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独自映像、全地形対応SUSVを吊るして飛ぶチヌーク、見張るブラックホーク、アラスカ州兵の訓練にエンベッド

ニューズウィーク日本版 2024年5月16日 16時38分

レナエ・ウィーセル
<重量級の輸送車両を吊り下げて、氷河に削られた荒々しい山中を飛ぶ神業級の操縦技術に瞠目>

本誌がYouTubeで配信している軍事番組Unconventional(アンコンベンショナル=型破り)の最新エピソードでは、元情報将校で番組ホストのナビード・ジャマリが敵国ロシアに最も近いアメリカの最前線で活動するアラスカ州兵に36時間密着した。

アラスカの大陸部は、ベーリング海峡をはさんで、ロシアの大陸部とわずか88キロ程の距離で向かい合っている。最も近いそれぞれの島は約3キロしか離れていない。

「ここは地球上で最も重要な戦略地点だと多くの人が言うが、そのとおりだ。豊富な資源が眠るからでもあるが、それ以上に有事の場所と至近距離にあるからだ。われわれがアメリカの第1防衛線だ。私はそれを肝に銘じている」と、トレンス・サックス少将は本誌に語った。

 

アラスカ州兵は米軍の予備戦力として不可欠の役割を担い、災害時の救助活動から国境警備まで、州と連邦レベルの任務両方を遂行する。州全域の広大さ、過酷な気象条件、アメリカ本土からの孤立、そして戦略上の重要性から、その活動には極めて高い練度が求められる。

ツンドラあり、山々あり

「われわれは知られている敵対国に非常に近い位置にいる。祖国を守るのはアラスカであり、われわれなのだ」と、アラスカ陸軍州兵の飛行部隊を率いるマイケル・エドワーズ大佐は言う。

州兵も使用する米陸軍と空軍の合同基地エルメンドーフ・リチャードソンは、州最大の都市アンカレジと、急峻な美しい峰々がそびえるチュガッチ山地の間に位置する。

本誌は、全地形対応の装軌式車両である小部隊支援車両(SUSV)を運ぶ、輸送ヘリ「チヌーク」の訓練ミッションに同行した。チヌークはSUSVを吊り下げて飛び、遠方の目標地点に投下。その後、ジャミルはヘリのクルーと共にSUSVに乗り込んで基地に戻り、アメリカ「最後のフロンティア」を守る兵士たちにとって、この車両が必要不可欠な移動手段であることを体感した。

「アラスカ各地を移動するには、SUSVは非常に優れた車両だ。州内にはツンドラ、山々など、特有の環境があり、災害救助や遠征基地の建設など、戦闘用・民生用の双方で迅速な装備の運搬が求められる事態が発生する」と、コディ・マッキニー機長は説明した。

チヌーク・ヘリに吊るして運ばれた先で走るSUSV  NEWSWEEK

厳しい飛行条件下で、州兵は必要に応じてさまざまなヘリコプターを使用する。

「チヌークはおもに重い装備の運搬に使われる。攻撃ヘリのアパッチはもちろん戦闘ミッション用だ。アラスカの場合、非常に特殊なのは、こうしたミッションを同時にこなす事態を想定しなければならないこと。辺鄙な場所に住む多数の民間人を避難させるだけでなく、装備を搬入しなければならないといった場合だ。そのためにチヌークとブラックホークを一緒に飛ばす訓練を行なっている」

 

本誌が同行した訓練飛行には、2機のチヌークと1機のブラックホークが参加。SUVSを吊り下げた状態で樹上すれすれを飛んだり、異種のヘリと編隊を組んで飛ぶなど、難度の高い訓練をこなした。アラスカ陸軍州兵飛行部隊の活動には、こうした神業級の技術の維持が不可欠なのだ。

アメリカ本土から1600キロ以上も離れたアラスカは、あまりに孤立している。そのため、このアメリカ最大の州に住み、働く人たちはまるで島にいるようだと話す。

ここには自助しかない

「島にいれば、自分たちの力で生きていくしかない」と、エドワーズ大佐は言う。「あらゆる事態に自力で対処しなければならない。州兵が極めて高度な操縦技術を身につけるのもそのためだ」

「どの州でも同様だろうが、特にアラスカで暮らす人は、州のために貢献したいという思いが強い。地域の人たちを助けたい、親を、友人を、同郷の人々を助けたいのだ」

アラスカ州兵と共に過ごした36時間、ジャミルは何度もこの地の「荒々しい美しさ」に息をのんだという。

「アラスカが見せる危険な表情はまた、人々を魅了してやまないアラスカの美しさでもある」と、彼は言う。「この地に生きるなら自主独立の覚悟がいる」

【動画】アラスカ州兵の迫力の訓練画像を見る

 

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