フィン・プール(18歳、米ワシントン在住)
<「最悪だったのは、金を出したのが僕の父親だったこと」──10カ月に渡る民間矯正施設での監禁生活から抜け出して、声なき人々の代わりに声を上げる>
15歳だったある日の真夜中、僕は2人の見知らぬ男たちに誘拐された。
恐ろしくて抵抗などできなかった。僕は飛行機に乗せられアメリカ大陸の反対側に連れて行かれ、10カ月後に脱出するまで監禁状態に置かれた。
あの日のことは忘れられない。2人の男の車は真っ黒に舗装された道を走った。行き先など分からない。窓からは煙のようにたなびく雲がかかったユタ州の山々が見えた。
たどり着いた先には、並んで立つ細長い2つの建物があった。「エレベーションズRTC」という表札が出ていて、焼けつく日差しの下でも暗い影をまとっていた。
僕は灰色の廊下を文字どおり引きずっていかれた。洋服は脱げて床に落ち、ヒリヒリと痛む肌に冷たい水が染みた。僕は裸で床に崩れ落ちた。内側から煮えたぎる怒りが噴き出してきた。3日間、僕はひたすら泣き続けた。
最悪だったのは、金を出してこんなことをさせていたのが僕の父親だったことだ。両親が離婚した後、僕は父に引き取られていた。とてもつらい日々だった。
あの頃ちょうど僕は、本当の自分を理解し、受け入れられるようになっていた。そして今後はゲイであることを公表して自分らしく生きたい、母と一緒に暮らしたいと父に話した矢先の出来事だった。
エレベーションズは営利目的で運営されている民間の矯正施設だ。問題を抱えたティーンエージャーの社会復帰を支援するとうたっているが、実際には金を払う人間の言うがままらしい。
担当のセラピストによれば、僕がここに送り込まれたのは父の期待に背いたからだった。
何カ月もの間、僕は施設の廊下を当てもなく歩き回った。監禁されていることにも施設の雰囲気にも息が詰まりそうだった。日記帳に僕は、旅する探検家が主人公の物語を書いた。物語の世界に入りたいと心底思った。
10カ月後に僕はようやく、母とラビ(ユダヤ教の聖職者)と弁護士のおかげで施設を出ることができた。
被害者の声を届けたい
同様の施設で、同じような目に遭った(遭っている)人は僕以外にもたくさんいる。「ストップ制度的児童虐待」という団体によれば、こうした施設に入れられている未成年者は全米で12万~20万人もいるという。
今年に入り、僕はエレベーションズと担当セラピスト、そして父に対し、僕が受けた虐待と苦痛への損害賠償を求める訴訟を起こした。
裁判所や議員たち、そして一般の人々に問題を知ってもらうことも目的の1つだ。またこれは、今も施設にいる多くの未成年者や、施設によって生涯にわたる傷を負わされた人々に代わり、僕が起こさなければならない行動だった。
こうした施設に入所させられた人々の間では、鬱や薬物依存になったり、虐待したりされたりする人間関係に陥ったり、果ては自殺するといった事例が非常に多いといわれる。全米に1万カ所以上あるといわれるこうした施設への規制強化を求めて、僕たちは力を合わせなければならない。
僕は18歳になり、この秋からはカリフォルニア州の大学に通う。1年前には考えられなかったことだ。声なき人々の代わりに声を上げ、社会に貢献する力を付けたいと思っている。僕は未来に向けて前進していく。
<2018年にはLGBT矯正施設を描いた映画『ある少年の告白』が公開。ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウらが出演した>
<「最悪だったのは、金を出したのが僕の父親だったこと」──10カ月に渡る民間矯正施設での監禁生活から抜け出して、声なき人々の代わりに声を上げる>
15歳だったある日の真夜中、僕は2人の見知らぬ男たちに誘拐された。
恐ろしくて抵抗などできなかった。僕は飛行機に乗せられアメリカ大陸の反対側に連れて行かれ、10カ月後に脱出するまで監禁状態に置かれた。
あの日のことは忘れられない。2人の男の車は真っ黒に舗装された道を走った。行き先など分からない。窓からは煙のようにたなびく雲がかかったユタ州の山々が見えた。
たどり着いた先には、並んで立つ細長い2つの建物があった。「エレベーションズRTC」という表札が出ていて、焼けつく日差しの下でも暗い影をまとっていた。
僕は灰色の廊下を文字どおり引きずっていかれた。洋服は脱げて床に落ち、ヒリヒリと痛む肌に冷たい水が染みた。僕は裸で床に崩れ落ちた。内側から煮えたぎる怒りが噴き出してきた。3日間、僕はひたすら泣き続けた。
最悪だったのは、金を出してこんなことをさせていたのが僕の父親だったことだ。両親が離婚した後、僕は父に引き取られていた。とてもつらい日々だった。
あの頃ちょうど僕は、本当の自分を理解し、受け入れられるようになっていた。そして今後はゲイであることを公表して自分らしく生きたい、母と一緒に暮らしたいと父に話した矢先の出来事だった。
エレベーションズは営利目的で運営されている民間の矯正施設だ。問題を抱えたティーンエージャーの社会復帰を支援するとうたっているが、実際には金を払う人間の言うがままらしい。
担当のセラピストによれば、僕がここに送り込まれたのは父の期待に背いたからだった。
何カ月もの間、僕は施設の廊下を当てもなく歩き回った。監禁されていることにも施設の雰囲気にも息が詰まりそうだった。日記帳に僕は、旅する探検家が主人公の物語を書いた。物語の世界に入りたいと心底思った。
10カ月後に僕はようやく、母とラビ(ユダヤ教の聖職者)と弁護士のおかげで施設を出ることができた。
被害者の声を届けたい
同様の施設で、同じような目に遭った(遭っている)人は僕以外にもたくさんいる。「ストップ制度的児童虐待」という団体によれば、こうした施設に入れられている未成年者は全米で12万~20万人もいるという。
今年に入り、僕はエレベーションズと担当セラピスト、そして父に対し、僕が受けた虐待と苦痛への損害賠償を求める訴訟を起こした。
裁判所や議員たち、そして一般の人々に問題を知ってもらうことも目的の1つだ。またこれは、今も施設にいる多くの未成年者や、施設によって生涯にわたる傷を負わされた人々に代わり、僕が起こさなければならない行動だった。
こうした施設に入所させられた人々の間では、鬱や薬物依存になったり、虐待したりされたりする人間関係に陥ったり、果ては自殺するといった事例が非常に多いといわれる。全米に1万カ所以上あるといわれるこうした施設への規制強化を求めて、僕たちは力を合わせなければならない。
僕は18歳になり、この秋からはカリフォルニア州の大学に通う。1年前には考えられなかったことだ。声なき人々の代わりに声を上げ、社会に貢献する力を付けたいと思っている。僕は未来に向けて前進していく。
<2018年にはLGBT矯正施設を描いた映画『ある少年の告白』が公開。ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウらが出演した>