くらふと
<大航海時代の先駆者ポルトガルは、日本を含め世界各国に文化的影響をもたらした。現在は美しい街並みと温かい雰囲気で人気の観光地&移住地に>
新型コロナウイルスの流行も収まり、アフターコロナでインバウンド・アウトバウンドともに旅をしたい人々が世界にはあふれる。そうした中、日本は2025年大阪・関西万博の開催を控え、国際理解、多文化共生の機運が高まっている。
世界各国から150を超す国・組織がすでに参加を表明。「そんな国あったんだ」と驚くこともあるだろう。各国パビリオンの目玉の展示は何か。世界中の珍しい装飾品や民芸品、美味しい食べ物が一堂に会するまたとない機会だ。連載では、参加表明をしている各国を中心に、手軽にサクッと理解できるように紹介していく。
ポルトガル共和国
Portuguese Republic
大航海時代にいち早く海外へ進出したポルトガルは、当時、首都の貿易都市リスボンがヨーロッパを代表する都市とされ、7つの海を制したと言われるほど大きく繁栄した。
日本には1543年室町時代に到来し、当時まだ西洋を知らない日本に宗教や技術、食、思想、芸術など多くの面で影響を与え、社会に変化をもたらした。
大航海時代後は他国との競争や産業革命、政治的混乱によって衰退を経験したが、現在は旧植民地7か国とのポルトガル語圏共同体で協力関係を強め、財政再建に取り組む。
歴史を持つ都市と17もの世界遺産、海の幸で観光地として人気が高まり、安全さと穏やかな人々で移住先としても注目が高まっているポルトガルの横顔を3分で読み解く。
(写真AC、外務省のデータより作成)
概要
面積:9万2,225平方キロメートル(日本の約4分の1)
首都:リスボン市
人口:約1,029万人(2021年、IMF)
一人当たりGDP:2万4,296ドル(2021年、IMF)
主な言語:ポルトガル語
ポルトガル語(ポルトガル)のあいさつなど
おはよう ボン・ディーア
こんにちは ボア・タルデ
こんばんは ボア・ノイテ
ありがとう 男性:オブリガード 女性:オブリガーダ
さようなら アデウス
はい/いいえ スィン/ナオン
略史
1143年 ポルトガル王国成立
1755年 リスボン大震災
1910年 王政終焉、ポルトガル共和国成立
1932年 独裁体制の開始
1949年 NATO加盟
1955年 国連加盟
1974年 カーネーション革命(独裁体制の終焉、民主化)
1986年 欧州共同体(EC、現EU)加盟
過去の万博
1970年大阪万博:「人類の進歩と調和」をテーマとし、美術、科学、技術、思想、医学の面においてポルトガルが日本の近代化に果たした役割を紹介。現代のポルトガル社会を見せる展示も含まれた。
2005年愛知万博:「自然と歴史-陸地のはじまりであり、海の終わりであるポルトガル」をコンセプトに、ポルトガルと日本の文化的交流を紹介。パビリオン内では、ポルトガル名物を味わえるランチボックスを販売。
2020年ドバイ万博:大航海時代を思わせる船の形をしたパビリオン内では、「A World in One Country」をテーマとし、人々や自然の多様性をアピールする展示がされた。また、ポルトガル料理といったブルーエコノミー(海に関わる経済活動)も紹介。
特産品
ワイン:全国で優れたワインが作られ、それぞれの生産地の名を冠したワインが沢山ある。特にポルトガル第二の都市で作られたポルトワインが有名。
アズレージョ:青色が特徴的な装飾タイル。イスラム教徒から伝わり、ポルトガルが独自に発展させ、建物外部の装飾として使われるようになった。
(写真AC)
コルク:ポルトガルはコルクの生産が世界一。ワイン栓のみならずキッチン用品やファッション雑貨としても人気
バカリャウ:タラの塩漬け。豊富な海産物の中でも、バカリャウを使ったレシピは365もあると言われているほど定番の国民食。
