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「未完の代名詞」サグラダ・ファミリアが工事開始から140年以上を経て完成へ

ニューズウィーク日本版 2024年8月8日 11時51分

ヘスス・メサ
<ガウディの描いた夢が最新技術の力でついに現実へと近づいている。完成時期の見込みと残された最後の課題とは?>

140年以上も建設が続いているスペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂。その完成がついに視野に入ってきた。

カタルーニャの偉大な建築家アントニ・ガウディが設計したこの驚くべき聖堂(バシリカ)は、ゴシック様式とアールヌーボー様式を融合させたもので、地上で最も美しい建築物の1つとの呼び声も高い(イギリスの作家ジョージ・オーウェルは世界で最も醜いと評したことがあるが)。

現在は世界的建設機械大手リープヘル社製のクレーン2台を駆使して、完成予定の2026年に向けて順調に工事が進んでいる。

23年11月には4つの「福音書記者」の塔が完成した。

6つの中央塔の完成まで、残るはあと1つ──高さ172.5メートル、世界で最も高い教会となるサグラダ・ファミリアの頂点にそびえる「イエス・キリストの塔」だ。その完成にもリープヘル社のクレーンが重要な役割を果たす。

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「サグラダ・ファミリアの建設部門がこのクレーンを選んだ主な理由は2つ。1つは折り畳み可能で周囲の建物への影響を最小限に抑えられること、2つ目はこの地域特有の要件に対応できること」だと、建設・技術担当責任者のフェルナンド・ビヤは言う。

観光が資金確保に貢献

スペインで最も有名な建築物の1つが完成すれば、ガウディのビジョンを実現すると同時に、現代のエンジニアリング・建設分野の重要な成果にもなる。

1883年にこのプロジェクトを任されたガウディは、「モダンなカタルーニャの未来」の創造を目指したが、まだ工事の進捗度が20%程度だった1926年、道路を横断中に路面電車にはねられて急死。プロジェクトはその後も数々の苦難に直面した。

1930年代のスペイン内戦で工事は中断。ガウディの設計プランの多くが失われたり、火事で焼失したりした。最近もコロナ禍の期間中は建設工事がストップした。

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だが、その後の観光業の復活がプロジェクト完成のための資金確保に貢献した。昨年は約470万人がここを訪れ、1人当たり26~40ユーロの入場料の総売り上げは約1億2500万ユーロ。その半分が建設費に使われている。

2016年には適切な建築許可を得ていなかったことが判明。当局はこれを「歴史的な異常事態」と呼んだが、19年に正式な建築許可が下りた。

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ガウディのビジョン完成に大きく貢献しているのが現代の建設技術だ。残りの塔の建設には、工期短縮のために世界的なエンジニアリング会社アラップが推奨するプレハブ石材パネルが採用された。

サグラダ・ファミリア財団によれば、「聖母被昇天の礼拝堂」は25年、キリストの塔は26年に完成する予定。小規模な装飾や彫刻の工事は10年後まで続く可能性が高い。

正面玄関に続く階段の建設をどうするかについては議論が続き、現行計画では数百の民家や企業が移転を強いられる。

100年前、なぜこのプロジェクトにこれほど時間がかかるのかと尋ねられたガウディの言葉は有名だ。「私のクライアントは急いでいない」。しかし、待ち時間はもうすぐ終わるかもしれない。

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