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生後2日で空襲警報...サイレンが響くウクライナで「すやすや眠る」赤ちゃんの映像に広がる衝撃と悲しみ

ニューズウィーク日本版 2024年8月8日 15時9分

ダニエラ・グレイ
<空襲警報が鳴り響く中で「すやすや」眠り続ける息子の姿を記録した父親。Redditに動画を投稿したところ、世界中からコメントが──>

ウクライナで誕生した生後2日の赤ちゃんが、初めての空襲に遭遇しながらも昼寝を続けているという動画が、米オンライン掲示板「Reddit(レディット)」ユーザーに衝撃と悲しみを与えている。この動画を投稿した父親が、当時の恐怖を本誌に語った。

【動画】生後2日で空襲警報...サイレンが響くウクライナで「すやすや眠る」赤ちゃん

投稿者u/izoxUAは、レディットの「Oddly Terrifying(奇妙な恐怖)」チャンネルに、ウクライナの首都キーウの産院で安らかに眠る息子の姿を記録した不気味な動画を共有した。

この動画は、ロシアのジェット機を警戒する空襲警報のサイレン音から始まる。

屋外は混乱しているが、赤ん坊のローマンは深い眠りについており、父親の「心をかき乱した」出来事には気付いていないようだ。

父親は本誌の取材に対し匿名で、もともとは自分の両親のために動画を撮影していたが「この奇妙な世界」をほかの人たちにも見てもらいたいと思い、レディットで共有することにしたと語っている。

彼は空襲警報を1分ほど撮影した後、ローマンがガラスでけがをしないように窓から離し、即席の防空壕に避難した。

父親は動画の背景をさらに説明し、本誌にこう語った。「ウクライナでは警報が生活の一部になっているが、あの日はある種の恐怖を感じていた。ロシアによる大規模な攻撃が予想されており、とりわけロシア軍がキーウ最大の子供病院を攻撃した後だったためだ」

2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以来、戦争はエスカレートし、戦闘の拡大と死傷者の増加を招いている。

この戦争は深刻な人道的危機を引き起こし、ヨーロッパ全域の政治と安全保障の状況を左右している。

この投稿は8月7日現在、8000件を超える「いいね」を獲得しており、ブラジル、英国、ニュージーランドといった国々から何百ものコメントが寄せられている。

ウクライナで暮らす家族の現実に、多くの人が恐怖を覚えている。あるレディットユーザーは、初めて空襲警報の音を聞いたときのことを振り返った。「防空壕の中で、私は生後3カ月の子供、夫は1歳半の子供を抱っこしていた。今でも時々空襲警報の音で目が覚める」

別のユーザーは、1980年代の体験を共有した。

「ドイツで育った私たちは、安全上の問題から外で遊ぶことができなかった。いろいろな警報が鳴っていたのを覚えている。幸い、私の子供が知っているのは気象警報やアンバーアラート(児童誘拐事件が発生したときに発令される警報)だけだ。世界全体でこのようなことがすべて遠い記憶になることを祈っている」

本誌は、トラウマの影響を受けた子供たちが直面するメンタルヘルスの問題に取り組んできた心理療法士に話を聞いた。

アンカバー・メンタルヘルス・カウンセリングの創設者クリスティー・チェによれば、戦争の心理的影響は「私たちが十分に理解していない形で」子供たちに深刻なインパクトを与えるという。

チェは話題になった動画について「ウクライナで空襲の中で赤ん坊が眠っている姿は、混乱のさなかにある子供の無邪気さを鮮烈に物語っている」と本誌に語った。

チェによれば、子供たちはそれぞれ自分の体験を異なる方法で処理しており、すぐに立ち直る子供もいれば静かに苦しむ子供もいるという。

トラウマを抱えた子供たちを支援するには、彼らが自分の気持ちを表現できる場を与え、自分の気持ちを聞いてもらい、支えられていると感じられるようにすることが「不可欠」だ、とチェは述べている。

「このようなとき私たちは彼らに癒やしの道を用意し、混乱のさなかにあった子供時代を取り戻してもらうことができる」とチェは本誌に語る。

投稿者は動画への「温かい」反応に驚いたようだ。「これほど多くの優しい言葉をかけてもらえるとは思っていなかった。私の家族、特に小さなローマンの幸運を祈るダイレクトメッセージを書いてくれた人もいる」と本誌に語っている。

投稿ページの一番上には、次のような侘しいコメントが掲載されていた。

「今ではもう私も空襲警報の音が聞こえたとき、あなたの息子と同じ状態だよ」。これに対して投稿者は次のように述べている。「彼は悪くない。ロシア人たちが何をやっているか監視するより、良い昼寝をした方がいいに決まっている」
(翻訳:ガリレオ)

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