景勝地
ジェロニモス修道院:ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路発見を記念して建てられた修道院。貝やロープなど公開をモチーフにした細かな装飾が特徴的なマヌエル方式の代表的建築物。
(写真AC)
発見のモニュメント:高さ52メートルの帆船をイメージしたモニュメント。大航海時代を記念して作られた。エンリケ航海王子をはじめ、何人もの大航海時代の偉人たちがあしらわれる。
(写真AC)
ロカ岬:ユーラシア大陸最西端の岬。「地終わり、海が始まる場」という有名な詩人の言葉が刻まれた石碑が立ち、最西端到達証明書も受領できる。
ドン・ルイス一世橋:美しいアーチが特徴的な二層構造の橋。橋の上からは、世界遺産のポルトの街並みとドウロ川が見渡せる。
(写真AC)
マデイラ諸島:「大西洋の真珠」と呼ばれる島々で、リゾート地として人気。豊かな自然と絶景を背景としたアクティビティのみならず、食や祭りなどユニークな文化が楽しめる。
著名人
クリスティアーノ・ロナウド(1985年~)...世界最高選手賞バロンドールを5回受賞したプロサッカー選手。世界最高の名門クラブで活躍し、チャンピオンズリーグ得点王受賞数は世界最多の7回。
フェルナンド・ペソア(1888~1935年)...ポルトガル語での作詞家で最も優れ、20世紀において最も著名な文学人であると言われている。作詞家、翻訳家、哲学者でもある。世界中の作家に影響を与えた。
ジョゼ・サラマーゴ(1922~2010年)...作家、劇作家、ジャーナリストとして数々の著名な作品を生み、1998年に、ポルトガル語界で初のノーベル文学賞を受賞した。サラマーゴの本はポルトガルで200万部以上売り上げ、25か国語に翻訳された。
ヴァスコ・ダ・ガマ(1460年頃~1524年)...ポルトガル王国の海賊、探検家でインドに到達した大航海時代の立役者の一人。
トリビア これだけ知っていれば"通"気分
●「カステラ(castelo)」や「天ぷら(temperar)」など、ポルトガル語が日本語になった言葉が沢山ある。(パン(pão)、カッパ(capa)、ボタン(botão)、かるた(carta)、たばこ(tabaco)など)
●ポルトガルは南蛮貿易により日本に多くのものを伝えた。鉄砲の伝来は従来の日本の戦い方に変化をもたらし、織田信長は長篠の戦いで鉄砲隊で武田信玄を破った。また、カボチャやサツマイモといった西洋の野菜や砂糖などの食材もこの時に日本に伝わった。
●ポルトガルでは肉より魚料理が人気であり、タラやイワシ、タコなど日本で好まれる魚が好んで食べられている。さらに、お米の消費量はヨーロッパで一番であり、日本人の口に合う料理が多いとされる。
●ポルトガルは非常に治安が良いとされており、世界平和度指数(Global Peace Index)2023年版によると、ポルトガルは世界で4番目に安全な国であり、9位の日本より高いランクに位置する。
●首都リスボンは、3000年以上の歴史があり、ローマより古い都市であると言われている。
姉妹都市
自治体名:長崎県長崎市
提携自治体名:ポルト市
提携年:1978年
概要・経緯:1972年に長崎在住ポルトガル名誉領事が渡欧した際、ポルト市長に姉妹都市縁組の希望を伝えるメッセージが託された。1977年に長崎ポルトガル親善使節団によるポルト市訪問を機に提携調印に発展。
自治体名:静岡県熱海市
提携自治体名:カスカイス市(リスボン県)
提携年:1990年
概要・経緯:1987年ポルトガル在住日本人会最高顧問の柔道家を通じて、カスカイス市から姉妹都市提携の申し入れがされ、提携に至った。
※記事中の数値や史実は、主に外務省ホームページ「国・地域>基礎データ」に準拠、「過去の万博」は過去の開催概要の記載・説明に準拠
