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英語学習の足を引っ張る2つの勘違い...「ネイティブ信仰」と「丸暗記」から抜け出すには

ニューズウィーク日本版 2024年8月26日 13時52分

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<「英語を話せるようになりたい」と思っているものの、なかなか身につかないという人は多い>

その理由として、チャンネル登録者数50万人を抱える英語系YouTuberのSakura Englishは、アメリカンイングリッシュこそが正しい英語だという「ネイティブ信仰」や「フレーズの丸暗記」があるかもしれないと指摘する。

27歳のときに半年間サンフランシスコでホームステイするも、語学学校に馴染めず「引きこもり」に。

そこから「英語のひとりごと」やホストファミリーとの会話を通じて英会話を習得し、英語講師の道に進んだSakura Englishが、英語学習のノウハウをまとめた著書『[完全版]すごい英語独学』(かんき出版)から一部を抜粋・再構成して紹介する。

◇ ◇ ◇

「ネイティブ」って誰のこと?

私が運営しているYouTubeチャンネル「Sakura English」の動画のコメント欄には、毎日たくさんの視聴者からの書き込みがあります。動画の感想だけでなく、それぞれの動画の活用法などを知ることができたり、視聴者同士の交流があったりと、実に多くの人が気軽に書き込んでいます。

そんな中、ときどきこのようなコメントが届きます。
「○○という言い方は、ネイティブが違うと言ってました」
「アメリカに住んでましたが、○○という言い方はしません」
「○○という表現は、ネイティブも使いますか?」

いったいネイティブとは正確にはどんな人たちのことを指すのでしょうか。

まずは英語を公用語として使っている国について考えてみます。よく知られているのはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国。ほかにもアジア地域ではシンガポール、マレーシア、アフリカ地域では南アフリカをはじめとして、実は多くの国が英語を公用語としています。

ということは、これらの国すべてが英語を公用語とする国家であり、理論上ではすべて英語ネイティブです。しかし、これまでの私の経験上、マレーシアの人やシンガポールの人のことを「ネイティブ」と認識している日本人は、ほとんどいません。

ネイティブ信仰からはなれよう

日本の英語教育はアメリカンイングリッシュを基本にしています。ですから、ネイティブ=アメリカ人という認識が刷り込まれていても不思議ではありません。

しかし、アメリカンイングリッシュといえばRを強調する巻き舌、スペリングと違う発音、スラングなど、日本人にとって難しい壁がいくつもあります。ですから、英語を話せるようになりたいなら、いわゆるアメリカネイティブ信仰からはなれることをおすすめします。

たとえ英語が上達して、会話のレベルがネイティブに近づいたとしても、アメリカ人のネイティブになることはできません。それなら、アメリカ人のネイティブに近づこうとして苦しむよりも、世界的に多数派の、スタンダードな英語を身につける道を選びませんか。

世界で英語を母国語として話す人は約3億7300万人。それに対して、第二言語や外国語として英語を話す人は10億人以上います。

つまり世界で英語を使っているのはネイティブ以外の人のほうが多いのです。

彼らにはそれぞれのアクセントがあります。語彙だってネイティブに比べれば少ない人もいるでしょう。それでも彼らは必要なときに英語を使い、場合によっては生活や仕事も英語で行っているのです。

『[完全版]すごい英語独学』P.33より

実際に日本を出れば実感できますが、第二言語として英語を話す人たちは流暢だとしても、アメリカ人のように話す人は多くはいません。

例えば、毎年発表される「英語能力指数 ランキング」という国際的なランキングで毎年世界第1位を独占しているオランダでは、多くの人が英語を話します。(ちなみに、日本は毎年最下位のグループの常連です)

母国語はオランダ語ですが、相手がオランダ語を話せないとわかると、彼らはすぐに英語に切り替えます。

オランダでは大抵の人が英語を話し、みな流暢です。世界第1位と言われるのも納得というレベルですが、彼らの英語は決してアメリカンイングリッシュではありません。

ヨーロッパの小国であるオランダは文化背景などから、英語だけでなくドイツ語やスペイン語など、多言語を操る人も多くいます。そんな彼らの話す英語は巻き舌でもなく、ネイティブ風のスラングが多いわけでもありません。

第二言語として英語を使う人ならではの、イギリス英語を基礎とした、誰もが理解しやすく、シンプルな文法のスタンダードな英語といえます。

めざしたいのは、シンプルでスタンダードな英語

プレーンイングリッシュという言葉があります。

これはアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア政府が認めている様式で、明確さと簡潔さを強調し、専門用語を回避するのが特徴です。かんたんにいうと、誰にでも理解できるシンプルな言いまわしということです。

世界で使われている英語はアメリカンイングリッシュだけではありません。むしろアメリカンイングリッシュを話すネイティブのほうが少ないのです。

英語の学習でアメリカ人のネイティブをいつも意識する必要はまったくありません。第二言語として英語を学ぶ日本のみなさんには、オランダ人のように、必要になればすぐに英語に切り替えられる柔軟さと、誰もが理解できるような、シンプルでスタンダードな英語を身につけることを提案したいと思います。

