写真:林 直幸 文:酒井理恵
例えば、親世代と比べ、あるいは同年代の友人と比べ、サステナビリティに対する自分の意識をどう捉えている? 「SDGs」「サステナブル」「エシカル」といった言葉が広く認知されるようになったが、依然として「一過性のブーム」と捉える人も少なくない。
これらの概念がすでに身近なものとなっている現代の若者たちの「ホンネ」に迫るため、地球温暖化や気候変動の問題を研究する慶應義塾大学の蟹江憲史研究室の学生たちを中心に集め、座談会を開催した(本記事は座談会後編)。
──親世代と話していて、SDGsに対する意識にギャップを感じることはありますか?
児玉英里さん(以下、児玉):親と話していると、サステナビリティの捉え方がかなり違うなとは感じます。私は自分がキャリアを築くために必要なものだと思っていますが、親の世代からすると利益追求が最優先で、「サステナビリティはプラスアルファでやるもの」という認識が強い。根本的に、価値観が違うんだなと感じます。
あとは、私の取り組みに対して、「意識が高いね」「行動力すごいね」「自分が大学生の時には」と言われることは多いですね。
児玉英里さん(慶應義塾大学 総合政策学部3年)
鈴木日和子さん(以下、鈴木):自分たちはSDGsを「当たり前」だと捉えている世代です。上の世代だと「ただの流行」だと捉えている方もいますが、私たち世代は「自分ごと化」している人が多い印象です。だから、「意識が高い」「行動している」という自覚はあまりありません。
鈴木日和子さん(慶應義塾大学 通信教育課程 経済学部3年)
藤田光燿さん(以下、藤田):時代がやはり違うので、子どもの頃からスマートフォンを持っていれば情報へのアクセスのハードルが下がりますよね。そこでSDGsの認知がより広がっていると思いますし、僕たちの世代と今の小学生とでも、価値観がまた変わってくると思いますよ。
藤田光燿さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)
宮沢:僕は皆と違って、そこまでギャップを感じていませんね。親世代も興味のある人、興味のない人、それぞれなので。
僕のインターン先では「世代論」を調査していて、行動に移しているのは意外と上の世代だというデータもありました。例えば気候変動の側面から考えると、僕たちは生まれた時から暑くて当たり前でしたが、きっと親からしたらかなりの変動を身をもって感じているはず。
その点で言えば、親世代のほうがより危機感を感じているんじゃないかな。あと、今の小学生は学校でSDGsを学ぶので、子どもがそれを家庭内で話せば、親や祖父母にも知識が広まり、世代間ギャップが埋まっていくんじゃないかなと思います。
宮沢桜太朗さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)
──周りの友人との間でギャップを感じることはありますか?
児玉:あまりないですね。本当に厳密に言ったらサステナブルじゃない行動をしている人はいるかもしれませんが、「サステナブル? なにそれ」といった反応は聞いたことがありません。私がそういったことに関心が高いことを皆は知っているので、気を遣われているのかもしれませんが...
藤田:自分たちみたいに(SDGsへの関心が高い)コミュニティにどっぷりと浸かっていると、いわゆる「意識高い系」だらけですし、慶応義塾大学もおそらく世間的に見ればたぶんそういう人の割合は多いと思います。
宮沢:周りはやっぱりSDGsに関心の高い人が多いので、Instagramのストーリーを見ているだけでも自然に情報が入ってきますね。
藤田:ただ、中学校の同級生と話す際は、誰とでもSDGsの話題が出るわけではありません。やはり所属しているコミュニティによるのではないでしょうか。
──今、サステナビリティを意識してない人たちに対して、皆さんの力で何かを変えたいという思いはありますか?
鈴木:ありますね。所属するコミュニティ(環境・社会問題に取り組むZ世代のプラットフォーム「NAMIMATI(なみまち)」)の活動で街やビーチのゴミ拾いをしていると、「何してるの?」とよく声を掛けられます。
この投稿をInstagramで見る なみまち NAMIMATI(@namimati134)がシェアした投稿
興味を持つことが最初のアクションなので、質問をされると「ひとつ輪が広がったかも」と嬉しく思います。逆に、私たちがゴミを拾っている目の前でポイ捨てをする人もいます。まだそういう世の中であることを自覚しますし、その人に対して何か興味を持つきっかけを少しでも与えられたら、なんて思うことも多いです。
宮沢:両親と妹と暮らしていますが、父はあまりサステナビリティに興味がありませんでした。そこで、「ミートフリーマンデー」を提案して、時々家族で実践しています。
ミートフリーマンデーとは、元ビートルズのポール・マッカートニー氏が提唱した、週1日、月曜日だけ肉を食べないという活動です。「体にいいかもよ」と別のメリットを提示したら、案外乗り気になってくれました。そういう風に、小さなことから周りの人を巻き込んでいくことが大事なんだと思います。
児玉:普段買うものから社会に貢献できたらいいなと皆が思っているものの、値段やデザインを理由にあまり選ばないことは多いと思います。
私が肌や環境、社会に優しい「クリーンビューティー」をコンセプトに起業したのも、自分が持っていて嬉しくなるような、クリーンさと可愛さを両立した化粧品を作りたいと思ったのがきっかけです。実際にまだ行動を起こせていない人たちに届けていきたいですね。
藤田:僕が来年入社する大手食品メーカーは、開示情報ごとに担当部署があります。BtoB向け、機関投資家向けの開示は発展しているのですが、消費者向けのサステナビリティ情報となると、目当ての情報に辿り着くまでのハードルの高さを課題に感じています。
食品を中心にさまざまな事業を展開しているので、来年からは僕も消費者との接点を増やす作業に貢献したい。社会の一員として、「サステナブルの輪」を広げていくことが目標です。
■前編はこちら
■中編はこちら
例えば、親世代と比べ、あるいは同年代の友人と比べ、サステナビリティに対する自分の意識をどう捉えている? 「SDGs」「サステナブル」「エシカル」といった言葉が広く認知されるようになったが、依然として「一過性のブーム」と捉える人も少なくない。
これらの概念がすでに身近なものとなっている現代の若者たちの「ホンネ」に迫るため、地球温暖化や気候変動の問題を研究する慶應義塾大学の蟹江憲史研究室の学生たちを中心に集め、座談会を開催した(本記事は座談会後編)。
──親世代と話していて、SDGsに対する意識にギャップを感じることはありますか?
