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【SDGsホンネ座談会】「サステナビリティレポートはこんな風に読んでいます」...採用担当が知るべき「就活生注目のポイント」

ニューズウィーク日本版 2024年8月1日 17時0分

写真:林 直幸 文:酒井理恵
最近の就活生はSDGsを判断材料の1つにしているとも言われるが、実際のところ、どうなのか? 10代や20代の若者にとって、「SDGs」「サステナブル」「エシカル」といった概念はすでに身近なものとなっている。

若者たちの「ホンネ」に迫るため、地球温暖化や気候変動の問題を研究する慶應義塾大学の蟹江憲史研究室の学生たちを中心に集め、座談会を開催した(本記事は座談会中編)。

──皆さんは大学3、4年生なので真剣に進路を考える時期だと思いますが、企業がどの程度SDGsに取り組んでいるかは、就職先として候補に上げる判断材料になるのでしょうか?

鈴木日和子さん(以下、鈴木):まだ本格的な就職活動はしていませんが、やはりサステナビリティは重視していますね。私は、学外で環境・社会問題に取り組むZ世代のプラットフォーム「NAMIMATI(なみまち)」の学生代表として活動していて、その中でいろんな企業の方と関わる機会が多いです。

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SDGsに対して向上心を持って取り組まれている社員の方と話すと、「私もこういう風に働けたらいいな」と感じます。サステナビリティレポートのほか、企業理念もよく見ますね。私にとって、「人の思い」が就職先企業を選ぶ大きな要素なんだろうなと分析しています。

鈴木日和子さん(慶應義塾大学 通信教育課程 経済学部3年)

児玉英里さん(以下、児玉):私自身がサステナブルなコスメの製造・販売をする企業「Rulie(ルリー)」を設立したので、経済合理性の追求も大事であると理解する一方で、サステナビリティの意識が全くない企業は選ばないだろうなと思いますね。

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サステナビリティレポートを見るのに加えて、現場の社員の方がどういった意識で取り組んでいるかを知ることが重要だと思っています。会社の方針として一応やる、という受け身的な姿勢なのか、ポジティブな姿勢で取り組んでいるのか...OG・OB訪問や人とのつながりを活用して、直接話を聞いたりしています。

児玉英里さん(慶應義塾大学 総合政策学部3年)

藤田光燿さん(以下、藤田):僕は「サステナビリティに関わる仕事をすること」を自分の軸として持っており、つい先日、就職活動を終えました。主に受けていたのは、サステナビリティの部署があるシンクタンク(政策立案・政策提言を行う研究機関)やメーカーです。総合職ではなく、サステナビリティの専門職にこだわりました。

サステナビリティレポートはもちろん読みますが、開示していない情報ももちろんあるわけで、本質的なことはわかりません。なので、面接の最後で「何か質問はありますか?」と聞かれる時間をフルに活用しました。その部署の方が出てきてくれる、またとない機会なので、質問しない手はないと思います。

藤田光燿さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)

宮沢桜太朗さん(以下、宮沢):僕もすでに就活を終えましたが、結局2社しか受けませんでした。僕は正直、ホームページを見ただけでは(SDGs関連の取り組みについて)深く理解できなかったので、インターンをすることにより長期的なスパンで決断したという感じです。実際に一緒に働いてみて、社員の方が本気でサステナビリティに取り組んでいることがわかったので、実践してよかったと思います。

宮沢桜太朗さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)

──採用活動をする企業に向けて、学生の立場からアドバイスなどはありますか?

藤田:サステナビリティレポートは一般投資家に向けて出している情報だと思うので、目的と手段は書いてあっても、その活動のプロセスが見えないとなかなか自分の中に落とし込みができない部分があります。どうしても我々が知り得る情報は表面的なものでしかないので、活動の概要が書いてあり、コアの部分にアプローチしていると「いい資料だ」と感じます。

また、サプライチェーンの問題しかり、企業は各社それぞれ経営課題を持っていると思いますが、それを無理矢理に社会課題と結びつけて発信するのはあまり好ましくないんじゃないかと個人的には思いますね。「SDGsに落とし込むこと」が目的になってしまっているように感じました。

──将来的な目標があれば教えてください。

児玉:化粧品のサステナビリティを追求していきたいです。特に自分で起業する中で、社会性と事業性の両立や、サステナビリティと機能性や価格のジレンマに難しさを感じています。今は小さな規模で深く知っていただくような活動に注力していますが、より大きなインパクトを起こせるような解決策を模索し続けていきたいです。

宮沢:僕は古着が好きで、ファッションブランドを立ち上げる夢をずっと持っています。その一環として、大学1年生の時から洗わなくてもよいTシャツを作って100人に販売、100日間着続けてもらう「KEEPWEARING(キープウェアリング)」という社会実験を行ってきました。

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ただ、この考えは日本ではあまり広まっておらず、自分1人の力では限界があるので、企業と組んで仕事を展開していきたいと思っています。来年からファッション関連の会社に就職が決まったので、目標はいつか社内起業すること。この夢は面接の時に会社にも話しており、受け入れてもらえました。就活の時は自分なりの軸を持って、正直に挑むことが大切だと思います。

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