佐々木和義
<トランプ前大統領暗殺未遂事件の写真で注目を集めたソニー製カメラ。韓国のデジタルカメラ市場では、長年、首位を独走している......>
米国時間7月13日に発生したトランプ前大統領暗殺未遂事件で、耳に傷を負ったトランプ氏が右手を高く掲げた「奇跡の1枚」がソニーカメラで撮影されたと話題になっている。
報道写真はキヤノンとニコンが独占していたが、現場にいたカメラマンの多くがソニーを肩から下げていた。ソニーカメラは2021年の東京五輪でキヤノンとニコンの牙城だったメインプレスセンター(MPC)内にサービスブースを設置。パリ五輪でも活躍が注目されている。
デジタルカメラ、韓国で首位を独走しているソニー
デジタルカメラの世界シェアはキヤノンが46.5パーセントで、ソニーが26.1パーセント、3位はニコンの11.7パーセントとなっている。デジタルカメラは首位のキヤノンをニコンが追う構図が続いたが、2019年、ソニーが逆転して2位に躍り出た。
世界市場ではキヤノンに大きく水を開けられるソニーだが韓国では首位を独走している。上位機種であるフルフレーム市場で2020年から4年連続1位を維持する。
ソニーは1990年、韓国に進出してテレビやカメラ、ウォークマンなどの販売を開始した。その後の2013年、サムスンとLGが競合する韓国テレビ市場から撤退。カメラとオーディオ、放送機器などに注力した。
ソニーコリアが年間売上1兆ウォンを挟んで一進一退を繰り返していた2010年代前半、韓国のカメラ市場は大きく動いた。サムスンのミラーレス市場参入と撤退だ。
サムスンは1979年、ミノルタと提携してカメラ事業に参入。コニカミノルタがカメラ事業をソニーに売却した2006年、ペンタックスと提携した。ペンタックスは1957年に世界で初めてレフレックス構造を持つ一眼レフを発売した老舗だが、デジタル化競争についていけずに経営が悪化していた。
ペンタックスがリコーの傘下になって提携が消滅するとサムスンはミラーレス市場に参入、また打倒ソニーを掲げてビデオカメラを強化した。迎え撃つソニーも一眼レフの製造販売を終了してミラーレスに移行した。
ミラーレスは2008年にパナソニックが開発したレフレックス構造を省いたカメラで、サムスンは韓国ミラーレス市場で首位となり、世界市場でもキヤノン、ニコンに次ぐ3位の座をソニーと争うようになる。
サムスンがカメラ事業から撤退、韓国市場はソニーを選んだ
2010年代半ば、サムスンのカメラ事業を危機が襲う。まずはフルフレーム化だ。フィルムカメラで主流だった35ミリ判と同じサイズのフォーマットでフルサイズともいう。アマチュアカメラマンはひと回り小さいAPSが少なくないが、プロはフルフレームが主流である。ソニーが収益性の高いフルフレームに軸足を移す一方、フルフレームのノウハウを持たないサムスンは後退を余儀無くされる。
もう一つはスマートフォンカメラである。米アップルとスマートフォンの世界シェアを競っていたサムスンはスマートフォンカメラの高性能化を進めたが、自社のカメラ事業を圧迫する結果を生んだのだ。
サムスンがカメラ事業から撤退すると、韓国市場はソニーを選んだ。ビデオカメラはソニーの独壇場となり、ミラーレスもソニーが伸長。サムスンカメラの買い替え需要がはじまった2019年、ソニーコリアは売上が進出以来最高となる1兆4千億ウォンを記録し、以降3年連続で最高売上を更新した。
ソニー、24年ぶりに営業利益がサムスンを上回る
ソニーコリアはイメージセンサーにも力を入れる。イメージセンサーはレンズが捉えた像を電気信号に変換して記録するデジタルカメラの主要部品で、ソニーは世界市場で55パーセントのシェアを持ち、2位のサムスンを20ポイント以上、引き離している。
80年代、世界で初めてCCDイメージセンサーの商品化に成功したソニーは当初、自社製ビデオカメラに搭載したが、カメラメーカーにも供給を開始。現在、ニコンやリコーイメージング、またスマートフォンでもアップルやシャオミなどがソニー製イメージセンサーを搭載している。
今後、自動車分野が鍵になる。自動運転車など車の周辺を把握できるカメラの需要が高まるなか、車載向けは米国のオンセミに大きく水を開けられるソニーは熊本県に工場を新設するなど拡大を図る計画だ。ソニーは2023年度、営業利益が24年ぶりにサムソン電子を上回り、3倍だった売上差も2倍近くに縮まった。
ソニーコリアのウィークポイントは全製品を日本社から輸入することによる原価率の高さだが、ソニーをライバル視するサムスン電子のお膝元で着実に売上を伸ばしている。
