フリン・ニコルズ
<トランプ再選を前提に大統領権限の拡大と官僚大量解雇の政権運営構想「プロジェクト2025」を作成したヘリテージ財団が、オルバン首相に「トランプ主義を制度化」するための教えを乞うている?>
米保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のケビン・ロバーツ会長が、ハンガリーの保守派首相オルバン・ビクトルの強権的支配を取り入れて、「トランプ主義の制度化」に役立てようとしている、という批判が大きくなっている。
【動画】プロジェクト2025のブレーンたちと、トランプの言い分
ロバーツは、7月1日に大統領の幅広い免責特権を認めた米連邦最高裁の判断を称賛して大きな注目を集めた。彼は同判断を受けて、アメリカは今や「エリート」や「専制的な官僚」に対抗する「第二次独立戦争」の只中にいる、と述べた。
ヘリテージ財団は、2024年の米大統領選挙で共和党候補が勝利した場合の政権運営構想「プロジェクト2025」を作成した。トランプ再選を前提に大統領権限を拡大し、「ディープステート(闇の政府)」に操られている連邦政府の官僚を大量解雇する──トランプ自身も選挙公約に謳い、多くの保守派も続々と支持を表明した考えだ。
リベラル派の専門家の間ではロバーツに対する批判の声が高まっている。米ボストン・カレッジのヘザー・コックス・リチャードソン教授(歴史学)は、コンテンツ配信プラットフォーム「サブスタック」上で公開しているブログ「レターズ・フロム・アン・アメリカン」の中で、ロバーツはオルバン政権と緊密に連携していると主張した。
オルバンはハンガリーの強権的な指導者であり、NATOおよびEU内でロシアのウラジーミル・プーチン大統領と最も親密な関係にあることで知られている。
オルバンはトランプそっくり
オルバンは、西側の民主主義の概念を覆して「非自由主義的な民主主義」あるいは「キリスト教民主主義」と称するものに置き換えることを公然と表明していると、リチャードソンは説明する。一方ロバーツは、国連やNATOなどの国際機関から距離を置くために連邦政府の大部分を分権化または民営化して「トランプ主義を制度化」することを目指しており、以下のようにオルバンの政策と通じるところがあると指摘した。
オルバンは反移民を掲げるEU懐疑派で、ロシア寄りの姿勢で知られる。ドナルド・トランプ前米大統領が選挙キャンペーンの中でナチスを想起させる動画で批判を浴びたのと同様に彼もまた、ハンガリー出身のユダヤ系富豪であるジョージ・ソロスについて「世界の左派を操る黒幕」だと主張している。
オルバン率いる政党「フィデス・ハンガリー市民連盟」は2022年の議会選挙で、ハンガリー、EUとNATOはロシアとウクライナの戦争に関与すべきではないという政策を掲げて圧勝し、オルバンは4期目の首相の座に就いた。
オルバンはある意味「トランプ主義」の先輩だ。外部有識者によれば、2022年にハンガリーで実施された議会選挙は「不公正な環境のせいで台無しにされた」。各種政府機関とオルバン率いる与党が癒着し、メディアの所有構造や投票制度も与党に有利だったという。そのために6月には、オルバンの政策や反体制派の抑圧に対する数万人規模の抗議デモが展開された。
ヘリテージ財団は長年、オルバンに敬意を表してきた。ロバーツは2022年にハンガリアン・コンサーバティブ誌とのインタビューの中で、「現代のハンガリーは保守政治の単なる一例ではなく模範だ」と称賛。ヘリテージ財団は2023年にロバーツの下、オルバン政権の資金提供を受けている保守派シンクタンク「ドナウ研究所」と正式に提携した。
本誌はロバーツにメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。
リチャードソンはブログの中で、「ヘリテージ財団とオルバンの緊密な協力関係は、トランプまたはトランプに似た人物が仕切る新たな類の政府の青写真であるプロジェクト2025の特徴をよく表している」と主張した。
「ロバーツが言う『第二次アメリカ革命』は、オルバンのような三流の独裁者の影響を受けてアメリカの民主主義を破壊し、私たちの国を権威主義的な指導者たちに屈服させるもので、最初の独立戦争と違って愛国とは正反対に見える」
【動画】プロジェクト2025のブレーンたちと、トランプの言い分