児玉英里さん(以下、児玉):親と話していると、サステナビリティの捉え方がかなり違うなとは感じます。私は自分がキャリアを築くために必要なものだと思っていますが、親の世代からすると利益追求が最優先で、「サステナビリティはプラスアルファでやるもの」という認識が強い。根本的に、価値観が違うんだなと感じます。
あとは、私の取り組みに対して、「意識が高いね」「行動力すごいね」「自分が大学生の時には」と言われることは多いですね。
児玉英里さん(慶應義塾大学 総合政策学部3年)
鈴木日和子さん(以下、鈴木):自分たちはSDGsを「当たり前」だと捉えている世代です。上の世代だと「ただの流行」だと捉えている方もいますが、私たち世代は「自分ごと化」している人が多い印象です。だから、「意識が高い」「行動している」という自覚はあまりありません。
鈴木日和子さん(慶應義塾大学 通信教育課程 経済学部3年)
藤田光燿さん(以下、藤田):時代がやはり違うので、子どもの頃からスマートフォンを持っていれば情報へのアクセスのハードルが下がりますよね。そこでSDGsの認知がより広がっていると思いますし、僕たちの世代と今の小学生とでも、価値観がまた変わってくると思いますよ。
藤田光燿さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)
宮沢:僕は皆と違って、そこまでギャップを感じていませんね。親世代も興味のある人、興味のない人、それぞれなので。
僕のインターン先では「世代論」を調査していて、行動に移しているのは意外と上の世代だというデータもありました。例えば気候変動の側面から考えると、僕たちは生まれた時から暑くて当たり前でしたが、きっと親からしたらかなりの変動を身をもって感じているはず。
その点で言えば、親世代のほうがより危機感を感じているんじゃないかな。あと、今の小学生は学校でSDGsを学ぶので、子どもがそれを家庭内で話せば、親や祖父母にも知識が広まり、世代間ギャップが埋まっていくんじゃないかなと思います。
宮沢桜太朗さん(慶應義塾大学 環境情報学部4年)
──周りの友人との間でギャップを感じることはありますか?
児玉:あまりないですね。本当に厳密に言ったらサステナブルじゃない行動をしている人はいるかもしれませんが、「サステナブル? なにそれ」といった反応は聞いたことがありません。私がそういったことに関心が高いことを皆は知っているので、気を遣われているのかもしれませんが...
藤田:自分たちみたいに(SDGsへの関心が高い)コミュニティにどっぷりと浸かっていると、いわゆる「意識高い系」だらけですし、慶応義塾大学もおそらく世間的に見ればたぶんそういう人の割合は多いと思います。
宮沢:周りはやっぱりSDGsに関心の高い人が多いので、Instagramのストーリーを見ているだけでも自然に情報が入ってきますね。
藤田:ただ、中学校の同級生と話す際は、誰とでもSDGsの話題が出るわけではありません。やはり所属しているコミュニティによるのではないでしょうか。
──今、サステナビリティを意識してない人たちに対して、皆さんの力で何かを変えたいという思いはありますか?
鈴木:ありますね。所属するコミュニティ(環境・社会問題に取り組むZ世代のプラットフォーム「NAMIMATI(なみまち)」)の活動で街やビーチのゴミ拾いをしていると、「何してるの?」とよく声を掛けられます。
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興味を持つことが最初のアクションなので、質問をされると「ひとつ輪が広がったかも」と嬉しく思います。逆に、私たちがゴミを拾っている目の前でポイ捨てをする人もいます。まだそういう世の中であることを自覚しますし、その人に対して何か興味を持つきっかけを少しでも与えられたら、なんて思うことも多いです。
宮沢:両親と妹と暮らしていますが、父はあまりサステナビリティに興味がありませんでした。そこで、「ミートフリーマンデー」を提案して、時々家族で実践しています。
ミートフリーマンデーとは、元ビートルズのポール・マッカートニー氏が提唱した、週1日、月曜日だけ肉を食べないという活動です。「体にいいかもよ」と別のメリットを提示したら、案外乗り気になってくれました。そういう風に、小さなことから周りの人を巻き込んでいくことが大事なんだと思います。
児玉:普段買うものから社会に貢献できたらいいなと皆が思っているものの、値段やデザインを理由にあまり選ばないことは多いと思います。
私が肌や環境、社会に優しい「クリーンビューティー」をコンセプトに起業したのも、自分が持っていて嬉しくなるような、クリーンさと可愛さを両立した化粧品を作りたいと思ったのがきっかけです。実際にまだ行動を起こせていない人たちに届けていきたいですね。
藤田:僕が来年入社する大手食品メーカーは、開示情報ごとに担当部署があります。BtoB向け、機関投資家向けの開示は発展しているのですが、消費者向けのサステナビリティ情報となると、目当ての情報に辿り着くまでのハードルの高さを課題に感じています。
食品を中心にさまざまな事業を展開しているので、来年からは僕も消費者との接点を増やす作業に貢献したい。社会の一員として、「サステナブルの輪」を広げていくことが目標です。
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