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「多くが修理中」ロシア海軍黒海艦隊の3分の1が「戦闘不能状態」...ウクライナ軍の「水上ドローン」に太刀打ちできず

ニューズウィーク日本版 2024年6月18日 17時50分

ブレンダン・コール
<ウクライナ軍による「水上ドローン」などの攻撃手段でロシア側の戦略は「ほぼ失敗に終わっている」。しかし、優位性を失ったロシア側が強硬手段に出る可能性も>

ウクライナ海軍によれば、ロシア黒海艦隊のうち3分の1が、ウクライナ側の攻撃によって戦闘不能の状態に陥っている。

これは、ロシア軍の攻勢に直面する中で、ウクライナは非常に重要な穀物の輸出機能維持に成功していると伝える、ウクライナ海軍報道官による発表の中で明らかになったものだ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によって2022年2月に始められたこの戦争の中で、ウクライナ軍はロシアの黒海艦隊に対して、ニュースの見出しになるような多大な打撃を複数回与えてきた。

例えば、同艦隊の旗艦だったミサイル巡洋艦「モスクワ」の撃沈がそれにあたる。

■【関連動画】沈みゆくロシア黒海艦隊ミサイル巡洋艦「モスクワ」の「最期」 を見る

 

また、さまざまな艦船や、クリミア半島にあるセバストポリ海軍基地などのインフラ施設にも、繰り返し空爆を行っている。こうした空爆には、多くの場合「水上ドローン」(無人艇)などの無人兵器が使用されている。

■【関連動画】ウクライナ軍の最新鋭「海上ドローン」 を見る

それ以来、ロシアは、同国が占領しているクリミア半島北東部から、ロシア本土のクラスノダール地方にあるノボロシスク、場合によってはさらに遠方へと、艦船を移動させている。

ウクライナ海軍のドミトロー・プレテンチューク報道官は、ウクライナメディアのRBCに対し、戦果やロシア軍の艦船への攻撃について、いくつかの詳細を明かした。

「間違いなく、(黒海艦隊の艦船の)3分の1は戦線を離脱している。破壊され、損害をこうむっている」と同報道官は述べている。

この「3分の1」という数字は、他の複数の推計とも一致している。その1つが、米シンクタンク「ジェームズタウン財団」による分析だ。

同財団は2024年3月、ウクライナ軍が黒海で展開する水上ドローンなどの攻撃手段によって、ウクライナは、戦争前に近いレベルの穀物輸出が可能になっているとし、ロシア側の「海上のパワーバランスを変更しようとする」試みは、「ほぼ失敗に終わっている」と結論した。

プレテンチューク報道官によると、ロシアは、ザポリージャ州とドネツク州の南部を占拠することで、ウクライナを黒海から切り離そうとしたが、黒海北岸を支配するためにオデーサの街へ進軍しようとするロシアの計画は失敗したという。

ロシアは、南部でドニプロ川を越えようとしたものの押し戻され、それによって「黒海を完全掌握するという計画も後退を始め」、さらに、強襲揚陸艇を上陸させる能力も損なわれたという。

同報道官はさらに、「ロシア側の妨害にもかかわらず、ウクライナは、オデーサ州の複数港からの穀物回廊を確保し続けることに成功した」と述べた。

 

黒海で被弾したロシア軍の艦船やミサイル運搬船の数を尋ねられると、同報道官はこう回答した。

「公式には28隻だ。10隻以上が修理中の状態にあるが、稼働中の艦船も、その多くが損害を受けている」

同報道官は、ウクライナは黒海海域のうち9600平方マイル(約2万5000平方キロメートル)以上を解放したと述べ、北部、西部、南西部に続き、現在は中央部も解放された海域に入っているとした。

だが、ロシアはこの海域で今でも潜水艦を使用していると述べ、アゾフ海と黒海を結ぶ海域にいる4隻のうち3隻が、巡航ミサイルを搭載可能なタイプだと付け加えた。

米海軍退役中将のマイク・ルフィーバーは、5月の取材時に、本誌に対して以下のように語っていた。「われわれは、ロシア海軍は規模が大きく強力だと考えている。そんな中で、本格的な海軍を持たないウクライナが、無人船舶で大打撃を与えているのは、非常に大きな戦果だ」

しかし、ロシア海軍が今後も退却を余儀なくされた場合、浮遊機雷の使用に踏み切る可能性もあると、ルフィーバーは警告した。

「ロシアは責任という感覚を持っていないのではないかと私は憂慮している。過去にも、優位性を失ったロシア側が、この海域で浮遊機雷を使う可能性が浮上していた。黒海で危害を加え、混乱をもたらすために、非対称的なアプローチをとる恐れがある」と、ルフィーバーは指摘した。

(翻訳:ガリレオ)

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