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世界大学ランキング、日本勢は「東大・京大」含む63%が順位落とす...米英独とともに「ワースト4」に

ニューズウィーク日本版 2024年6月5日 19時31分

木村正人
<クアクアレリ・シモンズ(QS)が発表した世界大学ランキング2025年版からは、先進国の衰退ぶりと中国の躍進が一層鮮明に>

[ロンドン発]英国の大学評価機関、クアクアレリ・シモンズ(QS)が6月4日、1500校以上の世界大学ランキング2025年版を発表した。昨年より順位を落とした大学が米国67%、日本63%、英国58%、ドイツ54%とワースト4を占め、先進国の衰退ぶりが一層鮮明になってきた。

トップ10校は以下の通り。
(1)マサチューセッツ工科大学(米国、昨年同)
(2)インペリアル・カレッジ・ロンドン(英国、昨年6位)
(3)オックスフォード大学(英国、昨年同)
(4)ハーバード大学(米国、昨年同)
(5)ケンブリッジ大学(英国、昨年2位)
(6)スタンフォード大学(米国、昨年5位)
(7)スイス連邦工科大学チューリッヒ校(スイス、昨年同)
(8)シンガポール国立大学(シンガポール、昨年同)
(9)ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(英国、昨年同)
(10)カリフォルニア工科大学(米国、昨年15位)

日本勢はトップ100校に東京大学32位(昨年28位)、京都大学50位(昨年46位)、東京工業大学84位(昨年91位)、大阪大学86位(昨年80位)の4校が入った。教員と学生の国際化度は東京大学がそれぞれ10.1、29.7、京都大学が15.9、19と進んでいない。

シンガポール国立大学の国際化度は極めて高い

これに対してアジア勢で唯一トップ10校入りを果たしたシンガポール国立大学は教員の国際化度は100、学生の国際化度は88.9と極めて高い。13年連続で首位を守ったマサチューセッツ工科大学でも教員の国際化度は99.3、学生の国際化度は86.8だ。

世界大学ランキングは留学生が大学・大学院を選ぶ際の目安になっている。トップ校を卒業すれば世界的に評価が高まり、就職に有利に働く。日本では2022年から出生数が80万人を割っており、今後ますます少子化が加速し、大学の大倒産時代が懸念される。

日本の文部科学省も大学も留学生を増やしたいなら国際化は避けては通れない。しかし職を失うのを恐れる日本人教員の抵抗で国際化が進まないのが現実だ。大学部門の研究開発費は20年時点で2.1兆円。米国8.2兆円、中国4.6兆円。ドイツの2.6兆円にも及ばない。

日本の大学はこのままでは間違いなく先細りしていく。

留学生が減る英国

7月4日に総選挙が行われる英国では欧州連合(EU)離脱後、内向き志向が強まる。中国の統制が強化された香港や戦火のウクライナからの難民が増え、22年の1年間で移民の純増数は74万5000人(EU離脱前の目標は30万人)に。リシ・スナク首相は保守層に突き上げられている。

英国大学協会によると昨年と比較して留学生の大学出願数が5%減り、大学院出願数も27%減少。インド、ナイジェリア、パキスタンからの出願が大学院レベルで激減した。政治介入で扶養家族の同伴が制限された上、卒業後2~3年英国で働けるビザの廃止・縮小が懸念されるためだ。

「過去20年の世界の高等教育について語るなら米国の大学が依然として優位性を維持している。中国やインドなどアジアの野心が強まる中、世界のトップクラスの大学は増加している」とQSのベン・ソーター上級副社長は国際教育ニュースメディア、THE PIEに解説している。

米国の大学が優位を保ち続ける保証はない

米国の大学が優位を保ち続ける保証はない。現にカリフォルニア大学バークレー校は10位から11位に、コーネル大学が13位から16位に、プリンストン大学が17位から22位に、イェール大学が16位から23位に順位を下げるなど、米国の名門大学は軒並み後退を余儀なくされている。

QSのジェシカ・ターナー最高経営責任者(CEO)は「英国の結果は資金不足、出願者数の減少、留学生に対する政治介入といった問題に対処して高等教育の優位性を維持する限られた能力しか残されていないことを示唆しているのかもしれない」とTHE PIEに指摘している。

北京大学は17位から14位に、清華大学は25位から20位に順位を上げるなど、中国の大学の68%がランキングを向上させた。インドの大学はトップ100校には入らなかったものの、中国の大学に続こうと意欲を燃やす。大学力は国力に直結する。

英国の総選挙と米国の大統領選はその意味でも大きなインパクトを持っている。


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