<トランプ再選を前提に大統領権限の拡大と官僚大量解雇の政権運営構想「プロジェクト2025」を作成したヘリテージ財団が、オルバン首相に「トランプ主義を制度化」するための教えを乞うている?>
米保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のケビン・ロバーツ会長が、ハンガリーの保守派首相オルバン・ビクトルの強権的支配を取り入れて、「トランプ主義の制度化」に役立てようとしている、という批判が大きくなっている。
【動画】プロジェクト2025のブレーンたちと、トランプの言い分
ロバーツは、7月1日に大統領の幅広い免責特権を認めた米連邦最高裁の判断を称賛して大きな注目を集めた。彼は同判断を受けて、アメリカは今や「エリート」や「専制的な官僚」に対抗する「第二次独立戦争」の只中にいる、と述べた。
ヘリテージ財団は、2024年の米大統領選挙で共和党候補が勝利した場合の政権運営構想「プロジェクト2025」を作成した。トランプ再選を前提に大統領権限を拡大し、「ディープステート(闇の政府)」に操られている連邦政府の官僚を大量解雇する──トランプ自身も選挙公約に謳い、多くの保守派も続々と支持を表明した考えだ。
リベラル派の専門家の間ではロバーツに対する批判の声が高まっている。米ボストン・カレッジのヘザー・コックス・リチャードソン教授(歴史学)は、コンテンツ配信プラットフォーム「サブスタック」上で公開しているブログ「レターズ・フロム・アン・アメリカン」の中で、ロバーツはオルバン政権と緊密に連携していると主張した。
オルバンはハンガリーの強権的な指導者であり、NATOおよびEU内でロシアのウラジーミル・プーチン大統領と最も親密な関係にあることで知られている。
オルバンはトランプそっくり
オルバンは、西側の民主主義の概念を覆して「非自由主義的な民主主義」あるいは「キリスト教民主主義」と称するものに置き換えることを公然と表明していると、リチャードソンは説明する。一方ロバーツは、国連やNATOなどの国際機関から距離を置くために連邦政府の大部分を分権化または民営化して「トランプ主義を制度化」することを目指しており、以下のようにオルバンの政策と通じるところがあると指摘した。
オルバンは反移民を掲げるEU懐疑派で、ロシア寄りの姿勢で知られる。ドナルド・トランプ前米大統領が選挙キャンペーンの中でナチスを想起させる動画で批判を浴びたのと同様に彼もまた、ハンガリー出身のユダヤ系富豪であるジョージ・ソロスについて「世界の左派を操る黒幕」だと主張している。
オルバン率いる政党「フィデス・ハンガリー市民連盟」は2022年の議会選挙で、ハンガリー、EUとNATOはロシアとウクライナの戦争に関与すべきではないという政策を掲げて圧勝し、オルバンは4期目の首相の座に就いた。
オルバンはある意味「トランプ主義」の先輩だ。外部有識者によれば、2022年にハンガリーで実施された議会選挙は「不公正な環境のせいで台無しにされた」。各種政府機関とオルバン率いる与党が癒着し、メディアの所有構造や投票制度も与党に有利だったという。そのために6月には、オルバンの政策や反体制派の抑圧に対する数万人規模の抗議デモが展開された。
ヘリテージ財団は長年、オルバンに敬意を表してきた。ロバーツは2022年にハンガリアン・コンサーバティブ誌とのインタビューの中で、「現代のハンガリーは保守政治の単なる一例ではなく模範だ」と称賛。ヘリテージ財団は2023年にロバーツの下、オルバン政権の資金提供を受けている保守派シンクタンク「ドナウ研究所」と正式に提携した。
本誌はロバーツにメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。
リチャードソンはブログの中で、「ヘリテージ財団とオルバンの緊密な協力関係は、トランプまたはトランプに似た人物が仕切る新たな類の政府の青写真であるプロジェクト2025の特徴をよく表している」と主張した。
「ロバーツが言う『第二次アメリカ革命』は、オルバンのような三流の独裁者の影響を受けてアメリカの民主主義を破壊し、私たちの国を権威主義的な指導者たちに屈服させるもので、最初の独立戦争と違って愛国とは正反対に見える」
【動画】プロジェクト2025のブレーンたちと、トランプの言い分