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ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオススメしません

ニューズウィーク日本版 2024年6月26日 18時35分

周来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)
<ここ2~3年、ブームになっている「ガチ中華」。店員に日本語も通じない「本場の中華料理」とのことだが、中国人にも、日本人にも、私は警鐘を鳴らしたい>

日本の「ガチ中華」ブームに違和感を覚えている。この言葉、2022年の新語・流行語大賞にノミネートされ、ここ2~3年で広く知られるようになった。

半ばチャイナタウン化している池袋には、そのガチ中華のフードコートが3つもある。「いつか食べてみたい!」「友人に連れて行ってもらい、ガチ中華デビューした」、そんな日本人も増えているようだ。

でも正直、いわゆるガチ中華を私はおすすめしない。

ガチ中華は、一般には「日本人の好みに合わせて作られたものではなく、中国人が実際に食べている本場の中華料理」を指すとされる。炒飯(チャーハン)や餃子(ギョーザ)、ラーメンなどが中心の「町中華」と対になる概念、なんて説明もある。

実際に行ったことのある人なら分かると思うが、メニューは中国語だけ、店員は日本語が通じない、という店も少なくない。そんな「ガチな(本気の)」雰囲気もまた、日本人を引き付ける理由の1つかもしれない。

中国4大料理、8大料理、10大料理、12大料理?

日本では通常、北京料理、上海料理、広東料理、四川料理が「中国4大料理」と呼ばれる。ただし、中国には8大料理、10大料理、12大料理といった分類の仕方もあり、つまり中国の料理は本来、それだけ多様で、それに伴う豊かな食文化があるのだ。

それに対し、ガチ中華は(私に言わせれば)辛い料理ばかり。食材に内臓を使うものも多く、豚の血やアヒルの血などと一緒に煮込む火鍋(写真は一例)はその代表格だ。

中国では10年ほど前にこの火鍋がブームになり、全国各地に火鍋のチェーン店が増殖。それから時を置かずして日本や他のアジア圏にも火鍋店が広がっていった。店は中国のローカルな雰囲気を感じさせる造りとなっているものの、内装は結構小じゃれていて、主なターゲットは若者だ。

日本でも若い中国人たちが池袋や高田馬場にあるガチ中華の店に行き、中国人の仲間と中国語で会話しながら、辛い火鍋に舌鼓を打っている。せっかく日本に留学したのだから、郷に入れば郷に従えで、もっと日本料理に挑戦すればいいのに──と思わずにいられない。

私も30年以上前に来日した当初は日本食が口に合わなかったが、いろいろな料理に挑戦し、日本人の舌の繊細さに感動するまでになった。それとともに日本語も上達し、日本社会に溶け込めたのだ。

チェーン店は多様な食文化を破壊する

チェーン店は儲かるかもしれないが、多様な食文化を破壊する。そして火鍋チェーン店は、若い中国人が日本文化に触れるチャンスまでつぶしている。

日本にもチェーン店は多いが、素晴らしい料理を提供する小さなレストランも少なくない。何十年も夫婦だけで店を切り盛りしている町中華もその1つだ。日本のそんな食文化を経験しないなんてもったいなさすぎる。

一方、「本場の料理だ」とガチ中華をありがたがる日本人に対しても、私は警鐘を鳴らしたい。だって、辛ければ本場の味というわけではないし、激辛の食べすぎは体にもよくないですよ?

どうせ中華を食べるなら、北京ダックや広東の飲茶、四川の麻婆豆腐といった、中国各地の特色ある一品を味わってもらいたい。上海蟹(がに)が有名な上海料理は、全般的に味付けがあっさりしていて日本人の口にも合うと思う。

世界一の美食都市である東京には、腕のいい料理人が厨房に立つ本格中華の店がたくさんある。それこそ中国人も認める「本物のガチ中華」だが、日本語が通じないなんてこともない。日本の皆さん、こっちの中華で「ガチ」を感じてみませんか。

そんなことを書いていたらおなかが鳴ってしまった。ここらで筆をおき「本物のガチ中華」を食べに行ってきます。

巣鴨の「大吉縁」、神宮前の「東坡」、銀座の「四季陸氏厨房」、新宿の「礼華」......。さてさて、今夜はどこで腹を満たそうか。

周 来友
ZHOU LAIYOU
1963年中国浙江省生まれ。87年に来日し、日本で大学院を修了。通訳、翻訳、コーディネーターの派遣会社を経営する傍ら、ジャーナリスト、タレントとしても活動している。

......というわけで、ほんの一例だが、私がオススメしたい「本物のガチ中華」を紹介しよう。
(写真はすべて巣鴨の上海料理店「大吉縁」にて撮影)

Newsweek Japan

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