エリー・クック
<FPVドローンなどによる攻撃から車体を守るため、金属製の防御用金網などを取り付けたロシア軍戦車がウクライナ各地で目撃されている>
ウクライナ東部ドネツク州の前線で攻勢を強めるロシア軍。戦闘はウクライナ全域で繰り広げられているが、最近これらの前線にロシア軍が次々と投入しているのが「亀戦車」だ。これは攻撃から車体を防ぐため、金属製の防御用金網などを取り付けた戦車だが、新たに公開された映像を見ると、正確な砲撃に対する「甲羅」の防御力は不十分であることが分かる。
■【動画】ロシアが続々投入「異形の新型戦車」、防御力の弱さ露呈...砲撃で次々「撃破」する映像をウクライナ公開
ウクライナ東部で展開する同国の第79独立空中強襲旅団は5月14日、短い動画を公開した。そこに映っているのは、ドネツク州の村ノヴォミハイリフカ周辺で、戦闘車両17台で構成されたロシア軍の部隊が、ウクライナ軍の部隊を攻撃している様子だという。その中には、金網で覆われたロシア軍の戦車も映っている。
「戦車に防御用の金網を取り付けても、狙いを定めた攻撃には役に立たなかった」。同旅団は、ソーシャルメディアへの投稿でそうコメントしている。
ここ数週間、インターネット上で広まっている映像は、ロシアが自軍の戦車に甲羅のような金属構造物を取り付けて覆い、前線付近で攻撃してくるウクライナ軍のFPV(一人称視点)ドローン、通称カミカゼ・ドローンから守ろうとしている様子を示している。防御用の金網が取り付けられたこの戦車は「カメ戦車」と呼ばれSNSでは笑いものになっている。
小型武器の専門家マシュー・モスが本誌に語ったところによると、カメ戦車は、ロシア軍が新たに攻勢を仕かけているハルキウ州北東部を含む、ウクライナの前線のあちこちに出現しているという。
ロシア戦車はウクライナ軍ドローンの「お気に入りの標的」
カメ戦車は、数が増え、形式も統一されていくのだろうか。モスによれば、「カメ戦車にどのくらいの効果があるのか、また、ウクライナ軍が適応して、より効果的な攻撃法を考案できるか、この二つの要素にかかっている」という。
ウクライナ側の情報源がここ数週間、投稿している動画は、ドネツク州でロシア軍の戦車が破壊され、防御用の金属製カバーが残骸となっている様子だとされている。
ウクライナ軍は、安価なFPVドローンを大量に投入し、ロシア軍の装甲車や戦車を狙い撃ちしている。ウクライナ国防省は4月はじめ、「ロシア軍の戦車は、ウクライナ軍のFPVドローンにとって『お気に入りの標的』だ」と述べていた。
第79旅団によると、ウクライナ軍はノヴォミハイリフカ近郊で、ドローンと砲撃、対戦車ミサイルを使い、ロシア軍の車列を攻撃した。「わが軍兵士の技量と、優れたチームワークのおかげで、戦車4台、歩兵戦闘車6台、装甲回収車1台が、残骸となって戦場に残された」
ウクライナ軍によると、この車列は「大規模攻撃」の一部だった。その直前にロシア軍は、この集落周辺での活動を一時的に中断していたという。本誌は、ウクライナ軍が公開したこの映像について独自に検証することができず、ロシア国防省にメールでコメントを求めている。
ノヴォミハイリフカは、最前線の村だ。ロシアが支配する都市ドネツクの南西部、2023年12月にロシアが制圧した村マリンカの真南に位置する。すぐ近くには、ドネツク州南部にある戦略的な要衝ヴフレダルもある。ドネツク州は、2年を超える全面戦争のあいだ中、激戦の舞台となっている。
ウクライナ軍が5月15日午後1時30分(現地時間)に発表した声明によると、ロシア軍はノヴォミハイリフカ北部に対して、複数回の攻撃を行った。ノヴォミハイリフカの西に位置する集落アントニフカも空爆を受けた。
戦線を拡大しウクライナの戦力分散を狙うロシア
ロシアは、ウクライナ東部への攻撃を強めつつ、5月15日には、同国北東部ハルキウ州で、さらに2つの村を支配下に置いたと主張した。ロシア政府が発表した声明によると、北部で展開するロシア軍部隊が、フリボケとルキャンツィを制圧したという。
ロシアは5月10日、北東部で新たな前線を開いた。これについてウクライナ当局と西側アナリストは、ロシアがウクライナの戦力分散を狙っていると述べている。
ウクライナ東部と北東部で戦う同軍ホルティツィア作戦軍の報道官ナザール・ヴォロシン中佐は本誌に対して、ロシアは、ウクライナによる東部と南部の陣地強化を防ごうとしていると語る。ハリコフから離れた前線沿いでは、ロシア軍の攻撃回数が増えているという。
ロシア国防省は5月15日、ロシア軍が、ザポロジエ州南部の村ロボティネを制圧したと発表した。ロボティネは、ウクライナ軍が2023年に反攻してロシアから奪還した村だ。
ウクライナ軍は5月15日、ロシアはロボティネ周辺で軍を進めようとしていると述べた。同地近辺では、「小競り合い」が1日に15回起きたという。
(翻訳:ガリレオ)
