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カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5つの理由

ニューズウィーク日本版 2024年7月23日 16時27分

ハレダ・ラーマン
<バイデンが撤退したとたん、選挙戦はトランプに圧倒的に有利な状況から一転、カマラ・ハリス有利の空気になりつつある。バイデンの影で目立たなかったハリスは意外にも、トランプの弱点をえぐることができる対立候補かもしれない>

ジョー・バイデン米大統領が秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦からの撤退を決めたことを受けて、カマラ・ハリス副大統領が民主党の候補指名を獲得することが有力視されている。

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バイデンは7月21日に選挙戦からの撤退を発表した後、ソーシャルメディアへの投稿で後任候補としてハリスを支持し、民主党支持者らに対して「力を合わせてトランプを打ち負かす時だ」と呼びかけた。



2024年の米大統領選はこれまで2人の白人高齢男性の争いだったが、バイデンが撤退したことで、78歳のトランプは自分よりもずっと若い59歳のハリスと対決することになる可能性が高い。ハリスが民主党の候補指名を獲得すれば、有色人種の女性として初めて主要政党の大統領候補となる。

そしてハリスはトランプにとって手ごわい対戦相手となるだろう。その理由をいくつか挙げる。

バイデン撤退と同時に資金が流入

ハリスは民主党の候補者として唯一、バイデンの選挙資金を引き継ぐことができる人物だ。バイデン陣営は既に連邦選挙委員会に対して、ハリスが民主党の指名獲得を確実にした場合、これまで集めた選挙資金を使えるようにする届け出を行っている。

米非営利団体「キャンペーン・リーガル・センター」の創設者兼代表であるトレバー・ポッターは声明で、「バイデンとハリスはもともと選挙対策委員会を共有しているため、ハリスが大統領候補または副大統領候補として民主党の指名を獲得すれば、彼女と彼女の副大統領候補は既存の資金を引き継ぐことができる」と述べた。

連邦選挙委員会の資料によれば、現時点ではトランプ陣営の方がバイデン陣営よりも多くの資金を調達している。ロイター通信は6月末時点でのバイデン陣営の手持ち資金は9500万ドル、対するトランプ陣営は1億2800万ドルだったと報じた。

だがバイデンが選挙戦を撤退してハリスを後継候補に支持したことを受け、民主党には支持者からの献金が次々と寄せられている。

民主党系の献金サイト「アクトブルー」は21日、2024年米大統領選に向けてこれまでで最も多くの献金が集まったと報告。ハリスが大統領候補として立候補の意思を表明したことを受け、少額の献金が相次いで寄せられ、一日で4700万ドル近くの献金が集まった。アクトブルーはX(旧ツイッター)への投稿で、「小口の献金者が大統領選に向けて勢いづいている」と述べた。

バイデンが退いたら最高齢

トランプはこれまで、バイデンが高齢で大統領として適任ではないと繰り返し攻撃してきた。だがハリスのように若い候補者がバイデンに代わって民主党の候補指名を獲得すれば、トランプは米史上最高齢の大統領候補になる。

世論調査では、多くのアメリカ人がトランプは大統領として2期目を務めるには高齢すぎると考えているという結果が示されている。



トランプの支持層は大衆、ハリスはエリート

ハリスの立候補は、2024年の大統領選に勝利する上できわめて重要な(そしてバイデンが支持を失いつつあった)若い有権者の熱狂に火をつける可能性がある。

米シラキュース大学のグラント・リーハー教授(政治科学)は本誌に対して、「ハリスは大統領選に向けた民主党支持者のエネルギーや熱狂を呼び起こすことができる可能性が高い」と述べた。「バイデンの後継候補になる意思を表明してすぐに献金が舞い込んでいるのは、彼女にとっていい兆候だ」

もっとも、英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのトーマス・ギフト准教授(政治科学)のように、民主党支持者は「カマラ・ハリスが民衆によって選ばれた大統領候補だと急いで自分たちを納得させようとしているように見える」とする指摘もある。

ハリスは2019年に(翌2020年の)大統領選への立候補を表明したが、最初に民主党の「予備選から姿を消した」と、ギフトは述べ、さらに続けた。

「(副大統領に就任してから)3年半の大半の期間、ハリスの支持率はよくてもバイデンに並ぶ程度だった。ハリスの真の問題は、彼女の支持が民主党のエリート層によって支えられているトップダウン型であるのに対し、トランプの支持が共和党の一般有権者によって支えられているボトムアップ型であることだ」

有罪のトランプ、検察官のハリス

ハリスが民主党の候補指名を確実にすれば、黒人で南アジア系の女性として初めて主要政党の大統領候補になるという歴史的快挙を達成することになる。彼女は「歴史的に重要な意味を持つ候補者だ」とリーハーは言う。

だがトランプと対決するにあたって彼女が強調するのは、州司法長官としての経歴だろう。トランプは5月にニューヨーク州の裁判所で、不倫の口止め料をめぐる刑事裁判で有罪評決を受けている(量刑の言い渡しは9月)。

「とにかく問題を細かく分解していくのが検察官のやり方だ」とハリスは4月に米CNNに述べた。「なぜ自分たちがこの結論に達したのかを正確に示す経験的な証拠を提示し、相手にそれを思い出させる。トランプもそれから逃げることはできない」

大問題の人工妊娠中絶

民主党は女性の中絶の権利を大統領選における一番の争点にしようとしている。今回の大統領選は(人工妊娠中絶を憲法上の権利として認めた)ロー対ウェード判決が覆されて以降初めての大統領選挙で、女性であるハリスはトランプを攻撃する準備を十分に整えている。

ロー対ウェード判決を覆した連邦最高裁は保守派が過半数を占め、このうち3人はトランプが指名した判事であることから、トランプは自分がこの判決の立役者だと主張。だが再び大統領になった場合に、妊娠中絶の規制を全米一律にすることまでは支持しておらず、判断は各州に委ねるべきだとの考えを示している。



ハリスは中絶の権利についてとりわけ積極的に発言を行ってきた。6月には、今秋の大統領選には性と生殖の健康に関する権利の「全てがかかっている」と述べていた。

米ミネソタ大学のポール・ゴレン教授(政治科学)は以前本誌に対して、中絶の問題は民主党にとって有利な問題であり、彼らは「トランプを守勢に立たせるために頻繁にこの問題を取り上げるだろう」と指摘していた。



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