<トランプ前大統領暗殺未遂事件の写真で注目を集めたソニー製カメラ。韓国のデジタルカメラ市場では、長年、首位を独走している......>
米国時間7月13日に発生したトランプ前大統領暗殺未遂事件で、耳に傷を負ったトランプ氏が右手を高く掲げた「奇跡の1枚」がソニーカメラで撮影されたと話題になっている。
報道写真はキヤノンとニコンが独占していたが、現場にいたカメラマンの多くがソニーを肩から下げていた。ソニーカメラは2021年の東京五輪でキヤノンとニコンの牙城だったメインプレスセンター(MPC)内にサービスブースを設置。パリ五輪でも活躍が注目されている。
デジタルカメラ、韓国で首位を独走しているソニー
デジタルカメラの世界シェアはキヤノンが46.5パーセントで、ソニーが26.1パーセント、3位はニコンの11.7パーセントとなっている。デジタルカメラは首位のキヤノンをニコンが追う構図が続いたが、2019年、ソニーが逆転して2位に躍り出た。
世界市場ではキヤノンに大きく水を開けられるソニーだが韓国では首位を独走している。上位機種であるフルフレーム市場で2020年から4年連続1位を維持する。
ソニーは1990年、韓国に進出してテレビやカメラ、ウォークマンなどの販売を開始した。その後の2013年、サムスンとLGが競合する韓国テレビ市場から撤退。カメラとオーディオ、放送機器などに注力した。
ソニーコリアが年間売上1兆ウォンを挟んで一進一退を繰り返していた2010年代前半、韓国のカメラ市場は大きく動いた。サムスンのミラーレス市場参入と撤退だ。
サムスンは1979年、ミノルタと提携してカメラ事業に参入。コニカミノルタがカメラ事業をソニーに売却した2006年、ペンタックスと提携した。ペンタックスは1957年に世界で初めてレフレックス構造を持つ一眼レフを発売した老舗だが、デジタル化競争についていけずに経営が悪化していた。
ペンタックスがリコーの傘下になって提携が消滅するとサムスンはミラーレス市場に参入、また打倒ソニーを掲げてビデオカメラを強化した。迎え撃つソニーも一眼レフの製造販売を終了してミラーレスに移行した。
ミラーレスは2008年にパナソニックが開発したレフレックス構造を省いたカメラで、サムスンは韓国ミラーレス市場で首位となり、世界市場でもキヤノン、ニコンに次ぐ3位の座をソニーと争うようになる。
サムスンがカメラ事業から撤退、韓国市場はソニーを選んだ
2010年代半ば、サムスンのカメラ事業を危機が襲う。まずはフルフレーム化だ。フィルムカメラで主流だった35ミリ判と同じサイズのフォーマットでフルサイズともいう。アマチュアカメラマンはひと回り小さいAPSが少なくないが、プロはフルフレームが主流である。ソニーが収益性の高いフルフレームに軸足を移す一方、フルフレームのノウハウを持たないサムスンは後退を余儀無くされる。
もう一つはスマートフォンカメラである。米アップルとスマートフォンの世界シェアを競っていたサムスンはスマートフォンカメラの高性能化を進めたが、自社のカメラ事業を圧迫する結果を生んだのだ。
サムスンがカメラ事業から撤退すると、韓国市場はソニーを選んだ。ビデオカメラはソニーの独壇場となり、ミラーレスもソニーが伸長。サムスンカメラの買い替え需要がはじまった2019年、ソニーコリアは売上が進出以来最高となる1兆4千億ウォンを記録し、以降3年連続で最高売上を更新した。
ソニー、24年ぶりに営業利益がサムスンを上回る
ソニーコリアはイメージセンサーにも力を入れる。イメージセンサーはレンズが捉えた像を電気信号に変換して記録するデジタルカメラの主要部品で、ソニーは世界市場で55パーセントのシェアを持ち、2位のサムスンを20ポイント以上、引き離している。
80年代、世界で初めてCCDイメージセンサーの商品化に成功したソニーは当初、自社製ビデオカメラに搭載したが、カメラメーカーにも供給を開始。現在、ニコンやリコーイメージング、またスマートフォンでもアップルやシャオミなどがソニー製イメージセンサーを搭載している。
今後、自動車分野が鍵になる。自動運転車など車の周辺を把握できるカメラの需要が高まるなか、車載向けは米国のオンセミに大きく水を開けられるソニーは熊本県に工場を新設するなど拡大を図る計画だ。ソニーは2023年度、営業利益が24年ぶりにサムソン電子を上回り、3倍だった売上差も2倍近くに縮まった。
ソニーコリアのウィークポイントは全製品を日本社から輸入することによる原価率の高さだが、ソニーをライバル視するサムスン電子のお膝元で着実に売上を伸ばしている。