オススメの英会話の型3選

では、実際にどのように英語を学習するのがもっとも効果的なのでしょうか。

英語を学ぶみなさんからよく聞く悩みとして、「フレーズや単語をたくさん覚えたのに、いざとなると話したいことが口から出てこない!」というものがあります。

実は、やみくもにフレーズを暗記しても、会話力はそれほど上がりません。必要なのは自分が使いやすい「英会話の型」を覚えてしまうことです。

「型」をしっかりと覚えたら、次は自分の言いたいことに合わせて、必要な単語に置きかえ、自分だけのフレーズを作ってみましょう。

このように「型」の単語を入れ替えるだけで気持ち、行動などを伝えることができるんです。

書籍では私が厳選した100パターンの英会話の型を紹介していますが、今回はそのなかから、3つの「型」をピックアップしてご紹介しましょう。

YouTubeチャンネル「Sakura English」の動画と併せて、インプットとアウトプットを繰り返し行ってみてください。

英会話の型①「I'm afraid...」残念ながら...です。

[例文]
I'm afraid I can't.
残念ながら、できません。

▶相手にとって不都合なことを、ていねいに伝える

I'm afraid の意味は、後に続くものや文脈によって、少し異なります。I'm afraid of... は、「~を恐れる」という意味で使われますが、ここで紹介するI'm afraid (that) は相手にとっては不都合なことを、礼儀正しくていねいに伝えるときによく使われます。

接続詞のthat は省略されることも多いです。unfortunately(残念ですが)のていねいな言い方がI'm afraid なので、unfortunately を使った表現に言いかえることも可能です。

[使える! フレーズ]
I'm afraid that I can't attend the meeting.
残念ですが、出席できません。(attend the meeting=ミーティングに参加する)

I'm afraid that I can't help you.
残念ながら、お力になれません。

I'm afraid you are wrong.
残念ですが、間違っていますよ。

I'm afraid she will not come.
残念ですが、彼女は来ないですよ。

英会話の型②「I feel like ...ing」...したい気分

[例文]
I feel like eating pizza.
ピザが食べたい気分です。

▶希望や意見を伝えることができるI feel like+ing

I feel like...ing は、「~したい気分」という意味で、希望を相手に伝えるときによく使われる表現です。

似ている表現として「feel like +主語+動詞」がありますが、こちらの意味は「〜のように感じる」でまったく違う意味になります。I feellike I'm getting a cold.(風邪をひきそうな気がする)のように使います。

feel like...ing はカジュアルで口語的な表現です。フォーマルではないので注意が必要です。友だちとの会話で使う表現として覚えておきましょう。


[使える! フレーズ]
I feel like playing tennis today.
今日はテニスをしたい気分です。

I don't feel like doing anything today.
今日は何もする気にならない。

I feel like taking a nap.
昼寝をしたい気分です。(taking a nap=昼寝する)

I feel like going for a walk in the park.
公園を散歩したい気分です。(going for a walk=散歩に行く)

英会話の型③「I want you to...」...してほしい。

[例文]
I want you to understand something.
あなたに理解してもらいたいことがあります。

▶相手に何かをしてもらいたいときの表現

I want you to は相手に何かしてほしいと伝える表現です。お願いや要求があるときなどに使います。

似ている表現でI need you to がありますが、こちらはI want you toよりも強い要求を示す表現となります。

また、注意することとしてはwant の後ろにthat は続きません。例えばI want you to tidy yourroom.(部屋を掃除してほしいんだけど)ということはできますが、I want that you tidy your room. とすることはできません。

[使える! フレーズ]
I want you to help me clean the room.
部屋を掃除するのを手伝ってほしい。

I want you to take me to the station.
私を駅まで連れて行ってほしい。(take=この場合は「連れていく」)

I want you to be honest with me.
素直になってほしい。

I want you to call me .
電話をしてほしい。


ここでは3つの型をピックアップしてみましたが、単語を置き換えることで、多様なシーンに応用できるいくつものオリジナルフレーズが作れます。ぜひ、たくさんの英語の「型」を覚えて英語を自分のものにしてください。

  
Sakura English 
YouTubeチャンネル登録者数50万人(2023年11月現在)の人気英会話アカウント。 

27歳のときに半年間サンフランシスコでホームステイするも、語学学校で個性の強いクラスメイトに圧倒され、引きこもりに。このままでは日本に帰れない! と、英語のひとりごとやホストファミリーの子どもとの会話を続け、少しずつ英会話を習得。その後、英会話講師の道へ。 

講師としてレッスンをする中で、多くの日本人が間違えることを怖がり、正しい文法にこだわるあまり、スピーキングやリスニングが極端に苦手で、かんたんな日常会話すらできないことを実感。 

2021年、もっと英語を身近に感じてほしいとの思いから、英会話スクールに通わずに誰でも無料で取り組める「最初の英会話学習ツール」として、YouTubeチャンネル「英語聞き流し| Sakura English」を開設した。

「スマホで手軽に英語に触れられる」と多くの人に支持され、開設から2年でチャンネル登録数は42万人、動画の総再生回数は4500万回を超えるように。中でも「ネイティブが最初に覚える英会話フレーズ」シリーズは再生数が600万回を超え、幅広い年代に英語を話す楽しさを伝えている。  

本書は、2022年にKindleでリリースされた『すごい英語独学 独り言トレーニング: 留学なしでも劇的に話せる。』に大幅な加筆を加えた完全版。  

 『[完全版]すごい英語独学』
   Sakura English[著]
   かんき出版[刊]

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