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【SDGsホンネ座談会】学生が語る「エシカル消費のリアル」...ペットボトル・プラストローは「使う時もあります」

ニューズウィーク日本版 2024年7月31日 17時0分

写真:林 直幸 文:酒井理恵
「SDGs」「サステナブル」「エシカル」といった言葉が広く認知されるようになったが、依然として「一過性のブーム」と捉える人も少なくない。しかし、10代や20代の若者にとって、これらの概念はすでに身近なものとなっている。

現代の若者は、SDGsやエシカル消費についてどのような意識を持っているのだろうか? その「ホンネ」に迫るため、地球温暖化や気候変動の問題を研究する慶應義塾大学の蟹江憲史研究室の学生たちを中心に集め、座談会を開催した。

本記事では、学生たちがSDGsを知ったきっかけや、日常的なエシカル消費について語る(本記事は座談会前編)。

──SDGsに興味を持った理由と、どんな活動をしているのかを教えてください。

児玉英里さん(以下、児玉):SDGsという言葉を認知したのがいつかは覚えていませんが、興味を持ったきっかけは総合型選抜(旧AO入試)対策のために社会問題について調べ始めたことです。

特に化粧品の動物実験について知り、問題意識を持ち、高校3年生の時からアメリカを中心に広まっている「クリーンビューティー(人や環境に配慮した活動や商品、ブランドのこと)」という言葉を広める活動を開始しました。

大学でも化粧品とSDGsをテーマに研究しています。研究を進めるうちに、日本にはクリーンビューティーの商品があまり普及していないことがわかり、アイシャドウを製造・販売する会社「Rulie(ルリー)」を立ち上げ、それに関連する一般社団法人に理事として参画しました。

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環境問題に対する問題意識は、これからビジネスをする上で必須の視点になることを実感しています。

児玉英里さん(慶應義塾大学 総合政策学部3年)

鈴木日和子さん(以下、鈴木):私は中学2年生の社会科の授業で、先生からSDGsという言葉を聞いたのが最初の記憶です。

小さい頃、世界遺産に登録される前の小笠原諸島に住んでいた経験があるのですが、引っ越してしばらくしてから友人に会いに島へ帰ったとき、自然や生き物の変わり具合や放置されたごみを見て、地球環境への問題意識を持つようになりました。故郷だけでなく社会全体でも同じことが起きていると知り、SDGsが「自分ごと化」しました。

私は他の皆と違って通信教育課程で学んでいますが、通信を選んだ理由は平日の日中を自由に使えること。その時間を環境・社会問題に取り組むZ世代のプラットフォーム「NAMIMATI(なみまち)」の活動に充てています。

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他には、SDGs視点での評価審査基準をもとに化粧品を表彰する「サステナブルコスメアワード」の学生審査員を務めています。

鈴木日和子さん(慶應義塾大学 通信教育課程 経済学部3年)

藤田光耀さん(以下、藤田):僕は中学2年生の時、英語の教材でSDGsという言葉を知りました。SDGsをゼミで研究するきっかけになったのは、高校2年生の時、知り合いの紹介でスタートアップ企業が集まるイベントに登壇したこと。なぜ日本では若いリーダーが出にくいんだろうと一抹の不安を覚え、そこにSDGsというキーワードが繋がるんじゃないかと考えるようになりました。

今はニューズウィーク日本版の「SDGsアワード」プロジェクト(企業の優れたSDGs関連の取り組みを表彰。概要はこちら)を一緒にやらせていただいて、「学生部門賞」を新設するためにテストケースの調査や、学生に対するアンケート調査に関わっています。

藤田光燿さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)

宮沢桜太朗さん(以下、宮沢):小学校5年生までドイツのフランクフルトで暮らしていました。当時はまだSDGsという言葉は知りませんでしたが、環境への意識は日本よりずっと進んでいるというか、日常に溶け込んでいる感じがしましたね。僕は洋服が好きなので、サステナブルファッションブランドを作ることを最初の目標としていました。

