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規制論はどこへ...「反TIkTokの2人」も夢中で投稿 米大統領選は史上初の「TikTok選挙」に?

ニューズウィーク日本版 2024年6月25日 14時32分

キャサリン・ファン
<米議会では、民主党も共和党も「中国政府の息がかかっている」としてTikTokを批判。しかし、バイデンもトランプも今年に入ってアカウントを作成。Z世代の票を獲得すべく動画投稿をせっせと続けている>

中国発のソーシャルメディアとして疑惑の目を向けられながらも、若者を中心に圧倒的な人気を誇るTikTok(ティックトック)が、今年11月の米大統領選に大きな影響を与える可能性が出てきた。

米議会では民主党も共和党も、TikTokには中国政府の息がかかっており、アメリカの安全保障を脅かす恐れがあると批判している。だが両党の事実上の大統領候補はどちらも、有権者とりわけ若者にリーチするため、選挙活動にTikTokを積極的に利用するつもりだ。

再選を狙う民主党のジョー・バイデン大統領は4月、TikTokの親会社であるバイトダンス(北京字節跳動科技)が、2025年1月までにTikTokのアメリカ事業を売却しなければ配信を禁止する法案に署名した。

共和党の大統領候補となることがほぼ確実視されているドナルド・トランプ前大統領も、在任中にTikTokを禁止しようとしたことがある。だが、トランプ陣営は6月1日にTikTokのアカウントを開設。フォロワーは既に640万人を超える。

ちなみに4月に厳しい法案に署名したバイデンも、実は2月にTikTokのアカウントを開設している。

「良くも悪くも、24年大統領選はTikTok選挙になるだろう」と、戦略的コミュニケーション企業PRCGのジェームズ・ハガティ社長兼CEOは語る。「25年になれば(4月に成立した法律によって)使用禁止になるかもしれないが、年内は健在だ」

有権者の2割はZ世代

バイデン陣営もトランプ陣営も、若者にメッセージを届けるためにはTikTokが不可欠だという結論に達したのだろうと、政治コンサルタントのジェイ・タウンゼンドは語る。

「(バイデンもトランプも)若者にアピールしようと必死だ。とりわけ(トランプが大統領選に勝利した)16年以降に成人した層を取り込もうとしている」と、タウンゼンドは語る。「この世代は上の世代と比べて支持政党や候補が固まっておらず、どちらに転ぶか分からない」

タウンゼンドはまた、「政治の世界では、有権者がいる場所に(候補者が)出向くことが鉄則だ」と語る。そして若者がいる場所がTikTokだというわけだ。

今年3月21日の時点で、アメリカにおけるTikTokのアクティブユーザーは1億5000万人を超えた。ただ、1月のピュー・リサーチセンターの調査では、18~29歳の62%がTikTokを使っているのに対して、65歳以上ではわずか10%にとどまる。

一方、タフツ大学の市民の学習と社会参画に関する情報研究センター(CIRCLE)によると、Z世代(現在15~29歳)の潜在有権者は4000万人を超える。全有権者の約20%を占める計算だ。

昨年10月末の調査では、18~34歳の57%が、選挙に行く「可能性が極めて高い」と答えたが、なんらかの政党または候補者の主張を聞いた人は19%しかいなかった。

CIRCLEの調査では、若者の51%は民主党候補を支持する可能性が高く、共和党候補を支持しそうな若者は30%だった。ただ、最近の調査では、トランプ支持者が急増している可能性がある。

4月に発表されたハーバード・ユース調査では、30歳未満の有権者で、バイデンの支持率は45%、トランプは37%と、その差は8ポイントしかなかった。

また、若い女性では33ポイントも差がつく一方で、若い男性ではわずか6ポイント差だった。一方、30歳未満の非白人有権者ではバイデンのリードは43ポイントだったが、同年齢の白人有権者では3ポイント差だった。

「トランプ陣営もバイデン陣営も、TikTokを有効活用して、選挙結果を左右する可能性がある若者票を取り込もうとしている」とハガティは言う。だが、「どちらもテレビが普及する前に生まれた候補だから、(若者とのギャップを埋めるのは)そんなに簡単ではないだろう」。

トランプにとっての爆弾

TikTokは、ヒスパニック系と女性という別の重要な有権者層でもよく使われている。

ピューの調査によると、ヒスパニックの成人の半数近くがTikTokを使用しているのに対して、黒人では39%、アジア系では29%、白人では28%にとどまる。また、女性では40%が使用しているのに対して、男性では25%だ。

ヒスパニックの有権者は、前回の20年大統領選挙以降に390万人増えた。一方、今回の選挙ではリプロダクティブライツ(性と生殖に関する権利)が重要な争点となっており、従来よりも多くの女性が選挙に行くとみられている。

だが、ジョージ・ワシントン大学メディア・公共政策大学院のデービッド・カーフ准教授は、TikTokブームは、「他のソーシャルメディアの人気低下の反動にすぎない」とみる。「TikTokは、X(旧ツイッター)がもたらした空白を埋めているだけだ」

だから、「トランプとバイデンがどのようにTikTokを使っても、最終的な選挙結果にさほど影響はないと思う」とカーフは語る。

それよりもカーフが注目するのは、トランプが不倫相手に支払った口止め料の処理をめぐる裁判で、有罪評決が下されたことだ。「トランプの量刑判決が下されるのは、今年の共和党全国大会の4日前だ」と、カーフは言う。

「前例のないことだ。その判決は、トランプの選挙対策チームがソーシャルメディアに投稿するどんな動画よりも(選挙に)大きな影響を与えるだろう」

@realdonaldtrump Launching my TikTok at @UFC ♬ original sound - President Donald J Trump トランプのTikTokアカウントから

@bidenhq lol hey guys ♬ Fox nfl theme - Notrandompostsguy バイデンのTikTokアカウントから


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