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ニュースのせいで鬱になる...「ドゥームスクローリング」の危険性と「やめる方法」

ニューズウィーク日本版 2024年7月31日 21時30分

ナビット・シェクター(認知行動療法セラピスト)
<中東情勢を夜に何時間もチェックしていた母親は...。メンタルヘルス専門家が説く弊害と効果的な対策>

時事関連の暗い情報をオンラインで過剰にチェックしてしまう──。このドゥームスクローリングと呼ばれる行動をする人は、ニュースを読んだり視聴したり、ソーシャルメディアの動画や投稿を見ることに何時間も費やしがちだ。

この数年、世界は悲劇的な事件や話題であふれ、多くの人が不確実性や不安を感じている。ドゥームスクローリングをすれば、悪いニュースに常時接続状態だ。もっと情報を得たい、状況をしっかり理解していると思いたいという気持ちのせいで、ニュースを追い続けずにいられない。

筆者は、幼児3人の母親である女性のセラピーを担当したことがある。彼女は中東問題の詳細を把握していなければならないと思い、子供たちが寝付いた後、何時間も最新ニュースをチェックしていた。

それが良心的で思いやりのある人間の務めだと考えていたが、1日のうちで唯一、自由になる時間をドゥームスクローリングに費やした結果、落ち込んで不安になった。そればかりか、頭を切り替えることも眠ることもできなくなり、必然的に子供たちも悪影響を受ける事態になった。

時事コンテンツの過剰消費で不安に悩む人が多いと、本稿の筆者である認知行動療法セラピストのナビット・シェクターは言う NAVIT SCHECHTER

これは例外的なケースではない。暗い内容の時事コンテンツを過剰に消費したために、集中力や自己肯定感が低下したり、疲労を感じたり、不安や鬱に悩んでいると訴えるクライアントは大勢いる。

ニュースやソーシャルメディアを見ることで、不安や緊張感、絶望感や無力感にさいなまれているなら、それに時間を使いすぎて弊害を受けている可能性がある。世界各地の出来事を把握し続けたいという欲求が、自身の感情やメンタルヘルスへの気配りを上回るようなときも、ドゥームスクローリングには気を付けたほうがいい。

「デトックス」が必要だ

自分の心をよりよくいたわるために、できることは何か。まず、外の世界で起きていることを全て知る必要はない、という事実を忘れないこと。自分にはどうしようもない出来事が精神状態に影響を与えているなら、特にそうだ。

落ち込みや不安、ストレスに既に悩んでいる場合、ドゥームスクローリングは状況を悪化させるだけだろう。世界情勢への目線は、気分が改善したときに取り戻せばいい。

時事問題のチェックにどれほど時間を費やしているか、意識することも重要だ。ついスクロールを続けてしまうなら、タイマーを設定するのも1つの方法。スマホを使うときは、やろうとしていたことだけをやるようにしよう。

こうした対策を難しいと感じるなら、ニュースやソーシャルメディアのアプリを削除したり、Wi-Fiルーターの電源をオフにすべきだ。スマートフォンの利用限度を定める助けになる。

ドゥームスクローリングの悪循環を避けるには、テレビや携帯端末、コンピューターを完全に遠ざけるデジタルデトックスも格好の手段になる。

最大限の効果があるのは長期間のデトックスだが、簡単に実行できるとは限らない。1日に数時間でいい。スマホを置いて散歩をしたり友人に会ったり、読書をしてリラックスすれば、デジタル機器との関係により意識的になれる。

どんなに頑張ってもドゥームスクローリングの習慣を断ち切れず、メンタルヘルスや生活の質(QOL)が影響を受けているなら、医療のプロの力を借りてほしい。

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