大学1年生の時から「KEEPWEARING(キープウェアリング)」という、洗わなくてよいTシャツを作り、100人に販売して100日間着続ける、といった社会実験を行っています。

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そこから派生して、今ではファッションからライフスタイル全般に興味の幅が広がりました。大学では和田研究室(環境政策や環境システム分析が専門分野の和田直樹准教授のもと、暮らしとサステナビリティをテーマに、学内の衣食住に関わるプロジェクトを進めていく研究会)に所属していて、1から畑作りを行っています。

宮沢桜太朗さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)

──日常生活では、どのようなエシカル消費を実施していますか?

藤田:2つの選択で悩んだとすれば、「どちらのほうがより環境に配慮しているか」という視点は持っています。例えば、安くておいしいチョコレートとフェアトレードの認証を取っているチョコレートだと後者を選ぶ、とか。

鈴木:私も食べることがすごく好きで、どうせ食材や調味料を買うなら「心地よいもの」がいいなと思っています。だから、ちょっと値段は張るのですが、オーガニック製品が置いてあるスーパーによく行きます。普段見ないものもたくさんあって、自分の中では楽しみながらエシカル消費を行っていますね。

宮沢:ものを選ぶ際の視点ももちろん大事ですが、そもそも消費をしないことを心掛けています。例えばネットショップで欲しいものを注文カゴに入れた後、1カ月後も欲しかったら買うようにしていますね。

児玉:私も宮沢さんと同じで、大好きな化粧品を家族や友達とシェアして使うことで、買う量を抑えています。ただ、自分の中で我慢することはサステナブルじゃないなって思うので、どうしても欲しいなと思ったら買いますよ。

鈴木:私もいわゆる「ファストファッション」と言われるものを買ったり、ペットボトルやプラスチックのストローを使ったりする時があります。ただ、そういう時に意識するのは、自分が使ったその先で何が起っているかということ。きちんとリサイクルボックスに入れられるのならいいですが、そうでなかったら家に持って帰って分別する。資源が循環されるように使いたいなとは思っています。

宮沢:過度な我慢や制限をする必要はないけど、ここから先は自分の中で心地よくない......みたいな、「バランス感」は重要だよね。

──SDGsの観点から、注目している商品やブランドはありますか?

宮沢:「ファッション・スワップ」といって、無料の洋服交換会が最近増えているので、よく足を運んでいます。

会社でいうと、注目しているのはアメリカ発のスニーカーブランド「Allbirds(オールバーズ)」。従来の靴に多く使用されていたプラスチックを天然素材に置き換え、メリノウールやユーカリ、カニの殻などを使ったシューズなどを製造販売しています。

ユーカリ由来のメッシュ素材を使用した「Allbirds」の新作スニーカー「Tree Runner Go(ツリーランナーゴー)」 ©Allbirds

藤田:僕はサッカーが好きで、年間で10回ほど観戦に行きます。観戦中はどうしてもペットボトルの消費が多くなってしまいますが、 僕が好きなFC東京というチームは、スタジアムで出たペットボトルのゴミの一部をユニホームにリサイクルしています。 ファンや選手が見える状態でリサイクルを行う取り組みが印象的でした。

児玉:化粧品でおすすめなのは、「7NaNatural(ナナチュラル)」と「SHIINA organic(シイナオーガニック)」。7NaNaturalは、使用済みの容器を回収・リサイクルして新たな資源へと生まれ変わらせることを前提に製品を開発しています。自然由来100%の商品をオンラインショップで購入した後、同封されている封筒でパッケージを入れて返送できるのが面白いなと思っています。

「7NaNaturalのヴィーガン仕様カラースティック ©メディアジーン

SHIINA organicは環境活動家が立ち上げたブランドで、オーガニックコスメの世界基準であるコスモス認証(エコサート)を取得した口紅を作っています。

■中編は近日公開予定

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