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ペットはますます「金のかかる友」に...飼い主の約4割が「手術費用が払えない」と実感

ニューズウィーク日本版 2024年5月23日 15時30分

ジュリア・カーボナロ
<医療技術の先端化とペットブームで、愛犬・愛猫の飼育費は高騰するばかり>

ペットは人間の最良の友であり、家族の一員、癒やしと喜びと笑いの源だが、多くのアメリカ人にとってはますます金のかかる友になっている。

本誌が英調査会社レッドフィールド&ウィルトン・ストラテジーズに依頼した調査では、ペットの飼い主の72%が、過去1年間に飼育費が上昇したと回答した。

調査はアメリカの有権者1500人を対象に今年3月23~24日に実施された。調査当時、ペットを飼っていると回答した人は65%。これは、アメリカの家庭の66%(8690万世帯)がペットを飼育しているという米国ペット用品協会(APPA)のデータとほぼ一致する。

ペットの内訳はほとんどが犬(6510万世帯)と猫(4650万世帯)だ。APPAの最新のデータによれば、22年のペット飼育費の総額は前年の1236億ドルから1368億ドルに上昇。多くの飼い主は飼育費の上昇に懸念を抱いている。

今回の調査では回答者の約43%が、ペットの飼育費を賄えるかどうか非常に不安(21%)・かなり不安(22%)と回答。さらに22%がやや不安と回答した。

APPAの報告書によれば、予防接種、ベッド、餌、リード、ハーネス、首輪、手入れ用品、トレーニング、ペットホテル代や海外旅行に連れて行く場合のペットパスポートなど、考えられる費用を全て考慮に入れると、1年間に飼い主がペットに使う費用は平均で犬が約1400ドル、猫が約1200ドルだった。

貧しい人々の負担に

このところ飼育費が上昇している一番の理由は、ペットの医療費の上昇と関係がある。

「他の医療分野と同様、動物の医療費も上昇し続けている」と米獣医協会(AVMA)のリーナ・カールソン会長は本誌に語った。「理由としては、まず急性・慢性疾患の治療に使われる医薬品の値上がりや、獣医が最も有効で最新の治療を続けるための新技術や最新医療設備を取得するニーズ。それに電気代、病院の建物の家賃やローン、通信費といった一般事業費の上昇などが挙げられる」

動物医療はより高度になり、同時にペットの寿命も延びていると、カールソンは言う。「これはもちろん非常にいいことだが、動物が生涯で必要とする医療も増える」

全ての飼い主が飼育費の上昇についていけるわけではない。今回の調査では、飼い主の約37%が既に簡単な手術でも費用が払えそうにないと回答した。

ペットの寿命の延びも医療費を押し上げている PHYNART STUDIO/ISTOCK

動物の世話とペット用品にかかる費用の上昇は特に貧困世帯には負担となっている。「アメリカでは少なくとも2000万匹のペットが、貧しい家庭やリソースが限られているかほとんどないサービス不十分な地域で飼われている」と、アメリカ動物愛護協会のケア促進キャンペーン「アクセス・トゥ・ケア」の統括責任者アマンダ・アリントンは言う。

「相互に関連する多様なアプローチを通じてケアがより平等に利用できるよう取り組んでいる。コミュニティーに対する支援、政策立案、獣医や動物福祉専門家向けの研修、企業との提携、獣医による治療などのケアサービスと、飼い主に情報を無料提供する直接的な医療プログラムなどだ。ペットが家族と一緒にいられるよう支援したい人は、ペットフードパントリーや動物医療基金への寄付もできる」

予防医療が最善の方法

オレゴン州ポートランド在住のメアリー・リオンの自慢の愛犬フリスコは、救助犬で19品種のミックス犬だ。コロナ禍初期に飼い始めてかれこれ4年近くたつ、「いわゆるパンデミック・パピー(パンデミック中に飼い始められた子犬)」だという。フリスコにかかる定期的な出費は月々約250ドル。「餌、おやつ、散歩代行、ペット保険など」で、一番高いのは恐らく医療費だろうという。

「定期検診と予防接種の費用もかさむが、最も痛いのは主に急なトラブルでケアや動物病院に駆け込む際の追加コスト」だという。「幸いフリスコはしばらく救急治療を受けずに済んでいるけれど、数カ月前に私の恋人の愛犬がチョコレートをのみ込んでしまい、犬が食べると危険なので救急治療が必要な事態に。吐き出させて点滴しただけで500ドルくらいかかった」

ペット関連の費用は「間違いなくかさむ」とリオンは言う。「月々の保険料が生涯かかるペット保険に加入するか、または生涯に少なくとも数回は予想外の動物病院行きで非常に高額になり得ること、手術となれば5000~1万ドルかかる可能性もあることを覚悟するか」悩むそうだ。

北米ペット健康保険協会によると、アメリカでは犬の事故や病気の保険料は年間平均で675ドル余り、猫は383ドル余りもする。そのため昨年の保険料の総額は前年同期比で22%近く増え、39億ドルに達した。

現在、多くの飼い主は万一に備えてペット保険に加入するようになっている。しかしカールソンによれば、動物の予防医療(予防接種、寄生虫防除、体重管理など)が「ペットが今後も健康で幸福に暮らせる」ようにし、将来高額な医療費がかからずに済む「最善の方法」だという。

飼い主の数に対して獣医が不足しているため、獣医探しも大変だとリオンは指摘する。

「少なくともポートランドではそうだ。ペットを飼っている人が大勢いるのに。だから高額の飼育費のストレスに加えて、ペットのケアの需要がとても多いせいで動物病院で何時間も、時には一晩中待たされるストレスもある」

「いろいろ値上がりするかもしれない」が、フリスコは「本当にいい子で何よりも愛しい」と、リオンは言う。「あの子のためなら、お金なんて全然惜しくない」



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