が影響工作そののの効果を狙ったものではなく、その後のパーセプション・ハッキングの効果を狙ったものであった可能性も指摘していた。つまり、以前から一部では影響工作の本質的な脅威は、影響工作そのものよりもそれによって社会に不信と不安が広がることであることはわかっていた。
パーセプション・ハッキングは、ロシアの反射統制理論から導かれる手法ともいえるのだが、わかりにくいこともあり、Meta以外が調査研究することは少なかった。
同様に前回の記事で紹介したデータボイド脆弱性も5年間にわたって放置されたままだった。
アメリカは巨大な幻と戦うのが好きで、国民もそれを受け入れる傾向があるようだ。サイバー攻撃でも当初アメリカは「サイバーパールハーバー」のような大規模攻撃を想定しており、中露の閾値以下の戦いに有効な対処ができなかった。
誤・偽情報、認知戦においても派手で規模の大きな作戦、つまり「民主主義を破壊する」という言葉にふさわしい大規模作戦を想定している。実際、中露はその期待に応えるような目立つ作戦を展開している。しかし、一方ではパーセプション・ハッキングやデータボイド脆弱性のような地味だが効果のある作戦を行っていた。
中露が全領域にわたる戦い、ハイブリッド戦を仕掛けているのだとすれば、その成果は社会全体の状況で測られるべきだろう。民主主義指数が下がり続けている欧米の民主主義陣営は敗色は濃くなるばかりだ。認知戦など個々の作戦の効果測定は難しいが、全体としてはうまくいっていることになる。
中国とロシアには、アメリカの派手好きがわかっており、さらにそれが数年は克服されないことも予測可能だ。どこまでが最初からの計画だったかはわからないが、少なくとも現在欧米の民主主義国が行っている対策や報道は中露を利している可能性が高いことは最近公開されたフォーリン・アフェアーズの記事「Don't Hype the Disinformation Threat」やカーネギー国際平和財団のシニアフェローGavin Wildeの「From Panic to Policy: The Limits of Foreign Propaganda and the Foundations of an Effective Response」など多くの論考で指摘されている。
ではどうすればよいのか?
私は以前からデジタル影響工作などの脅威に対抗する方法は主に2つであり、ひとつは中露インドが構築しつつある統合型の管理社会である。下図のように監視、誘導、評価で徹底した管理を行う。
現在、日本を含む欧米の民主主義はこちらの方向にシフトしている。しかし、いきつくのは民主主義の顔をした権威主義であり、中露イランからすれば戦うことなく民主主義的価値感を駆逐できることになる。
もうひとつは政府や企業、市民といった主要アクターの相互の信頼の確立である。最近、この考え方を図解する論文「Beyond misinformation: developing a public health prevention framework for managing information ecosystems」が発表された。もともとはアメリカの疾病予防管理センター(CDC)もインフォデミック対策として似たようなフレームワークを公開しており、公衆衛生の分野では以前から利用されてきたもののようだ。公衆衛生から一般的なものに広げたものを作ってみた。
もとの論文によると、対策は4つのレベルをバランスよく行うことが必要であり、3次対策と2次対策に集中するとむしろ逆効果になる危険があると指摘している。現在、欧米の民主主義国で起きているのは、まさにこの状況である。
日本の外務省は最近「偽情報の拡散を含む情報操作への対応」を公開し、メディアでも取り上げられた。政府は誤・偽情報対策を含む「新型インフルエンザ等政府行動計画」を発表した。国民に危機感を持ってもらうことには成功したと思うが、想定したのとは逆の効果が広がっている可能性も高い。政府への不信の増大である。緊急時において他国の民間SNSサービスを重要なインフラと考えるのは異常だ。緊急時のための信頼できる情報インフラを整備することが優先課題のはずであり、基礎的対策なのである。基礎的対策を怠った状態で、3次、2次対策のみ強調すればそれは政府に対する不信感を生み、対策全体の効果を下げる。
海外からの干渉が社会に与える脅威の度合いと優先度をただしく検証し、対策の効果と目的をきちんと検証し、バランスよく実施してゆく必要がある。