<大航海時代の先駆者ポルトガルは、日本を含め世界各国に文化的影響をもたらした。現在は美しい街並みと温かい雰囲気で人気の観光地&移住地に>
新型コロナウイルスの流行も収まり、アフターコロナでインバウンド・アウトバウンドともに旅をしたい人々が世界にはあふれる。そうした中、日本は2025年大阪・関西万博の開催を控え、国際理解、多文化共生の機運が高まっている。
世界各国から150を超す国・組織がすでに参加を表明。「そんな国あったんだ」と驚くこともあるだろう。各国パビリオンの目玉の展示は何か。世界中の珍しい装飾品や民芸品、美味しい食べ物が一堂に会するまたとない機会だ。連載では、参加表明をしている各国を中心に、手軽にサクッと理解できるように紹介していく。
ポルトガル共和国
Portuguese Republic
大航海時代にいち早く海外へ進出したポルトガルは、当時、首都の貿易都市リスボンがヨーロッパを代表する都市とされ、7つの海を制したと言われるほど大きく繁栄した。
日本には1543年室町時代に到来し、当時まだ西洋を知らない日本に宗教や技術、食、思想、芸術など多くの面で影響を与え、社会に変化をもたらした。
大航海時代後は他国との競争や産業革命、政治的混乱によって衰退を経験したが、現在は旧植民地7か国とのポルトガル語圏共同体で協力関係を強め、財政再建に取り組む。
歴史を持つ都市と17もの世界遺産、海の幸で観光地として人気が高まり、安全さと穏やかな人々で移住先としても注目が高まっているポルトガルの横顔を3分で読み解く。
(写真AC、外務省のデータより作成)
概要
面積:9万2,225平方キロメートル(日本の約4分の1)
首都:リスボン市
人口:約1,029万人(2021年、IMF)
一人当たりGDP:2万4,296ドル(2021年、IMF)
主な言語:ポルトガル語
ポルトガル語(ポルトガル)のあいさつなど
おはよう ボン・ディーア
こんにちは ボア・タルデ
こんばんは ボア・ノイテ
ありがとう 男性:オブリガード 女性:オブリガーダ
さようなら アデウス
はい/いいえ スィン/ナオン
略史
1143年 ポルトガル王国成立
1755年 リスボン大震災
1910年 王政終焉、ポルトガル共和国成立
1932年 独裁体制の開始
1949年 NATO加盟
1955年 国連加盟
1974年 カーネーション革命(独裁体制の終焉、民主化)
1986年 欧州共同体(EC、現EU)加盟
過去の万博
1970年大阪万博:「人類の進歩と調和」をテーマとし、美術、科学、技術、思想、医学の面においてポルトガルが日本の近代化に果たした役割を紹介。現代のポルトガル社会を見せる展示も含まれた。
2005年愛知万博:「自然と歴史-陸地のはじまりであり、海の終わりであるポルトガル」をコンセプトに、ポルトガルと日本の文化的交流を紹介。パビリオン内では、ポルトガル名物を味わえるランチボックスを販売。
2020年ドバイ万博:大航海時代を思わせる船の形をしたパビリオン内では、「A World in One Country」をテーマとし、人々や自然の多様性をアピールする展示がされた。また、ポルトガル料理といったブルーエコノミー(海に関わる経済活動)も紹介。
特産品
ワイン:全国で優れたワインが作られ、それぞれの生産地の名を冠したワインが沢山ある。特にポルトガル第二の都市で作られたポルトワインが有名。
アズレージョ:青色が特徴的な装飾タイル。イスラム教徒から伝わり、ポルトガルが独自に発展させ、建物外部の装飾として使われるようになった。
(写真AC)
コルク:ポルトガルはコルクの生産が世界一。ワイン栓のみならずキッチン用品やファッション雑貨としても人気
バカリャウ:タラの塩漬け。豊富な海産物の中でも、バカリャウを使ったレシピは365もあると言われているほど定番の国民食。