<FPVドローンなどによる攻撃から車体を守るため、金属製の防御用金網などを取り付けたロシア軍戦車がウクライナ各地で目撃されている>
ウクライナ東部ドネツク州の前線で攻勢を強めるロシア軍。戦闘はウクライナ全域で繰り広げられているが、最近これらの前線にロシア軍が次々と投入しているのが「亀戦車」だ。これは攻撃から車体を防ぐため、金属製の防御用金網などを取り付けた戦車だが、新たに公開された映像を見ると、正確な砲撃に対する「甲羅」の防御力は不十分であることが分かる。
■【動画】ロシアが続々投入「異形の新型戦車」、防御力の弱さ露呈...砲撃で次々「撃破」する映像をウクライナ公開
ウクライナ東部で展開する同国の第79独立空中強襲旅団は5月14日、短い動画を公開した。そこに映っているのは、ドネツク州の村ノヴォミハイリフカ周辺で、戦闘車両17台で構成されたロシア軍の部隊が、ウクライナ軍の部隊を攻撃している様子だという。その中には、金網で覆われたロシア軍の戦車も映っている。
「戦車に防御用の金網を取り付けても、狙いを定めた攻撃には役に立たなかった」。同旅団は、ソーシャルメディアへの投稿でそうコメントしている。
ここ数週間、インターネット上で広まっている映像は、ロシアが自軍の戦車に甲羅のような金属構造物を取り付けて覆い、前線付近で攻撃してくるウクライナ軍のFPV(一人称視点)ドローン、通称カミカゼ・ドローンから守ろうとしている様子を示している。防御用の金網が取り付けられたこの戦車は「カメ戦車」と呼ばれSNSでは笑いものになっている。
小型武器の専門家マシュー・モスが本誌に語ったところによると、カメ戦車は、ロシア軍が新たに攻勢を仕かけているハルキウ州北東部を含む、ウクライナの前線のあちこちに出現しているという。
ロシア戦車はウクライナ軍ドローンの「お気に入りの標的」
カメ戦車は、数が増え、形式も統一されていくのだろうか。モスによれば、「カメ戦車にどのくらいの効果があるのか、また、ウクライナ軍が適応して、より効果的な攻撃法を考案できるか、この二つの要素にかかっている」という。
ウクライナ側の情報源がここ数週間、投稿している動画は、ドネツク州でロシア軍の戦車が破壊され、防御用の金属製カバーが残骸となっている様子だとされている。
ウクライナ軍は、安価なFPVドローンを大量に投入し、ロシア軍の装甲車や戦車を狙い撃ちしている。ウクライナ国防省は4月はじめ、「ロシア軍の戦車は、ウクライナ軍のFPVドローンにとって『お気に入りの標的』だ」と述べていた。
第79旅団によると、ウクライナ軍はノヴォミハイリフカ近郊で、ドローンと砲撃、対戦車ミサイルを使い、ロシア軍の車列を攻撃した。「わが軍兵士の技量と、優れたチームワークのおかげで、戦車4台、歩兵戦闘車6台、装甲回収車1台が、残骸となって戦場に残された」
ウクライナ軍によると、この車列は「大規模攻撃」の一部だった。その直前にロシア軍は、この集落周辺での活動を一時的に中断していたという。本誌は、ウクライナ軍が公開したこの映像について独自に検証することができず、ロシア国防省にメールでコメントを求めている。
ノヴォミハイリフカは、最前線の村だ。ロシアが支配する都市ドネツクの南西部、2023年12月にロシアが制圧した村マリンカの真南に位置する。すぐ近くには、ドネツク州南部にある戦略的な要衝ヴフレダルもある。ドネツク州は、2年を超える全面戦争のあいだ中、激戦の舞台となっている。
ウクライナ軍が5月15日午後1時30分(現地時間)に発表した声明によると、ロシア軍はノヴォミハイリフカ北部に対して、複数回の攻撃を行った。ノヴォミハイリフカの西に位置する集落アントニフカも空爆を受けた。
戦線を拡大しウクライナの戦力分散を狙うロシア
ロシアは、ウクライナ東部への攻撃を強めつつ、5月15日には、同国北東部ハルキウ州で、さらに2つの村を支配下に置いたと主張した。ロシア政府が発表した声明によると、北部で展開するロシア軍部隊が、フリボケとルキャンツィを制圧したという。
ロシアは5月10日、北東部で新たな前線を開いた。これについてウクライナ当局と西側アナリストは、ロシアがウクライナの戦力分散を狙っていると述べている。
ウクライナ東部と北東部で戦う同軍ホルティツィア作戦軍の報道官ナザール・ヴォロシン中佐は本誌に対して、ロシアは、ウクライナによる東部と南部の陣地強化を防ごうとしていると語る。ハリコフから離れた前線沿いでは、ロシア軍の攻撃回数が増えているという。
ロシア国防省は5月15日、ロシア軍が、ザポロジエ州南部の村ロボティネを制圧したと発表した。ロボティネは、ウクライナ軍が2023年に反攻してロシアから奪還した村だ。
ウクライナ軍は5月15日、ロシアはロボティネ周辺で軍を進めようとしていると述べた。同地近辺では、「小競り合い」が1日に15回起きたという。
(翻訳:ガリレオ)