景勝地
ジェロニモス修道院:ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路発見を記念して建てられた修道院。貝やロープなど公開をモチーフにした細かな装飾が特徴的なマヌエル方式の代表的建築物。
(写真AC)
発見のモニュメント:高さ52メートルの帆船をイメージしたモニュメント。大航海時代を記念して作られた。エンリケ航海王子をはじめ、何人もの大航海時代の偉人たちがあしらわれる。
(写真AC)
ロカ岬:ユーラシア大陸最西端の岬。「地終わり、海が始まる場」という有名な詩人の言葉が刻まれた石碑が立ち、最西端到達証明書も受領できる。
ドン・ルイス一世橋:美しいアーチが特徴的な二層構造の橋。橋の上からは、世界遺産のポルトの街並みとドウロ川が見渡せる。
(写真AC)
マデイラ諸島:「大西洋の真珠」と呼ばれる島々で、リゾート地として人気。豊かな自然と絶景を背景としたアクティビティのみならず、食や祭りなどユニークな文化が楽しめる。
著名人
クリスティアーノ・ロナウド(1985年~)...世界最高選手賞バロンドールを5回受賞したプロサッカー選手。世界最高の名門クラブで活躍し、チャンピオンズリーグ得点王受賞数は世界最多の7回。
フェルナンド・ペソア(1888~1935年)...ポルトガル語での作詞家で最も優れ、20世紀において最も著名な文学人であると言われている。作詞家、翻訳家、哲学者でもある。世界中の作家に影響を与えた。
ジョゼ・サラマーゴ(1922~2010年)...作家、劇作家、ジャーナリストとして数々の著名な作品を生み、1998年に、ポルトガル語界で初のノーベル文学賞を受賞した。サラマーゴの本はポルトガルで200万部以上売り上げ、25か国語に翻訳された。
ヴァスコ・ダ・ガマ(1460年頃~1524年)...ポルトガル王国の海賊、探検家でインドに到達した大航海時代の立役者の一人。
トリビア これだけ知っていれば"通"気分
●「カステラ(castelo)」や「天ぷら(temperar)」など、ポルトガル語が日本語になった言葉が沢山ある。(パン(pão)、カッパ(capa)、ボタン(botão)、かるた(carta)、たばこ(tabaco)など)
●ポルトガルは南蛮貿易により日本に多くのものを伝えた。鉄砲の伝来は従来の日本の戦い方に変化をもたらし、織田信長は長篠の戦いで鉄砲隊で武田信玄を破った。また、カボチャやサツマイモといった西洋の野菜や砂糖などの食材もこの時に日本に伝わった。
●ポルトガルでは肉より魚料理が人気であり、タラやイワシ、タコなど日本で好まれる魚が好んで食べられている。さらに、お米の消費量はヨーロッパで一番であり、日本人の口に合う料理が多いとされる。
●ポルトガルは非常に治安が良いとされており、世界平和度指数(Global Peace Index)2023年版によると、ポルトガルは世界で4番目に安全な国であり、9位の日本より高いランクに位置する。
●首都リスボンは、3000年以上の歴史があり、ローマより古い都市であると言われている。
姉妹都市
自治体名:長崎県長崎市
提携自治体名:ポルト市
提携年:1978年
概要・経緯:1972年に長崎在住ポルトガル名誉領事が渡欧した際、ポルト市長に姉妹都市縁組の希望を伝えるメッセージが託された。1977年に長崎ポルトガル親善使節団によるポルト市訪問を機に提携調印に発展。
自治体名:静岡県熱海市
提携自治体名:カスカイス市(リスボン県)
提携年:1990年
概要・経緯:1987年ポルトガル在住日本人会最高顧問の柔道家を通じて、カスカイス市から姉妹都市提携の申し入れがされ、提携に至った。
※記事中の数値や史実は、主に外務省ホームページ「国・地域>基礎データ」に準拠、「過去の万博」は過去の開催概要の記載・説明に準拠